和島英樹の「明日の好悪材料Next」~第4回
半導体関連にポジティブ見通し、REITは先行き不透明感が
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
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6月12~18日分では、非開示だった業績予想を発表した企業が目立った。半導体関連ではポジティブな見通しを出すところがあった。テレワークの進展で通信量の増大などが追い風になっている企業もある。会社側がコロナ影響について徐々に読めてきたと推測される開示もあり、銘柄選別には役立ちそう。
REITの決算では先行きの不透明感が残った。
6月12日分 新光電気工業<6967>
■好悪材料~非開示だった今期経常は2.3倍増益へ
同社は半導体(IC)パッケージ、リードフレームの大手で、富士通<6702>系。ICパッケージではフリップチップ(FC)パッケージが伸びている。これは半導体の微細化や高密度化に対応し、電気特性・耐熱性に優れた半導体パッケージのこと。リードフレームとは、ICやLSIなどの半導体パッケージに使われ、半導体素子(半導体チップ)を指示し、外部配線と接続する部品。
非開示だった2021年3月期の売上高は1711億円(前期比15.3%増)、営業利益107億円(同3.3倍)、1株当たり当期純利益は51.8円(同2.6倍)になる見通しと発表した。同社の製品はEV(電気自動車)や、次世代通信規格「5G」などビックデータやAI(人工知能)、すべてのものがネットでつながるIoTの普及で需要が高まる領域にある。
新型コロナ関連の影響については、自動車業界では今期の第2四半期にかけて総じて改善方向に向かい、第3四半期、市況が回復していくことが前提としている。 一方、半導体業界においては5Gの実用化およびIoT・AIの活用の進展などによるデータセンター用のサーバー向けの需要拡大や、中長期的な半導体需要の増加を背景とする半導体製造装置市場の拡大などが見込まれる。
注:写真はイメージ
こうした中で同社では高岳工場(長野県中野市)などで大型設備投資を行ってきたFCパッケージの生産ラインが、20年度後半から量産稼働を開始する予定。また、テレワークやオンライン学習の需要増加を背景にパソコン販売が堅調に推移などを要因としている。つれてリードフレームも伸びる。
FCパッケージはパソコンやサーバーに統制されるCPU(中央演算処理装置)などの高性能半導体剥けに数多く使われている。5G、IoT、AIのほか、自動運転の実用化など、大容量のデータを高速で処理するサーバー向けを始め、高性能半導体の需要も一層高まることが予想される。
ICパッケージではイビデン<4062>の業績が好調だ。同社の2021年3月期の営業利益は前期比37.2%増の270億円、1株利益107.4円(同32.4%増)を計画している。同社では先ごろ、ICパッケージ基板の生産設備の能力増強や次世代投資に600億円を投じると発表した。18年11月にも700億円の設備投資計画を発表しているが、想定以上の需要増で追加投資に踏み切る格好だ。
ICリードフレームの大手は三井ハイテック<6966>。先に発表した21年1月期の第1四半期(20年2~4月)決算は売上高216億8900万円(前年同期比5.3%増)、営業損益1億4700万円の黒字(前年同期は3億4700万円の赤字)だった。顧客の半導体投資意欲の低下で前期にかけては苦戦してきたが、リードフレームなどの底入れ感が鮮明になりつつある。コロナ影響が不透明として通期業績は非開示だが、期を追って改善することが予想される。
6月15日分 パーク24<4666>
■好悪材料~今期最終を一転赤字に下方修正、配当も無配転落。5月タイムズパーキング売上高は前年同月比33.5%減
時間貸し駐車場「タイムズ」やカーシェアリングの大手。2020年10月期通期の業績を下方修正。売上高は2630億円(前期比17.1%減)、営業損益は242億円の赤字(前期は223億円の黒字)。年70円としていた配当は無配とした。赤字は1999年の上場以来、初めてで、無配も初となる。
■『株探』プレミアムで確認できるパーク24<4666>の長期業績推移
業績不振の要因は新型コロナ影響で車の移動の減少。同社が駐車場で海外展開も行っており、英やシンガポールでロックダウンの影響があった。株式市場では比較的安定しているとみていた同社株の業績悪化はネガティブにとらえ、大きく下落した。
会社側では発表資料で、下期について売上高は5月に当初予想比約50%、6月以降は経過月ごとに約5~10%回復、当期末の10月は約85%を見込むとしている。最悪期は脱したとみられ、反転の時期を探る段階に入るとみられる。
6月16日分インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人<3298>
■好悪材料~今期経常は5%減益へ
米インベスコ・グループがスポンサーのREIT(上場不動産投資信託)。東京23区を最重点地域で、オフィスビルを中心に投資。保有する物件数は19で、取得価格は2293億円になる。
REITは6カ月間で本決算のケースが多い。同REITの2020年10月期の純利益は前期比4.9%減、分配金は388円(前期は409円)の予想。次期21年4月期の純利益は今期予想比4.5%減、分配金は370円予想。
6月18日終値で年間分配金利回りは5.06%。現行利回りは魅力だが、新型コロナでオフィスビル需要の先行き不透明感で、分配金の低下傾向続くか焦点。なお、15日に4月期決算を発表したホテル型リート最大手の星野リゾート・リート投資法人<3287>は20年10月期に同純益4.1%減、分配金1万2753円(前期は1万3302円)、21年4月期は60%減益(分配金5107円)の予想。分配金も減少傾向に。
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