【村瀬智一が斬る!深層マーケット】 ─ 「中小型株活況もIPO再開後の需給変化には注視が必要」
●ポストコロナ、5Gなど切り口に中小型株に勢い
今週の日経平均株価は週初こそ波乱含みの展開となったが、25日移動平均線がサポートとして機能し踏みとどまった。その後はこう着感の強い展開が続いたものの、心理的な支持線である200日移動平均線を上回っての推移が続いた。中国・北京で新型コロナウイルス感染者が増加したほか、米国においても早くからロックダウン解除を行った州で感染者が増加傾向にあるなど、感染第2波への警戒が重荷となった。また、前週のメジャーSQ通過で、現物・先物市場において商いが細っており、需給面からも手掛けづらさが窺えた。ただし、週初の700円超の下落の翌日には一転して1000円超の上昇もみせており、短期筋の売り仕掛け的な売買も出しづらい需給状況であった。
その中で、新興市場の中小型株に値幅取り狙いの資金が集中している。短期的な過熱感が警戒されている銘柄も多いが、資金回転が効いていることもあって、利食いをこなしながら上昇が続いており、センチメントを明るくさせている。また、今般の新型コロナウイルス感染症によってバイオ株にとどまらず、今後の生活スタイルの変化に伴うテーマ株への物色もみられている。さらに、ここにきて未定としていた今期計画の会社発表が随時行われており、特にハイテクセクターにおいては、今後本格化する「5G」需要によって強気の計画が示されており、安心感につながっている。
そして目下、資金が向かっている中小型株ではあるが、来週からIPOが再開される。コパ・コーポレーション <7689> [東証M]、ロコガイド <4497> [東証M]、フィーチャ <4052> [東証M]が24日、コマースOneホールディングス <4496> [東証M]が26日にそれぞれマザーズ市場に上場する。2カ月ぶりのIPO再開でいずれも投資家の注目度は高く、足元の中小型株物色の活況によって、寄り付きから人気化するとみられている。ただし、IPOが再開されることから、これまで強いトレンドを形成していた新興市場銘柄などに対しては、IPO参加のための換金売り圧力が強まる可能性は注意しておきたいところだろう。人気化していた銘柄の調整が強まる場面においては、他の銘柄へもこの動きが連鎖しやすい。
そのほか、来週から月末にかけては株主総会シーズンを迎える。これにより機関投資家は動きづらくなるが、一方で売りも出にくくなるため、下値の堅さが意識されそうである。また、6月に入り3月期末の配当が支払われてきており、配当再投資に伴う需給も下支えになりそうだ。
●今週の活躍期待「注目5銘柄」
◆Link-U <4446> [東証M]
ニーズに合わせてサービスごとに自社で設計したオリジナルサーバーを開発し、iOS、Android、webの各プラットフォームにおいてアプリケーションなどを提供する。「電子書籍」や「動画配信」の分野において強みを持つ。コロナ禍において、強みのマンガ事業の成長が期待される。また、5Gの本格スタートに伴い、オリジナルサーバーの需要ニーズが高まる可能性も高く、成長期待が一段と高まろう。
◆パイプドHD <3919>
クラウド型の情報資産管理プラットフォーム「スパイラル」などを提供しており、顧客企業・団体のコスト低減・業務効率化に資するシステムを幅広く手掛けている。グループ企業においてテレワーク導入支援、匿名型ハラスメント相談受付システム、製薬企業向けマーケティングオートメーション(MA)ツールと連携したシステムやチケット管理サービス、テイクアウト予約サービス機能を備えたアプリなど、コロナ禍における需要ニーズの高い分野に幅広く対応している。
◆東京応化工業 <4186>
半導体製造用フォトレジストにおいて世界トップクラスのシェアを有している。コア・テクノロジーであるフォトリソグラフィを用いた微細加工技術に強みを持ち、次世代材料(EUV用など)の開発も積極的に進めている。足元ではデータセンター向けの需要、そして本格化する「5G」によって半導体製造用フォトレジストの需要が高まると考えられる。
◆グレイステクノロジー <6541>
マニュアル制作をフックに事業を展開。株価は最高値更新と過熱警戒感は拭えないところではあるが、マニュアルの作成・管理が行えるクラウドサービスのほか、搭載されたカメラとマイクでAI(人工知能)が作業者の動作を認識し、ARや音声で指示する完全誘導型AIマニュアル「GRACE VISION(R)」はコロナ禍において成長期待が大きいだろう。
◆GMOメディア <6180> [東証M]
小学生向けのプログラミングスクールのポータルサイト「コエテコ」や教育機関・教育事業者向け「EdTechサービス」のほか、HTML5ゲームプラットフォーム、無料でポイントを貯められる「ポイントタウン」などのサービスを手掛けている。不正広告アドフラウド対策ツール「SpiderAF」をASPとして国内で初めて導入している。閲覧数などを水増しする行為への対策として、デジタル広告市場からの需要ニーズは大きいと考えられる。
株探ニュース