為替週間見通し:ドルは底堅い値動きか、米追加利下げは織り込み済み
【先週の概況】
■米長期金利上昇でドル買い強まる
先週のドル・円は大幅上昇。世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスを「パンデミック(大流行)」と認定したこと、世界的な株安、原油先物の急落、米長期金利の急低下などを受けてドル・円は一時101円19銭まで下落した。しかしながら、米国政府による大規模経済対策への思惑が浮上したことや、原油先物が下げ止まったことから、リスク回避のドル売り・円買いは後退し、ドル・円は一時106円台前半まで戻した。
給与税減税措置などの米国の大規模経済対策の実現は困難との見方が広がり、リスク回避的なドル売りが再び優勢となったが、ドル資金ひっ迫の懸念が強まり、米長期金利が下げ渋ったことからドル売りは拡大せず、ドル・円は103円台で下げ渋った。
3月13日のニューヨーク外為市場でドル・円は、106円69銭から一時108円50銭まで上昇した。この日発表された3月米ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は市場予想を上回ったことや、ドル資金ひっ迫の懸念は消えていないことから、ドル買いが優勢となった。その後、トランプ大統領が会見で国家非常事態を宣言し、民間企業や世界各国と協力して新型肺炎の感染拡大を抑制する方針を表明したことから、経済への悲観的な見方は後退。米10年債利回りは一時1%台に上昇したことを受けてドル買いが加速し、ドル・円は108円01銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:101円19銭-108円50銭。
【今週の見通し】
■ドルは底堅い値動きか、米追加利下げは織り込み済み
今週のドル・円は底堅い値動きか。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による経済への影響は避けられず、米連邦公開市場委員会(FOMC)は大幅利下げに踏み切る公算だが、市場は0.50ポイント以上の追加利下げも織り込み済みのようだ。大規模財政出動への期待は残されており、利下げ後にリスク回避のドル売りが再び強まる可能性は低いとみられる。
世界保健機構(WHO)は「パンデミック」(世界的流行)を認めたことで市場心理は悪化した。3月13日の欧米市場で株式は大幅高となったことから、リスク資産などを現金化する動きは一巡しつつあるものの、日本国債や日本株式の売却が一服した場合、ドル買い・円売りの取引は縮小し、ドル相場を下押ししそうだ。米国株式は2008年のリーマン・ショック以来となる弱気相場(高値からの下落率が20%を超える)に入った。
しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大による市場への影響を抑制しようと、豪準備銀行(中央銀行)、カナダ中央銀行、欧州中央銀行(ECB)は相次いで緩和的な政策に舵を切っている。日本銀行は今週開催の金融政策決定会合で一段の緩和を進めるが、政策余地は乏しいとの見方が多いようだ。それでも、高い水準の流動性を維持することで信用収縮の発生を防ぐことが期待されている。また、財務省・金融庁、日銀の三者は市場動向を注視しており、投機的な円買いが大きく広がる状況ではないとみられる。トランプ政権が打ち出した景気刺激策は、議会との調整が必要となるが、市場の期待は残されており、議会で景気刺激策への具体的な動きがみられた場合、リスク選好的なドル買いは継続するとみられる。
【米・2月小売売上高】(17日発表予定)
17日発表の2月小売売上高は、前月比+0.2%と予想されており、1月実績の+0.3%をやや下回る可能性がある。個人消費の安定的な伸びが示されれば、国内総生産(GDP)の改善を期待したドル買いが入りやすい。
【米連邦公開市場委員会(FOMC)】(17-18日)
米連邦準備制度理事会(FRB)は17-18日に開催するFOMC会合で、政策金利(FFレートの誘導目標水準)は引き下げの公算。パウエルFRB議長の記者会見では次の一手が注目される。
予想レンジ:106円50銭-109円50銭
《FA》