成長株狙い・すご腕3人衆が語る「コロナからの教訓と次の一手」-前編
儲けの9割は我慢料、損を取り返すチャンスは必ずやって来る!
登場する銘柄
投資歴約20年で、現在は専業投資家。2005年前後には不動産株への集中投資を行い、200万円を一時10億円にまで、まさに「大膨張」させた実績のあるすご腕。その後のライフドアやリーマンのショックで資産は一時4分の1まで溶かしてしまったが、割安成長株投資に方向転換し再スタート。100銘柄以上に分散投資を行い、極力資産を守りながら増やす投資を心掛ける。現在の資産は不動産含め数億円。
2003年の開始時はファンダメンタルズ重視で成長株狙いの投資法だったが、目覚ましい成果は出ず。その後試行錯誤を重ね、テクニカル要素も取り入れた新手法「新高値ブレイク投資術」に改良。以降、14年には累計利益1億円を突破する。現在は専業投資家に転身。自身の投資をさらに向上させつつ「新高値ブレイク投資塾」を主宰し、次なる億り人を育てることに邁進中。
幼いころから企業分析が大好きな、自称「企業分析おたく」。リーマン・ショックで運用資産の半分以上を吹き飛ばすという苦々しい大ヤラレを経験して以降、「高成長」「優れたビジネスモデル」「割安」にこだわった独自の投資方法を編み出す。その後は爆発的&安定的な資産拡大に成功し、約6年で資産10倍超を遂げる。2018年7月から専業投資家に転身。読者参加型のブログも好評だ。
投資に失敗、損はつきもの。あのウォーレン・バフェットでさえ、今回のコロナ禍では航空株の投資で損失を出している。億り人といわれるすご腕投資家さんたちも、過去に大きな損失を食らうイタイ経験を経て、現在の地位にいる。
同じように失敗をしながらも、方やすご腕、方やフツーの投資家を分けるものは何か。これまでこの「すご腕投資家さんシリーズ」に登場していただいた20人近いすご腕投資家さんの声を聞くと、その共通点は、失敗から学び、次に活かす手立てを何とかして生みだしていることだ。
今回のコロナショックでも、痛手を免れた投資家は稀のはず。起きてしまったことをいくら悔やんでも、状況は何一つ改善しない。この経験から学びを得て、次に実践する準備に取り組むことが、前向きな一歩になる。その参考になるオンライン座談会が先日開催された。
登場したのは当シリーズに登場済みの成長株投資家3人衆で、DAIBOUCHOUさん、DUKE。さん、すぽさん(いずれもハンドルネーム)。「コロナ相場でどう立ち回ったのか&今後はどうするか」についての3人衆の貴重なメッセージをお届けしよう。
すぽさんは米国株の異変を感じ1月末に100%現金化
司会者――コロナショックで特に2月終盤から3月は、株式相場は大暴落に見舞われました。この時期、すご腕の皆さんはどんな対応をしたのですか?
すぽさん(以下、すぽ): 私は、コロナ大暴落の大渦にのまれる前の、1月末の時点で保有株を全て売却、100%現金化していました(参考記事)。あまりのタイミングの良さに、投資家仲間などからは「すご過ぎ」と褒めていただいたのですが、この時は米国株がバブル的に上昇していることを危惧して、ずっと警戒していたのです。
もともと私は、企業分析を綿密に行い、通常はフルインベストメント(フルポジ)で向かうのが基本スタイルなのですが、2008年のリーマン・ショックや18年末のFRB(米連邦準備理事会)ショックで大ヤラレして、それ以降、「この先もやってくるであろう○○ショックの類いを逃れる術はないか」とずっと考えていました。
そうした時に偶然出会ったのが、ある大学教授が説く「ドラゴンキング理論」です。これによると、多くの人が買い・売りのどちらか一方に一斉に向き、皆が同じ行動を取りだすバブルの状態の時は、ファンダメンタルズは全く無視され、とにかく勢いに乗った形で価格が動く。そしてこの動きは、ある限界点に達したところで突如としてゲームオーバーになるというものです。
このことを念頭に置きながら相場を観察していたところ、米国市場の1月24日、主要指数である米ダウ工業株30種平均(NYダウ)が寄り付きから一時、約400ドル近く下落する事態に。日中の取引でボラティリティが高まったことを懸念していたら、翌営業日の27日はさらにダメ押しで24日終値から450ドル以上も下落しました。私なりにこの一連の動きがバブル崩壊のサインなのだと判断し、翌朝の東京市場で保有株を全株売却しました。
■米ダウ工業株30種平均の日足チャート
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
――コロナ大暴落の渦中でこそ、NYダウが1日で1000ドルも下がる日が相次いで、ちょっと感覚がマヒしてしまいましたが、確かに通常の相場だった1月の時点では、ダウが1日にここまで下がるのは珍しい状況でしたね。
すぽ: 米国株がバブル的に上昇していると警戒したのは、18年に大暴落したビットコイン(仮想通貨)の動きが、暴落前の上昇の勢いに似ていると感じたことが背景にありました。私自身はそう不安視していたのに、一方で、「米国株はまだ上昇する」という趣旨の意見が市場で目立ち始めたことも、一層「これはバブルの兆候では」という危機感を抱く要素となっていましたね。
ちなみに私が1月末に100%現金化した話の詳細は、今コラムの私の第1回目の記事に紹介されています。
常にフルポジのDAIBOUCHOUさんも「異常」を回避
DAIBOUCHOUさん(以下、DAI): すぽさんが100%現金化していた話は、ツイッターでチェックしていて、私もその考え方は参考にしていました。
私は原則、全ての資金を投資に回すフルポジション戦略を取っています(参考記事)。実際、相場がまだ高値圏にあった今年1月の時点では信用取引を使ってレバレッジを効かせた取引をしており、保有資産に対して120%の買い建て玉を持っているという状況でした。
ですが、2月の上旬には信用取引分は全て撤退して、現物株投資のみに切り替えました。ちょうどすぽさんが100%現金化した1月末のあたりから、米国株の動きに不安定さが見られると同時に、中国の武漢での新型コロナウイルスの流行が話題になり始めて、市場に漂う不穏ムードが強まってきたように思います。そうしたこともあって、私も警戒感を覚えたからです。
この頃は、コロナの感染拡大という不安要素もあったのですが、同時に2月半ばに公表された2019年10~12月期の国内総生産(GDP)の速報値の弱さも影響しました。その数字は、物価変動の影響を除く実質で前期比1.6%減、年率換算では6.3%減。5四半期ぶりのマイナス成長というもの。昨年秋の消費税率アップが、景気の足をひっぱった形ですね。ここから景気減退懸念が膨らみ、警戒モードをより強めるようになりました。
すぽさんのように大幅にポジションを落としていればもっとよかったのかもしれませんが、それでも早い時期にレバレッジ投資からは手を引いていたので、精神的にはかなり楽だったと思います。
■実質GDP(国内総生産)の成長率推移(年率換算・季節調整値)
出所:内閣府。 注:▲はマイナス。19年10~12月期は1次速報値
暴落時は相場に残ることが最重要項目
――その後、2月末にはDUKE。さんからも、米国株のさらなる異常な動きからポジションを落とすよう注意喚起がありましたね(参考記事)。
DAI: そうしたメッセージを目にしたこともあって、結局、3月の中旬にかけてポジションを全体資産の50%にまで落としました。その後3月の後半からは少しずつ買い戻しをしていき、現在は再びフルポジの状況。先ほど申し上げた通り、通常、私はフルポジで投資しているので、姿勢としては通常運転に戻した格好です。
――すぽさんも同様ですが、フルポジでの投資を常としている人にとっては、ポジを落とす行動は、それなりの強い決断がいるのでしょうね。
DAI: 基本は調整局面でも、多くの場合フルポジで向かうのですが、今回のコロナショックや、直近だと18年末のFRBショック時のように、200日移動平均線のような長期移動平均線を割り込むような大規模な下落局面では、「儲けることではなく、相場から退場しないこと」を第一のこだわりとしています。
相場下落時に損をするのは、確かに受けるダメージは大きいものです。しかし、この先、20年30年とずっと投資を続けていれば、たとえ目先で食らった損失が大きかったとしても、その損を取り戻してそれ以上に儲ける機会はいくらでもあると考えています。
大事なことは、そのチャンスが来た時に、タイミングよく乗れる資金を絶やさぬようにすることです。つまり、相場から撤退しなければならないような絶体絶命の事態に追い込まれない程度に資金管理をしていくことが肝要ということ。そう考えて、3月の、つるべ落としの様相で相場が下がった局面ではポジションを落としました。
――DUKE。さんはいかがですか?
DUKE。さん(以下、DUKE。): 私も2月の後半までは、ほぼフルポジに近い状態で投資を続けていました。しかし、触れていただいた通り、2月24日に米国株の動きに異常を感じ、すぐにポジションを落とす行動に出ました。
ただし、私の場合は、分散投資をしていても、保有しているのは5~6銘柄程度。1銘柄あたりにつぎ込む資金が大きいので、直ちに全株売却というわけにはいきません。そのため、流動性が高く売りやすいものから売り始め、同時並行で先物の売りを仕掛け、その後の暴落に対応していきました。
今回のコロナショックは、戻る局面がほとんどないまま、ものすごいスピードで株価が引きずり落ちていくという、恐ろしい下落でした。もちろん早く逃げなくては、という気持ちですぐに行動したつもりですが、それでも実際は、逃げるそばから背中を切られていったという緊迫感があるものだったと思います。
■日経平均株価の日足チャート
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