米国株式市場見通し:米中対立激化や経済指標が上値抑制か
経済活動の再開が徐々に拡大することや米連邦準備制度理事会(FRB)による力強い金融支援が下値を支えるものの、ウイルス感染の「第2波」や悪い経済指標、さらに、米中関係の悪化という新たなリスクに上値が抑制される可能性がある。政府の第4弾救済策の行方に注目が集まっている。第3弾救済策は6月までだが、それ以降も米国経済には支援が必至という点では与野党とも合意している。トランプ大統領も追加救済策に前向きで、給与税減税などが望ましいとの考えを示している。
経済指標は4月に底を付けた可能性があり5月の消費者信頼感指数は予想を上回った。しかし、米国経済への影響は長期間に及び、回復も長く冴えないものになる可能性が強い。FRBが歴史上初めてリスクの高いハイイールド債(ジャンク債)やETFの買い入れに踏み切ったものの、米国企業の破綻が今後増加することはほぼ確実だ。著名投資家は相次いで恐慌時に近い経済の悪化にもかかわらず「株式相場が高過ぎる」と慎重な見方を示している。
新型コロナウイルスの蔓延で米中対立が悪化する兆しも見える。大統領は米中貿易協定を撤回し、中国と断交する可能性にも言及した。米連邦職員年金基金の中国企業への投資を無期延期にしたほか中国通信機器最大手のファーウェイへの制裁強化を発表しており、一段の情勢悪化に警戒する必要がある。
経済指標では、5月NAHB住宅市場指数(18日)、4月住宅着工件数・許可件数(19日)、5月フィラデルフィア連銀景況指数(21日)、4月中古住宅販売件数(21日)などが予定されている。また、20日に28日、29日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が公表される。FRBはこの会合で事実上のゼロ金利政策と量的緩和の継続を決め、必要に応じて追加策を取る方針を表明した。米金利先物市場では2021年にもマイナス金利を導入することを織り込み始めており、議論の内容に注目が集まる。パウエルFRB議長は21日のイベントで講演するほか、ムニューシン米財務長官と19日にパンデミック対策に関し上院銀行委員会で証言する予定となっている。
今週は百貨店のコールズ(19日)、JCペ二?(19日)、ノードストローム(19日)の決算発表が予定されている。同業のニーマンマーカスが先日破産申請しており、JCペニーの破産も秒読みと見られている。ノードストロームも先日16店舗の閉鎖を発表している。その他、アパレルのアーバンアウトフィッターズ(19日)やLブランズ(20日)の決算でも新型ウイルスの影響による苦戦が予想される。一方でディスカウントストアのウォルマート(19日)やターゲット(20日)、ホームセンターのロウズ(20日)やホームデポ(19日)などはコスト増が想定されるものの、外出禁止の状況下でも比較的堅調な売上増が期待できそうだ。小売以外では、旅行予約サイトのエクスペディア(20日)、半導体のエヌビデイア(21日)中国のネット通販事業を手掛けるアリババ(22日)などの決算発表が予定されている。エクスペディアは旅行需要急減に伴う大幅な業績悪化が警戒される。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》