明日の株式相場戦略=戻り一杯か、上限突破か

市況
2020年4月9日 17時25分

きょう(9日)の東京株式市場では日経平均 の上値がさすがに重く、ボックス圏上限で逡巡する動きをみせた。今週はSQ週ということもあって、理外の理が働きやすく週前半の株高に反映されたが、きょう後場の値運びも独特のしぶとさを発揮し7円安にとどめた。

振り返れば、前日の日経平均403円高は先物主導で、ファーストリテイリング<9983>が一時3900円近い上昇をみせていたことからも察しがつくところだが、全体相場の体感温度とは明らかに差が生じていた。きょう決算発表を予定する時価総額5兆円近い超大型株を、前日時点であそこまで買い上がるのはちょっと理解に苦しむ動きではある。いうまでもなくファストリは指数寄与度最大級の銘柄であり、オプションSQ算出を目前に控えた思惑が錯綜するなか、貸し株絡みの買い戻しなど需給的事情があったことがうかがわれる。そして、きょう引け後発表された同社の決算は市場コンセンサスを下回る厳しい内容となり、通期業績予想も大幅下方修正を余儀なくされている。SQ通過後は全体相場も反動の出やすい時間帯に移行、要注意局面に差し掛かっている可能性がある。

テクニカル面では追い風が強い。日経平均はもとよりマザーズ指数も5日・25日移動平均線のゴールデンクロス示現で、底入れ足の典型。東証2部指数日経ジャスダック平均もこれに追随して良いチャートを形成している。しかし、新型コロナウイルス の感染拡大に対する警戒を解くのは相場の先見性をもってしても時期尚早といえそうだ。ここで慌てて上値に飛びつくような買い方は避けるべき局面と思われる。米国では感染拡大ペースの鈍化が喧伝されているが、ニューヨーク州はともかく「マイアミ州やアトランタ州では逆に感染者数が加速する気配がある」(国内ネット証券アナリスト)という。油断は禁物である。

日本国内も感染者数が増加の一途ではあるものの、大型景気対策に対する期待感との綱引きという見方が強気の拠りどころとなっている。だが、総額108兆円の看板も真水部分は「実質的には20兆円に届かない水準だろう」(準大手証券ストラテジスト)という指摘がある。経済ファンダメンタルズ面からの後押しはそれほど期待できるものではなく、「(経済対策は)第2弾、第3弾の話が出てくるまでは待ちの姿勢」とする市場関係者もいる。こうしたなか、個別株戦略も主力は避けて足の軽い材料株と深入りをせずにうまく付き合っていくスタンスが望ましい。投資ではなくトレードという割り切りが必要である。

安倍政権ではマイナンバーの普及に向け本腰を入れているが、この動きが今後一段と強まる可能性がある。新型コロナウイルス問題でクローズアップされた非常時における現金給付などで、スピード感を伴う政策実施にマイナンバー制度の活用に言及する声が強いからだ。株式市場でも新型コロナ対策関連として浮上したテーマでは、当初のマスクや除菌剤などからテレワーク 巣ごもり消費関連へと物色の裾野が徐々に広がりをみせた経緯があるが、今後はマイナンバー関連 に位置づけられる銘柄群にも光が当たりそうだ。本命格の銘柄としては官公庁案件に強くマイナンバー関連のコンサルに注力するITbookホールディングス<1447>が挙げられるが、このほかアイネス<9742>なども関連有力株で株価の位置もよい。更に、板はまだ薄いものの動き出すと抜群の脚力を発揮するクロスキャット<2307>もマークされよう。巣ごもり消費ではゲーム関連の好チャート株に着目。例えば「Fit Boxing」好調のイマジニア<4644>などに妙味が感じられる。

また前日にも触れたが、新型コロナウイルスの影響でテレワークなどビジネス現場におけるICT環境の構築が加速するなか、サイバー防衛関連の一群に存在感が増している。セキュアヴェイル<3042>はマドを開けて中段を上放れ75日移動平均線との下方カイ離を急速に埋めてきたが、これに続く銘柄としては800円台後半で踊り場を形成しているセグエグループ<3968>が有力。同社はデジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応したセキュリティー製品販売を手掛ける一方、中核子会社を通じてテレワークソリューションに積極的に取り組んでおり、ここは買いに分がある局面と思われる。

日程面では、あすはオプションSQ(株価指数オプション4月物の特別清算指数)算出日にあたる。また、朝方取引開始前に3月の企業物価指数と3月の貸出・預金動向がいずれも日銀から開示される。海外では、3月の中国消費者物価指数(CPI)、3月の中国生産者物価指数(PPI)が発表されるほか、米国でも3月のCPIや3月の財政収支発表などが予定されている。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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