【村瀬智一が斬る!深層マーケット】 ─ 「米中対立を警戒も、トレンド追随での順張り投資が続こう」
「米中対立を警戒も、トレンド追随での順張り投資が続こう」
●乱高下はあっても基本はリバウンド方向
今週の日経平均株価は一時2万700円を回復するなど、2万円固めからのレンジ切り上げが意識されてきた。各国でロックダウン解除に伴う経済活動再開に向けた流れが期待される中、原油や商品相場も正常化してきており、金融市場も落ち着きをみせてきた。注目されていた決算発表も今期見通しが示せない企業が6割近くあるとはいえ、ひとまずイベント自体は通過した。
経済活動再開の期待が高まり、株式市場を見直す動きがこれから本格化するといったところではあるが、ここにきて再び米中対立への警戒感が強まっている。週末には、中国政府が香港を巡る国家安全法の導入を計画していると伝えられ、香港ハンセン指数が5%を超える下落となり、アジア各市場にも売りが波及した。米国は強硬策を打ち出すとも伝えられており、米中対立への警戒が投資家をリスク回避姿勢に傾かせやすいだろう。ただし、米政権の反応は大統領選を控えての動きとみられ、乱高下があったとしても、株式市場は基本的にリバウンド方向へ向かうだろう。
また、現在の需給状況は良好である。VIX指数は金融パニック時の80超えから、直近では30前後で推移。VIX先物のショートポジションの巻き戻しによる株式市場下落を警戒する向きもあるが、そもそもショートポジションはそれほど積み上がっていない状況である。日経平均の2万円回復においても、売買代金が連日で2兆円前後といった薄商いの中では、大きくロングポジションを積み上げた動きはないだろう。
一方、個人の信用需給の積み上がりを警戒視する声が聞かれる。中小型株は中核的な銘柄が一気に値を消す展開となると、他の中小型株へも換金売りが加速する動きが出てくる可能性はある。ただし、強いトレンドが継続している銘柄をみると、過熱警戒から新規売りが積み上がり、取組妙味が高まることで、結果的に踏み上げに向かわせている。米中対立を警戒しつつも、トレンド追随での順張り投資が続こう。
●今週の活躍期待「注目5銘柄」
◆トリドールホールディングス <3397>
釜揚げうどん「丸亀製麺」をはじめ、様々なブランドを展開する外食チェーン。新型コロナ感染の長期化に備えてメガバンク3行と合計300億円の融資枠を設定し、手元資金を多めに確保した。楽観はできないだろうが、緊急事態宣言の解除に伴う経済活動再開の流れが、外食産業の見直しへと向かわせよう。オーナー企業でフットワークが軽く、業績回復へ向けた施策への期待も高まろう。
◆SBテクノロジー <4726>
ソフトバンクグループのICT事業中核会社。2020年3月期決算は2ケタ増収増益で売上・利益ともに過去最高を更新。今期も増収増益を見込んでおり、業績成長が期待される。アフターコロナにおける働き方として、 テレワークやデジタル化に向けたツールの導入やシステム開発、合わせて同社の得意分野でもあるセキュリティ対策の投資が進むだろう。また、政府は2025年3月までに行政手続きの9割を電子化する計画を打ち出しており、農水省向け案件で実績があることで受注拡大が期待される。
◆アインホールディングス <9627>
調剤薬局最大手。5月半ばに ドラッグストア「アインズ&トルぺ」のECサイトを開設した。20代~30代の若い女性に人気の化粧品などオリジナルブランドの販売を強化する。新型コロナによる外出自粛が解除され、女性のおしゃれ需要も徐々に回復してくることになろう。また、マスク着用のため、目力にポイントを置く商品やスキンケア製品などの需要増がありそうだ。加えて、調剤薬局やドラッグストア業界は引き続きM&Aの思惑が燻ぶることになろう。
◆ハーモニック・ドライブ・システムズ <6324> [JQ]
中小型の産業用ロボット向け部品を製造。2020年3月期の営業利益は前期比99.6%減だったが、従来予想の営業赤字とはならず、営業黒字を確保した。第4四半期(20年1-3月)の単体受注高は前年同期比95.0%増、前四半期比13.8%増の54.47億円と改善傾向が続く。米中対立は警戒されるが、信用需給妙味があり、中国の生産回復を受けた踏み上げに期待。
◆エレコム <6750>
PC周辺機器メーカー大手。前期決算はパソコン関連でWindows10への切り替え需要が堅調だった。緊急事態宣言の解除後は材料出尽くしに向かう可能性はありそうだが、テレワーク化の流れは継続。人気PCなどは納入待ちの状況でもある。また、オンライン会議や授業に取り組む動きが加速しているが、通信環境等の課題もあり、周辺機器の需要なども伸びることが期待される。
2020年5月22日 記
株探ニュース