明日の株式相場戦略=メインストリートと裏街道
きょう(14日)は薄商いのなか日経平均が200円弱の下げとなり、2万2500円台で着地した。ひとことで言えば前日の反動。中国や香港株が安く、これから米中の重要経済指標が相次ぐとあっては、あまり買いポジションを積み上げるわけにもいかない。もっとも押し目形成場面は、投資対象を改めて絞り直す好機と考えておきたい。
個別株戦略については、まず投資テーマという切り口で考えると、テレワーク、半導体、5Gといったお馴染みのメインストリートを走るものとは別に、国内消費の「勝ち組小売企業」に投資マネーが向かっている。確かに、米アマゾンの躍進がもたらした“アマゾンエフェクト”は消費セクターの業界地図を塗り替えたにとどまらず、もっと立体的な枠組みそのものを変えてしまったようなところがある。しかし、それはやはり一つの側面でしかない。例えばリアル店舗で展開する企業は全部が苦戦を強いられるということではなく、業績をしっかり伸ばしている企業も少なからずあるということを株式市場はしっかり認識している。むしろアマゾンエフェクトで鮮明化したのは、eコマースVSリアル店舗という構図ではなく、店舗を構える企業同士の優勝劣敗、淘汰の流れだったといえるかもしれない。
時価総額上位の大型株で言えばニトリホールディングス<9843>が典型だが、そのほか再び上場来高値を射程に入れてきたワークマン<7564>なども業績に裏付けされた株価変貌を実現した代表的銘柄だ。当欄で以前紹介したことのあるジェーソン<3080>はここにきて上げ足を加速、同時期に取り上げたワッツ<2735>も株価の居どころを大きく変えた。そのほか、直近ではコーナン商事<7516>などが上場来高値圏を走る展開となっている。
共通項は今のバブルモードの株式市場とは対極というべき、デフレ経済に強い小売企業ということになるが、これは単に商品価格が安いことが業績を伸ばす主要因ではない。eコマース市場は成長性に富んでいるとはいえ、無敵のマーケットということではなく、扱いにくい商品もたくさんある。日用品、あるいは実際目で見て触れてみなければ買いにくいもの、商品特性から現場に足を運んで買う方向に消費者のマインドが向かいやすいものは店舗を持っている企業が強い。また、新型コロナウイルス感染症を警戒した外出自粛の動きはネガティブ材料だが、100円ショップやスーパーマーケットは店側が意識しているかどうかは別として、コロナ禍にあって“買い物”という一種のエンターテインメント性を消費者に提供している。その結果が今の勝ち組企業の噴き上げるような株価に反映されている。
さて、株式市場に目を戻すと投資テーマとは別に、今の特徴として“裏街道”の低位株に資金が流れ込む傾向が強い。グロース株優位の地合いであっても間欠泉のように株価を急動意させる低位株は常に点在するが、今はそれが束になって押し寄せているような感じを受ける。足もと業績面では評価できなくても、流動性相場で値ごろ感が着目され、テーマ性重視の買いが入る。ファンド筋などの機関投資家の持ち玉が少なく戻り売り圧力が軽微であることも需給面でプラスに働きやすい。印刷・包装分野を主力とする特殊産業機械商社のアルテック<9972>はまだ株価200円台半ば、綺麗な上値指向のチャートを形成している。同社は3Dプリンターなど次世代商品を取り扱っていることがポイントとなるが、有配企業にしてPBR0.4倍はかなり評価不足。また既に動意しているが、上ヒゲをつけながらも大商いで一気に新値圏に浮上した日本エンタープライズ<4829>は継続マークしてみたい。同社株は更新前の年初来高値が5月につけた297円だが、昨年の高値は294円であり、中長期的にもこれまで300円ラインはひとつのフシとなっていた。オンライン診療やテレワークなどで材料性は豊富、21年5月期に売上高、営業利益ともに大幅な伸びを見込んでいる。商いの膨らみ方などから、全員参加型材料株の素地があるように見える。
このほか、低位株ではないが、2次電池関連で大化けした古河電池<6937>に調整一巡感が出ている。この位置での小陽線2本はタイミング的には狙える。
日程面では、あすは日銀の金融政策決定会合の結果発表と黒田日銀総裁の記者会見が注目される。このほか、6月の首都圏マンション販売、6月の訪日外客数など。GMOフィナンシャルゲート<4051>、アイキューブドシステムズ<4495>、KIYOラーニング<7353>の3社がいずれもマザーズ市場に新規上場する。海外では6月の米鉱工業生産指数・設備稼働率、6月の米輸入物価指数、7月のNY連銀製造業景況指数など。(中村潤一)