『セル・イン・メイ』の可能性は残されているのか? <東条麻衣子の株式注意情報>
新型コロナウイルス感染ペースの鈍化と経済活動の再開に対する期待を背景に、日米株式市場は比較的底堅く推移している。発表される決算は散々な内容のものが多く、両国ともに来期の決算は更なる悪化が見込まれており、実体経済と株式市場との温度差に違和感を覚える投資家も多いのではないだろうか。
確かに大規模な景気対策は経済を下支えようが、感染第一波の封じ込めに成功し、一足先に経済活動を再開させた中国においてすら、消費・雇用ともにV字回復するとは考えにくい。
5月11日、上海ディズニーランドが3カ月半ぶりに営業を再開したが、中国のコロナ禍克服の象徴として報じられた同園においても、収容人数を5分の1に抑える入場制限を行っているとされる。米国や日本で外出規制(要請)が緩和されたとしても、ソーシャルディスタンスなどコロナウイルス対策を取りながらの活動再開となろうから、やはりワクチン完成までは本格的な経済活動と景気のV字回復は見込めないだろう。
■偏った形の株価指数の上昇
米国の各指数の騰落レシオ(25日・5月18日時点)をみると、上昇セクターには偏りがみられる。
・ナスダック運輸株指数 82.362
・ナスダックバイオテクノロジー株指数 130.780
・ナスダック銀行株指数 75.200
・ナスダック100指数 129.234
・ナスダック金融株指数 102.891
・ナスダック保険株指数 83.707
・ナスダック通信株指数 100.742
・NYダウ公共株15種 88.442
・NYダウ輸送株20種 73.264
バイオやGAFAなどの大型ハイテク株の構成比率が高いナスダック100指数は買われているものの、他は冴えないものが多い。つまり、コロナウイルス対策としての新薬開発やIT活用など、コロナ禍にあっても業績の改善が見込めるものが買われているだけの相場ともとれる。しかも、騰落レシオを見る限りでは多少行き過ぎ感もあり、ここから更にそれらへの一方的な買いが続くとも考えにくい。
■ヘッジファンドの『45日ルール』
ヘッジファンドの決算は6月末と12月末日が多いのだが、顧客はファンドを解約する場合に、決算の45日前までに解約を申し出ねばならないという「45日ルール」がある。6月末の決算の45日前というと、5月15日がその期日となる。
ヘッジファンドは解約にあたって顧客に資金を返還するため、株式を売って換金する必要が出てくる。
今年は各国で経済活動が大きく抑制されたことにより、現金を必要とする顧客がファンドの解約に動くケースが増える可能性もあるのではないか。そうであるならば、6月末に向けてヘッジファンドによる換金売りが出て、相場の攪乱要因となることも考えられる。
■日銀の買い支え
確かに、下落局面では日銀のETF買いもあって底堅い展開が考えられる。しかし、3月のピーク時では1日に2004億円買い入れていたが、4月には1202億円、今月に入ってからは1005億円と買い入れ金額が減少しているのは気になるところだろう。
これらを踏まえると、日経平均株価は月末に向けて利益確定売りに押される可能性(=セルインメイ)も考慮しておく必要があるのではないだろうか。
◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。
■ 株式注意情報.jp http://kabu-caution.jp/
■ Twitter https://twitter.com/kabushikichui
【東条麻衣子の最新刊】
◆『米国商品情報を活用して待ち伏せする “先取り"株式投資術』(パンローリング株式会社)
・松本英毅 (著), 東条麻衣子 (著)
・第1章では松本英毅氏が米国商品市場のファンダメンタル分析方法を詳しく解説。第2章では筆者が米国商品市場をもとにどのように相場戦略を組立てているかについて解説する。
株探ニュース