混迷経済の最強指標は、「利益より売上高」「1年先より5年先」
大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第43回
参考までに、同じく5期先の条件で経常利益を除き、売上高と営業利益、純利益の成長率のパフォーマンスを掲載しています。
■売上高・営業利益・純利益の各成長率別パフォーマンス比較
出所:データストリーム。 注:過去10年のロングショート
結果として、売上高成長率のパフォーマンスの高さと安定性の双方が際立ちます。このケースも、特に足元で非常に良好な推移となっているので、不安定な経済環境下で特に不確実性が嫌われ、相対的に可視性の高い売上高成長率が好まれることが理解できると思います。
また、売上高・営業利益・経常利益・純利益の収益項目と12カ月先、3期先、5期先の3種類の予想期間を組み合わせて12種類のファクターのシャープレシオ(年率リターン÷リターンの年率標準偏差)を比較すると、このマクロの足し算、ミクロの引き算の法則性がさらに強く裏付けられます。下の図は経常利益を除いて比較したものです。
売上高、営業利益、純利益のどれもシャープレシオは5期先が最も高く、3期先そして12カ月先の順になる点で共通しています。グラフに示していませんが、経常利益でも同様の結果です。
■3つの成長率指標の5期・3期・12カ月先シャープレシオの比較
出所:データストリーム。 注:過去10年のロングショート
5期先の売上高成長率は単独のファクターでシャープレシオが1.2を超えてきており、これほど優秀な指標は株式投資の世界にほとんど存在しません。つまり5期先の売上高成長率は高パフォーマンスのみならず、高効率である実態も明らかになりました。
以上の分析からは、予想がより困難になる遠い将来ほど期待が織り込まれやすく、収益項目では予想が相対的に容易になる売上高が投資指標としてよく機能している、という結論になります。経済が不安定化し、相場が乱高下を見せる現在のような相場こそ、投資家心理の隙間をついたアイデアが重要性を増してくるフェーズにあるように思います。
最後に、参考までに今回の分析に該当する銘柄の例を添付します。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
株探ニュース