来週の株式相場戦略=過剰流動性が支える相場、中小型株物色の流れ健在
6月第3週の日経平均株価は週前半に乱高下する展開となったが週末はしぶとく反発して、週間では結局173円(0.8%)高と2週ぶりに上昇した。
全体相場は5月後半から6月初旬にかけての一方通行の上昇トレンドが一服、足もとは強弱感対立で不安定な地合いとなっている。新型コロナウイルスの感染拡大に対する懸念と財政出動や金融緩和政策による景気浮揚に対する期待が綱引きする展開だが、基本的には過剰流動性が相場の下値を支える形で、来週も上値は重いながら強調地合いが想定される。波乱要因となり得るのは、米国での新型コロナウイルスの感染者増加や米中摩擦の先鋭化、トランプ米大統領のスキャンダルといったところだが、下値を試す場面があってもそれほどの深押しはなさそうだ。下値メドとしては200日移動平均線が横に走る2万1800円前後。一方、買い優勢に傾いた場合も上値は6月9日のザラ場高値を視界に2万3000円近辺で戻り売りに押される展開か。
新高値圏にある東証マザーズ市場の強さをみても分かるように、個人投資家による中小型の個別株物色に勢いがある。来週も旺盛な個別株物色が続くとすれば狙い目はどこか。今の相場の物色の方向性としてはAI・IoTの周辺や教育ICT及び医療ICT関連の銘柄、更に新型コロナウイルスの思惑が絡むバイオ。そしてもう一つは個人消費で、“巣ごもり消費”に関係する銘柄群に波状的に資金が流れ込んでいる。
巣ごもり消費とひとことで言っても、その対象はゲームや宅配など様々だが、分かりやすいところではネット通販で潤っている銘柄が挙げられる。例えばきょうはカジュアル衣料のANAP<3189>が値幅制限いっぱいに買われたほか、「バイマ」を運営するエニグモ<3665>や、eコマース業者向けクラウドシステムを提供するロジザード<4391>なども強い。こういった通販関連の買われ方は、バイオ株の時と同様に単発的なものではない、いわゆる“潮の流れに乗っている”動きだ。
この流れを認識したうえで、マークしておきたいのがイムラ封筒<3955>だ。封筒事業のトップ企業で、企画提案の段階から一貫フォローするパッケージソリューション事業が売上高の8割を占める。現在は新型コロナウイルスの影響によるネット通販市場の活況で包装需要が急拡大しており、DM市場の先細りを補って新たな収益成長シナリオが描ける。また、官公庁向けで実績が高い点もポイントで、政府が打ち出した現金給付関連の特需は第2四半期(5~7月)の業績にオンされる。PER10倍前後、PBRは解散価値の半値である0.5倍台と割安感が際立っている。この指標面の割安感は今週取り上げたウェーブロックホールディングス<7940>にも通じるものがある。
このほか、通販関連ではスクロール<8005>なども新値街道にあるが株価はまだ400円台で、滞留出来高の薄いエリアに突入しているだけに注目しておきたい。
また、現金給付の問題も絡み政府が普及に力を入れるマイナンバー関連ではITbookホールディングス<1447>が経営統合後の最高値にあと一歩と迫っている。きょうは無人運航船の実証実験に絡む材料でストップ高に買われたが、マイナンバー関連の本命であることにも変わりはなく、押し目があれば狙える。また、これに続く銘柄として、以前にも取り上げたが、キャリアリンク<6070>、クロスキャット<2307>などにも引き続き目を配っておきたい。
日程面では、来週は主に米国で、今週同様に重要経済指標発表が相次ぐ。まず、週初の22日に5月の米中古住宅販売件数、23日に5月の米新築住宅販売件数が発表される。また24日には4月のFHFA住宅価格指数、25日に1~3月期の米GDP確定値、5月の米耐久財受注の発表と続く。週末の26日は5月の米個人所得・個人支出、6月の米消費者態度指数(確報値・ミシガン大学調査)が開示される。また、欧州では24日に発表される6月の独Ifo企業景況感指数への注目度が高い。
(中村潤一)