明日の株式相場戦略=「半導体製造装置」に押し寄せる投資マネー

市況
2020年2月13日 17時28分

現在の東京株式市場において日経平均2万4000円ラインは胸突き八丁の水準といってよい。やっとの思いで2万4000円トビ台に片足を乗せても、すぐさまその足を払われるようにバランスを崩し、2万3000円台に逆戻りする展開を昨年12月から何度も繰り返してきた。きょう(13日)は、前日の米株大幅高を受けて、その鬼門である2万4000円台回復が当然ながら意識されたが、取引開始直前に為替が円高方向に振れたことがミソをつけた格好となり、思わぬ形で上値の重い展開を強いられた。

新型肺炎関連では感染拡大に対する警戒感が拭えず、きょうの朝方も中国・湖北省で新型コロナウイルスの感染者数が急増したと米ブルームバーグ通信が伝えたことが重荷となった。まるでSQを目前に、ドル円・相場を絡めた売り方の仕掛けかと思わせるようなタイミングでのニュースヘッドラインだが、ここからはこうした報道にあまり神経質になる必要はない。米国株市場のみならず世界の株式市場をみても分かる通り、新型肺炎は感染拡大が進んでもそのペースに鈍化の兆しが見えてくれば、株価に対するネガティブインパクトも希薄化の方向に向かう。新型肺炎の対策関連として買われた一連の銘柄群も、きょうは業績増額と株式分割で買われた大幸薬品<4574>を例外として、総じて売り叩かれる格好となった。こうなると、個別株ごとの理屈は通用しなくなってくる。上がる時も下がる時も“十把一絡げ(ひとからげ)”というのがマーケットを支配する法則だ。

しかし、これはいうまでもなく株式市場全般にとっては風向きが良い方向に変わっていることを意味する。確かに大方出揃いつつある企業の決算発表は概ね厳しい内容が多く、買い気は盛り上がりにくい面もあるが、一部の銘柄は開示された決算が悪くても買われる、つまり今期ではなく来期を見据えた動きが顕在化している。そうした流れを象徴するように王道銘柄である半導体製造装置関連株に再び投資マネーが向かい始めた。

東京エレクトロン<8035>が一時700円高と値を飛ばし上場来高値を更新したが、これが全体相場の潮流を映し出している。ここ連日で取り上げてきたレーザーテック<6920>のもみ合い上放れも半導体製造装置関連へのマネーフローを肌で感じさせるものだ。新型肺炎関連とは意味合いが違うが、この半導体製造装置関連見直しの動きも次第に十把一絡げの太い流れとなって株式市場を覆うことになりそうだ。

もちろん、ここで東エレクが最高値を更新することにはそれなりの背景がある。米国株市場では半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)がNYダウナスダック指数と同様に青空圏を走っているが、これは世界的見地で半導体市況に吹く構造的な追い風を評価したもの。次世代通信規格5G関連の投資需要が想像以上に半導体需要を喚起することが分かってきた。国内では昨年10月30日のアドバンテスト<6857>の今期1回目の業績上方修正で、5Gに絡む検査装置需要の伸びが確認されたが、その恩恵がここにきて更に加速している。5Gでは4G時代よりもデータ処理速度を速める目的で最先端のCPUが必要とされ、そのCPU性能向上のためにロジック半導体の回路線幅の微細化ニーズが高まった。このプロセスにおいて波長が極めて短いEUV(極端紫外線)が次世代の露光技術として登場、急速に市場が立ち上がっている。需要回復はロジックが先行したが、2020年はメモリー市況も回復トレンドが本格化するとみられている。

半導体製造装置関連では、レーザーテックがマスクブランクス検査装置のオンリーワン企業としてのポジションを武器に、満を持して最高値を更新したが、これに続く銘柄が今後相次ぐ可能性がある。関連最右翼はウエハー搬送装置で高い商品競争力を誇り、台湾や韓国向け受注獲得で業績急成長トレンドに陰りがみられないローツェ<6323>が有力。1月14日につけた最高値4850円を早晩視野に入れる可能性がありそうだ。

このほか、小型株ではアドテック プラズマ テクノロジー<6668>や和井田製作所<6158>あたりもマークしておきたい。

日程面では、あすは12月の第3次産業活動指数、1月の投信状況など。なお、株価指数オプション2月物のSQ算出日にあたる。海外では米国で経済指標が相次ぐ。1月の米小売売上高、1月の米鉱工業生産指数・設備稼働率、1月の米輸出入物価指数、2月の米消費者マインド指数(ミシガン大学調べ・速報値)、12月の米企業在庫などの発表が注目される。 

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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