為替週間見通し:ドルはもみ合いか、米利下げ観測も円売り興味残る
【先週の概況】
■ドル下落、米国内で新型コロナウイルスの感染拡大の可能性高まる
先週のドル・円は下落。米国内で新型コロナウイルスの感染拡大の可能性が高まり、米国の主要株価指数は週間で10%を超える下落率となったことから、リスク回避的なドル売り・円買いが活発となった。米10年債利回りは過去最低水準まで低下し、年内4回の米利下げ観測が広がったこともドル売り材料となった。日本国内におけるウイルス感染も拡大しており、日経平均株価は一時、昨年9月以来となる21000円割れ(20916.40円)となったが、豪ドル、NZドル、カナダドルに対する円買いが観測されており、米ドル・円の取引でも円買いが優勢となった。
2月28日のニューヨーク外為市場でドル・円は、一時107円51銭まで下落した。新型肺炎の感染が世界中に広がり、景気や企業収益を圧迫するとの思惑でリスク回避のドル売り・円買いが優勢となった。ただ、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が緊急声明を発表し、「新型肺炎の動向を監視し状況次第で手段を用いて適切な措置をとる」と表明したことから、ダウ平均などの米国株式の下げ幅は大幅に縮小。ドル・円は下げ渋り、108円00銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:107円51銭-111円68銭。
【今週の見通し】
■ドルはもみ合いか、米利下げ観測も円売り興味残る
来週のドル・円はもみ合いか。米国内での新型コロナウイルス感染で株価が軟調となり、米連邦準備制度理事会(FRB)による3月利下げ観測を背景としたドル売りが先行しそうだ。ただ、長期的な日本経済の低迷を懸念した円売りも見込まれ、方向感の乏しい値動きが予想される。
米国の専門機関が新型コロナウイルスの国内感染拡大に警戒感を示しており、景気拡大期待の急速な縮小でリスク資産を整理する動きが加速している。そうしたなか、来週発表の2月ISM製造業景況指数は前月からわずかに上昇する見通し。2月雇用統計では、非農業部門雇用者数は1月実績を下回る見込みだが、市場予想と一致した場合は、ドル売り材料にはならないとみられる。市場はすでに3月利下げを織り込んでいるが、雇用統計などの経済指標が低調な内容だった場合、米金利見通しはさらに低下し、ドル売りを誘発する要因となろう。
一方、日本でのウイルス被害の増加を受け、日本企業の業績悪化を懸念した日本株売りは継続の見通し。また、日本経済の縮小を見込んだ投資家の円売りが見込まれることから、ドル・円相場に対する支援材料となる。
【米・2月ISM製造業景況指数】(3月2日発表予定)
3月2日発表の米2月ISM製造業景況指数は51.0と、1月の50.9から小幅に上昇する可能性がある。市場予想を上回る内容なら製造業の回復基調が好感され、ドル売りを抑制する要因となろう。
【米・2月雇用統計】(3月6日発表予定)
3月6日発表の2月雇用統計は、失業率3.5%、非農業部門雇用者数は前月比+19.5万人、平均時給は前年比+3.0%と予想される。雇用者増加数は1月実績を下回る見込みだが、失業率は低下する可能性がある。市場予想と一致した場合はドル売り材料にならない可能性がある。
予想レンジ:106円50銭-109円50銭
《FA》