すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 内田衛さんの場合-第3回
会計操作銘柄から1億円の利益を上げたワケ
登場する銘柄
リソー教育<4714>、オリンパス<7733>、三菱自動車工業 <7211>
投資家だった親戚のおじさんに影響され、高校生のうちから投資をスタート。以降、投資歴は約35年、「逆張り&集中投資」をモットーとするすご腕投資家だ。父親とカードローンから借りた800万円を元手にバブル経済の株価上昇に乗るも、ほどなくしてバブル崩壊の波に飲み込まれ、投資資金もまるまる泡と化す。その後は約9年間、借金返済生活に追われるが、1999年の金融危機のさなかに手掛けた信託銀行3行への投資で一発逆転。それまでの借金をチャラにするほど資金は拡大する。
2001年には約12年務めた会社を退職し、専業投資家に転身。その数年後に億り人を達成するもリーマン・ショックで資金を4分の1程度まで溶かすという大痛手を食らう。それでもめげずに投資を続行し、自身の培った逆張り投資の経験を生かし、1億円のマイルストーンに再到達する。現在はさらに3億円超まで資産の拡大を遂げている。ちょっと波乱万丈系のツワモノだ。
新型コロナウイルスの拡大懸念で、株式市場はパニック売りの様相を見せている。そんな状況に巻き込まれ、勝負銘柄が大きく含み損を抱えてしまった人もいるかもしれない。
すご腕投資家の内田衛さん(以下、内田さん)も、今でこそ3億円超の資産を持つウラヤマシイ存在だが、ここに至るまでは通常の人なら心が折れてもおかしくないような厳しい局面を何度も経験し乗り越えてきた。
今回は、内田さんが大きなピンチに立たされるも、最終的に大成功を収めたリソー教育<4714>の例を紹介しよう。同社株の取引では、一時5000万円の含み損を抱えたのだが、それを乗り越え、最後は1億円の利益を手にして取引を終えることができたのだ。
内田さんは、どう大ピンチを乗り越え、資産を大きく膨らますことができたのか!
「本業に影響しない致命的でないものか」が分け目に
第1回目の記事で紹介したように、内田さんは、業績悪化や不適切・不正会計など悪材料が出て大きく売られた「訳あり銘柄」を仕込み、そのリバウンドを狙う逆張り戦略をいくつも成功させて資産を拡大させてきた。
大成功を収めたリソー教育 <4714>も、きっかけは2013年11月に発覚した売上高の水増しだった。首都圏を中心に「TOMAS」という個別学習塾を展開してきた同社は、塾を休んだ受講生に本来返還すべき授業料を返還せずに、売り上げとして扱う決算処理をしていた。
■リソー教育 <4714> の月足チャート
この悪材料で同社株は連続ストップ安となり、株価は一気に2分の1の水準に落ち込んだ。そんな向かい風が吹いている同社株に気づいた内田さんは、よくよく調べてみたところ「これは大した問題にならない」と買い向かうことにした。
なぜか。内田さんは訳あり銘柄でも、以下の2つの条件に合致すれば、株価が再浮上する機会が遅かれ早かれ訪れると考えている。
それは、
① 悪材料が本業に大きく影響せず致命的なものにならない
② ビジネスモデルが単純明快で、着実に取り組めば、再び成長軌道に乗る可能性がある
――というものだ。
こうした見極めを含めて、内田さんが訳あり銘柄に投資する段取りは、極めてシンプルだ。まず「なぜここまで売り込まれたのか」と急落の要因を分析する。入手する情報は特別なものはなく、適時開示や新聞、テレビの報道など誰でも目にするものから見つける。
次に、先に挙げた2つの条件に合致するか分析し、株式が紙くずにならず時が経てば株価が回復する可能性があるのかを考える。
いきなり7000万円の強気買いに出る
リソー教育の取引でもこの手順を踏み、投資を決めた。その額はなんと7000万円。集中投資派の内田さんは、この取引で当時の運用資産である2億円の約3分の1を一気に張ったことになる。ここまで強気になれたのは、
A リソー教育の不祥事に対する見立て
B 自身のこれまでの経験
C 資産配分
――の3つの理由がある。
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