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1人10万円の現金給付を受ける前に知っておきたいこと

特集
2020年4月30日 11時45分

清水香の「それって常識? 人生100年マネーの作り方-第3回

清水香(Kaori Shimizu)
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表
清水香1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年よりOfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。

米国では新規失業保険の申請件数が400万や500万件を超える週が続くなど、新型コロナウイルスは私たちの体に限らず、家計の健康にも脅威を与えています。

日本でも緊急事態宣言の対象が全国に広がり、休業要請や外出の自粛によって経済に様々な形で影響を及ぼしています。弁護士や社会保険労務士などの専門家のもとには、雇い止めや派遣切り、内定取り消しなどによって収入機会を奪われた人の相談が相次いでいる現状があります。

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休業手当は日給のざっくり6割、税金や社会保険料も引かれる

労働条件の最低基準を定める労働基準法26条では、事業者の判断で従業員を休ませる場合、休業手当の支払いを義務付けています。その水準はざっくり日給の最低6割で、支払わない事業者には30万円以下の罰金が科せられます。

売り上げが下がった事業者が休業手当を負担すると、国は「雇用調整助成金」でバックアップします。今回、新型コロナウイルス感染拡大で特例措置が講じられ、助成率が引き上げられています。

雇用を維持する事業者には、助成率を中小企業では現行の3分の2から5分の4に、大企業で同2分の1から3分の2に引き上げました。また解雇しない事業者への助成率は中小企業の場合は10分の9に、そして大企業では4分の3まで引き上げました。さらに休業要請に応じて休業した中小企業が従業員に同手当を前年賃金の100%支払う場合、国が全額を補助する方針も、4月26日に加藤勝信厚生労働相が表明しています。

この助成率の引き上げで、事業者にとっては休業手当を支払いやすくはなりますが、問題は手当を受け取る従業員がそれで生活を維持できるのかになります。勤め先から日給の6割に当たる休業手当が出たとしても、従業員にとっては大きな減収になります。休業手当は賃金ですので、そこから所得税や社会保険料を控除されてしまいます。家計が厳しくなる世帯は少なくないでしょう。

フリーランスや自営業者には補償制度がない

一方、フリーランスや自営業者には、収入減に対する既存の補償制度はありません。4月7日に閣議決定された緊急経済対策のひとつ、「持続化給付金」による支援が新たに始まる見込みですが、事業継続はもはや時間との闘い。ぎりぎりの状況にある事業主も少なくないのです。

働いた収入で暮らしを回す現役世代にとって、収入を失うことは最大級の家計リスクです。多くの人が、突然厳しい状況に直面せざるを得なくなった現在、コロナ以前の暮らしがどれだけ平穏であったかと、改めて感じずにいられません。

"1人10万円"以外にも様々ある生活者向けの支援制度

突然の収入減のダメージという緊急事態では、あらゆる制度や社会資源を活用して乗り切るほかありません。すぐに思い浮かぶ公的支援では、今回新設された国民1人に10万円を支給する「特別定額給付金(*記事最後に関連リンク)があるでしょう。当初の世帯30万円から紆余曲折を経て決着し、ニュースでも頻繁に取り上げられたので、知っている方も多いでしょう。

■「特別定額給付金」に関する総務省の案内の抜粋

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実はこの""1人10万円"以外にも、収入が急減した世帯が受けられる支援制度があることはご存じでしょうか?

例えば

1. 20万円を上限とする「緊急小口資金」(*同)

2. 授業料減免や給付型奨学金を受けられる「修学支援新制度」(*同)

3. 家賃補助を行う「住居確保給付金」(*同)

――などがあります。最初に挙げた緊急小口資金は、無利子そして保証人不要で利用できます。

ここに紹介したのは、"1人10万円制度"と違って、すでにある制度を今回の事態に合わせて要件の緩和や対象者を拡大しているのですが、その変更内容や制度の存在すら知らなかったという人もいらっしゃるかもしれません。

これらの支援を得るには一定要件を満たす必要があり、また自らの申請が要件となる「申請主義」という高いハードルが存在します。が、受け取ることができれば、生活の足しになるのは確実。思わぬ事態で、本当にサポートが必要になったときに、いちはやく有効な制度にたどり着くためには、普段から制度や社会資源に対するリテラシーを持っておくことが、実はとても大切なのです。

これは、自然災害や今回の事態のような非常事態が頻発する昨今の"新常識"といえるでしょう。

そのほかにも、水道光熱費や電気代、携帯や通信費などの猶予、住宅ローン返済が困難になったときの条件変更の相談など、民間サービスにおいても今回、様々な対応が行われています。これらは災害救助法が適用された被災地に行われるのとほぼ同様の対応であり、日本全体でそれがなされている現状があるわけです。

休業による減収は保険で備えられるか

さて、ここからが今回のテーマです。緊急事態宣言による休業や外出自粛の要請などによって収入を失うリスクを、保険で備えることはできるのでしょうか。収入が減少するリスクに対応する保険として、損保会社の「所得補償保険」、昨今多くの生保会社が取り扱い始めた「就業不能保険」があります。これらの保険が給付対象とするのは、どのような場合でしょうか。

次ページ 休業と就業不能の違い

 

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