ゼロから始める「株探」の歩き方 ― (21)大化け期待の成長銘柄をピックアップしよう
決算発表を利用して上方修正銘柄を探す
◆【第1四半期】時点 中間期上振れ有望銘柄
では、上方修正が期待できそうな銘柄を事前にリサーチした「【第1四半期】時点 中間期上振れ有望銘柄」をクリックしてみましょう。この項目は、「対中間期進捗率」に注目して上振れ有望銘柄が一覧表にまとめられています(図3)。
図3 【第1四半期】時点 中間期上振れ有望銘柄
「対中間期進捗率」は、直近に発表された第1四半期決算の時点で、会社側の中間期計画に対して経常利益がどこまで進捗しているのか(=達成度がどこまで進んでいるのか)を表すものです。
たとえば、ある企業の第1四半期の経常利益が80億円で着地し、期初に予想していた中間期の経常利益が100億円であるとします。この場合、「対中間期進捗率」は80億円÷100億円=0.8、パーセントで表示すると80%になります。日数で言えば、第1四半期は中間期の半分ですから、単純計算すると、第1四半期の進捗率の平均的な考え方としては50%あたりを想定することができて、これを上回ることでようやく上方修正する可能性が出てきます。前述の例で考えると、第1四半期の時点で中間期に稼ぐことが予想されている利益の80%をすでに達成していることがわかります。つまり、このままのペースで進むと仮定した場合、中間期の利益は従来の予想を大きく超えることになるのです。
ただし、年度初めの春はスタートダッシュが良いとか、夏が繁忙期であるといった季節特性を持つ企業があります。となると、過去の年度における進捗率の傾向も確認して、その企業の性格を把握しておく必要があるということになります。「【第1四半期】時点 中間期上振れ有望銘柄」では、過去5年間の進捗率を平均した「5年平均進捗率」が記載されていますので、これを利用することで、過去に対して足元の進捗率がどうなのかを簡単に把握することができるようになります。前述の例で考えると、5年平均進捗率が50%程度であった場合、今期の第1四半期の進捗率が80%であるならば、上方修正が期待できるのではないかと考えられる可能性が高くなるのです。
このコーナーでは上方修正の可能性が高い条件として、(1)対中間期進捗率が65%以上であること、(2)直近の進捗率が5年平均進捗率を上回っていること、の2点があげられています。一覧表では進捗率の数値が大きく、上方修正の可能性が高そうな銘柄から並べられていますので、チェックするときは上から目を通していきましょう。
ただし、一覧で表示されるとはいえ、景気の立ち上がり局面などでは表示される銘柄はかなりの数になる場合もあるでしょう。実際に売買を行う銘柄を探す際には、自分が普段から取引している市場から銘柄を選んだ方がよいでしょう。表の上部にある「市場別」と「時価総額別」のフィルターを活用して、銘柄をある程度選別してみましょう。たとえば、東証1部の大型株を中心に取引している人の場合には、「市場別」の「1部」をクリックすることで、東証1部の銘柄に絞り込みを行うことができます。
東証1部の銘柄に表示を切り替えると、一番上には「6071 IBJ」が表示されます(図4)。IBJの数値を確認していくと、「対中間期進捗率」は512%、「5年平均進捗率」が47.8%、そして、「決算期間」には「20.1-20.3」と表示されています。この表からは、IBJは12月決算銘柄で、1-3月期が第1四半期であることがわかります。
図4 東証1部上場を条件に絞り込んだ「中間期上振れ有望銘柄」
IBJの進捗率は512%と非常に高い数値となっています。ただし、この数字を安易に信じていいわけではありません。進捗率をもとに、目星をつけた銘柄の決算短信を実際に確認していかなければなりません。というのも、IBJは5月12日に第1四半期決算を発表していて、経常利益は15%増の5.1億円と堅調でした。ところが、同時に中間期(上期)の経常利益を従来予想の11.5億円から1億円に91%下方修正しています。つまり、この引き下げられた予想数値に対しての進捗率だから、数値が大きく出ている状況だということを確認しておかなければならないのです。
ちなみに、同社が中間期予想を引き下げたのは、新型コロナウイルスの感染拡大によりグループ会社の旅行事業が大きな影響を受けるためです。
図5 IBJが発表した決算を報じた株探の「決算速報」
特に今期は多くの企業が新型コロナのパンデミックと経済活動の停滞によって業績に大きなダメージが見込まれまる状況です。決算短信などの開示資料は必ずチェックして、本当の力を確認しなければならないでしょう。
「進捗率」は有望株を探す上で有効な手掛かりとなりますが、その時々の経済状況などとも密接に絡み合っています。決算短信などと合わせて確認することでその精度を一段と高めることができますから、不確実性の高い今期はより一層の確認を行うようにしましょう。
株探ニュース