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反発を見極める指標は? テーマ株投資の注意点は? ~Bコミさんに緊急インタビュー(下)

特集
2020年3月26日 11時40分

株探プレミアム・リポート

登場する銘柄
アドバンス・レジデンス投資法人<3269>、日本ロジティクスファンド投資法人<8967>、インヴィンシブル投資法人<8963>、森トラスト・ホテルリート<3478>、iシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETF

文/福島由恵(ライター)、構成/真弓重孝(株探編集部)

坂本慎太郎さんのプロフィール:
坂本さん大学卒業後、メーカー勤務を経て、国内証券会社のディーラーとして活躍。その後は大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネージャーと株式のストラテジストの実績を積んだ後、独立。現在はこころトレード研究所の所長として主に個人投資家向けに投資教育を行い、情報発信も続けている。短期から中長期までの幅広い時間軸における投資経験が豊富なのが強み。個人でも日本株を中心に為替、商品先物、不動産投資を手掛けており、「Bコミ」というハンドルネームで活動中。投資情報番組のラジオNIKKEIや日経CNBCなどにも出演、著書は『脱イナゴでしっかり儲ける20銘柄バスケット投資術』(東洋経済新報社)、『伝説のトレーダーに50万円を1億円にする方法をこっそり教わってきました。』(SBクリエイティブ)など

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コロナウイルス騒動で日経平均株価は一時、PBRが0.8倍強の水準まで落ち込み、これまでの経験則からは反転が期待できる水準になっている。実際に、各国で金融緩和や財政出動などの景気刺激策が明らかになるにつれ、世界の株式相場で反発する兆しも見えている。

ただし、新型コロナウイルスの感染拡大は終息したわけではなく、先行きの不透明感は払拭されていない。今回も個人投資家にはBコミさんとして知られる坂本慎太郎さんに、暴落からの反発を狙う上での注意点や、市場心理を見極めるポイントなどを聞いた。

投資家心理を映す米国ハイイールド債の値動きを注視

――依然としてボラティリティ(株価の変動率)が大きく、見通しの悪い相場が続いています。投資家心理がリスクオフに傾いているのか、反対にリスクオンに切り替わったのか、株価下落は底を打ったのか、など市場の温度感を計るのに参考になる指標などはありますか?

坂本慎太郎さん(以下、坂本): 私が常に参考にしているのは、米国のiシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETF<HYG>の価格の動きです。これは米ドル建てのハイイールド債、つまり格付けBB格以下(S&Pの場合)の、いわゆる投資不適格とされる社債に投資するETFで、ここから資金が流出したか、つまり利回りが上昇したかに注目しています。

――ハイイールド債はジャンク債と呼ばれますね。

坂本: ハイイールド債は、投資適格とされる債券に比べて、デフォルト(債務不履行)リスクが高い分、高い利回りが提供される特徴があります。そして、こうした複数のハイイールド債に投資する投資信託やETF(上場投資信託)も、高めの利回りがアピールされて販売されており、やや高めのインカムゲインを得たいという投資家に人気です。

――単体で見るとデフォルトリスクが高くても、複数の投資先に投資するETFの場合は分散効果から、デフォルトリスクを抑えながら高利回りを追求できる余地が理論上はありますね。

坂本: 平時にはその発想で、高利回りに魅力を感じて資金が集まるのですが、市場に不安心理が高まれば、企業の業績悪化懸念が膨らみ、投資先の債券のデフォルトリスクも高まる。そうなると一気に、このETFから資金を引きあげる動きが加速します。市場のリスクオフムードが高まった非常事態だと判断できるわけです。

――市場心理を見極めるのに、いわゆる恐怖指数と呼ばれるVIXの値を注視する人も多いですが。

坂本: VIXも参考にはなりますが、これは主として株式投資を行う投資家の心理を集約しているものだと見ています。一方、金融市場全体の温度感を見るには、債券、つまり金利水準も含めた総合的な動きに注視する必要があります。一般に債券マーケットはプロ同士が相対で取引して形成されますから、株式投資以上に理詰めで適正価格を見極める傾向が強くなります。その点で、リスクの高いハイイールド債の価格変動は、金融のプロの心理がより顕著に反映されていると私は捉えています。

■HYG、米S&P500種株価指数、VIXの動き(2019年12月31日=100)

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注:HYGはiシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETFのティッカー

――VIXは、HYGと米S&P500種株価指数の動きと比べると極端ですね。その点、HYGとS&P500だけで比較すると、ほぼ連動していることがわかります。

坂本: そうですね。また今、HYGの動きを注視するのは、今回のコロナショックが引き金になり、原油価格も暴落し、これによって有利子負債の水準が高い米国のシェールオイルを掘削する企業は採算割れを余儀なくされ、それによって負債の返済に黄色ないし赤信号が灯りはじめていることもあります。

ハイイールド債マーケットはこうした信用リスクの不安が増大している点でも、その動向に目が離せない状況だと考えています。

■HYGと米S&P500の日足チャート

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旬のテーマ株投資はあくまでも短期で

――話題は変わりますが、コロナショックで「巣ごもり」「マスク」など新たなテーマが生まれ、それを追い掛ける投資も盛り上がっています。株価反発時は、こうした旬のテーマに乗る方法は有効なのでしょうか?

坂本: テーマ株投資はデイトレードや数日で決着をつけるようなスイングトレードのように、あくまでも短期売買に徹するという戦略ならば、妙味があるかもしれません。

ただし、今回のコロナショックを始め、旬の話題で降って湧いて出たように脚光を浴びたテーマ株への投資は、基本的に、企業分析を綿密に行い、中長期で投資を目指す投資家には向かないでしょう。こうした「にわかテーマ」は、短命に終わるものと心得てください。もちろんこれは今回の局面に限ったことではありません。

テーマ株というのは基本的に今、目の前に見えている内容でわかりやすく、しかも銘柄の数も豊富なので、非常に親しみを感じやすいものです。一方で、それゆえのリスクもあります。

手っ取り早く手数料を稼ぎたい証券会社の営業担当が、情報に飢えている個人投資家に今、市場の注目を浴びているからと、テーマ株投資を勧めている可能性があることです。しかし、その勧めている時点が、株価のピークもしくはその近辺ということが起こりやすいのです。

私がサラリーマンだった時は、流行りの移り変わりに乗って、次々と出てくるテーマ株を回転売買させて手数料を稼ぐ証券営業が横行していたこともありました。今もその名残りがあり、完全になくなったわけではありません。

私が金融機関を辞めて独立した理由の中には、顧客に回転売買等を繰り返し行わせて手数料稼ぎをする「業界の悪しき慣習」に飲み込まれない個人投資家を少しでも増やしたいという思いがあります。

従来の証券営業の悪しき慣行を駆逐しなければ、個人投資家の資産形成は進みません。「貯蓄から投資へ」と証券業界は過去何十年にわたって主張してきていますが、一向に浸透しないのは、自分たちの襟元を完全に正しきれていない影響も大きいのです。

今後は、企業のファンダメンタルズをしっかり見極めて地に足がついた投資に取り組もうという投資家が一人でも増えるよう、微力ながら日々奔走しているところです。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

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