為替週間見通し:米中対立先鋭化の懸念もリスク回避の円買い抑制か

通貨
2020年5月23日 14時37分

【先週の概況】

■米中対立を警戒して安全逃避のドル買い優勢

先週のドル・円はやや強含み。新型コロナウイルスの感染拡大を抑制する措置が緩和され、米国経済の段階的な再開への期待が広がっていることや、米中関係の緊張状態は続いていることから、安全逃避的なドル買いが優勢となった。中国政府は5月22日、香港に国家安全法の制定を義務付ける新たな法案を全国人民代表大会(全人代)に提出したこともドル買い材料となった。トランプ米大統領は21日、「中国が香港に国家安全法を導入すれば極めて強硬に対応する」との見方を伝えており、米国と中国の対立が短期間で解消される可能性は低いとの見方が広がった。

22日のニューヨーク外為市場でドル・円は、一時107円46銭まで下落した。中国政府が全国人民代表大会で香港に国家安全法適用することを協議し、台湾介入も辞さない強硬姿勢に転じたことから、一部でリスク回避の円買いが観測された。しかしながら、米連邦準備制度理事会(FRB)が証券購入ペースを減速する計画を発表したことや、国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長が、12月までに米国内で新型コロナウイルスのワクチン接種を開始する可能性に自信を表明したことから、リスク回避の円買いは後退。ドル・円は107円62銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:107円04銭-108円09銭。

【今週の見通し】

■米中対立先鋭化の懸念もリスク回避の円買い抑制か

今週のドル・円は底堅い値動きか。世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルス対応をめぐり米国と中国は対立している。両国の関係悪化を警戒してリスク選好的な為替取引は縮小しつつあるが、日本銀行による追加金融支援策は円買い圧力を弱める可能性があること、米連邦準備制度理事会(FRB)の経済支援策への期待は失われていないことから、リスク回避的なドル売り・円買いが大きく広がる可能性は低いとみられる。

米中対立は長期化の様相を呈している。トランプ政権は香港の「一国二制度」を持ち出し、ポンペオ国務長官が批判的な見解を示したのに対し、中国側も内政干渉と反論している。米国の台湾への武器輸出などにも問題が広がり、非難の応酬が続く。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は、「第1段階に合意した米中貿易交渉について破棄されない」と予想しているが、市場の警戒感は払しょくされていないようだ。

ただ、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は議会証言やセミナーなどで、緩和的な措置に言及しており、株式市場を支える要因となっていることは見逃せない。米国では新型コロナ抑止のための制限措置は緩和されており、米国経済の段階的な再開(経済正常化)を見込んだドル買いがただちに縮小する可能性は低いとみられる。

【米・5月消費者信頼感指数】(26日発表予定)

26日発表の米CB5月消費者信頼感指数は87.0と、4月の86.9をわずかに上回る見通し。米国経済の再開を好感して消費者信頼感は改善するとみられており、市場予想を上回った場合、ドル買い材料になりそうだ。

【米・1-3月期国内総生産(GDP)改定値】(28日発表予定)

28日発表の米1-3月期国内総生産(GDP)改定値は、速報値の前期比年率-4.8%からさらに下方修正されるか注目される。市場予想を下回った場合、米国景気の早期回復への期待は後退するが、ドル売り材料にはならない可能性がある。

予想レンジ:106円50銭-109円00銭

《FA》

提供:フィスコ

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