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人はなぜ買い時、売り時を逃してしまうのか ⇒ Herding(ハーディング)効果

特集
2020年2月14日 13時25分


大槻奈那の「だからあなたは損をする~心理バイアスの罠にはまらない技」

大槻奈那(Nana Otsuki)
マネックス証券・執行役員チーフアナリスト
大槻奈那東京大学卒業。英ロンドン・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。格付け会社スタンダード&プアーズ、UBS証券、メリルリンチ日本証券にてアナリスト業務に従事。2016年1月より現職。名古屋商科大学大学院教授、二松学舎大学客員教授を兼務しつつ、一橋大学大学院・経営管理研究科(一橋ビジネススクール)の博士課程に在籍。ロンドン証券取引所アドバイザリーグループ・メンバー。財務省財政制度等審議会委員、規制改革推進会議委員。最近の趣味は落語鑑賞と旅行、そして不動産実査で宅地建物取引士の資格も保有する。

新型肺炎の勃発以降、日本株の変動率は2割ほど拡大しています。ボラティリティ(株価の変動幅)の高まりは、本来ならばリターンを稼ぐ好機のはずですが、実際には、「あそこで売っておけばよかった」「あの時に買っておけばよかった」といった後悔に日々さいなまれている人も多いのではないでしょうか。

なんと個人投資家は、「平均で毎年1.5%ずつ市場平均に負けている」という切ないデータもあります。その一方で、もちろん世の中には、株式投資で大きく資産を増やした人もいます。その違いはどこにあるのでしょうか。決め手の一つは「心理バイアス」です。

例えば、含み損を抱えている銘柄は上がりそうにないと薄々わかっていても売れないものです。そうした、人の心のクセを「心理バイアス」と呼び、経済学の観点から捉えてノーベル賞を受賞したのが行動経済学です。私も現在、大学院でこの分野のリサーチを始めています。

これだけAI(人工知能)やブロックチェーンなどの技術が発達しても、人間の心の弱さは恐ろしいほど進化していません。それでも、さまざまな研究のおかげで、ありがちな心理バイアスと、それを克服するためのヒントも得られるようになりました。ここではそうした克服法や、むしろ逆手に取るような方法がないのかなどを考えてみたいと思います。

心理バイアス・その1~ハーディング効果とは

Herding(ハーディング)という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 日本語では、「群集心理」ともいわれ、周囲の動きに追随したくなる心理を指します。「みんなで渡れば怖くない」というような心理状態のことです。

例えば、みなさんが株価を予想する時も、どうしても、その時点の他の人々の予想値に左右されがちだと思います。『株探』の兄弟サイトである『みんなの株式』に掲載されている「みんかぶ予想値」を見ると、過去の高値や直近のチャート以上に、予想時点に出ている他の人々の予想値に釣られる傾向が強いようです。

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本来株価は、企業の将来収益や景気動向を表すものです。他の人がどう予想するかより、そうした企業のファンダメンタルズの方が重要なはずです。ところが、このように他の人の意見に左右されやすい傾向は、個人だけでなく、経験の浅い証券アナリストにもあるようです。

欧米市場の分析ですが、「経験の浅いアナリストほど、平均予想に近い予想をしがちである」、というデータがあります。私自身、アナリストとして、恥ずかしながら、思い当たる節も無きにしもあらずです。

ということは、逆に、経験の浅いアナリストが他のアナリストの予想平均値から大きく離れた予想をしている時は、取材等を通じてそれなりに自信が持てる場合なのかもしれません。では、具体的に、新人アナリストまでも自信を持って推奨している"鉄板"銘柄にはどんなものがあるでしょうか。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ "新人"アナリストの予想から探るハーディングとその乖離

 

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