コロナと「事業承継」関連株、危機が早める譲渡の時 <株探トップ特集>

特集
2020年8月6日 19時30分

―倒産増加で高まるニーズ、政府補助金も後押し―

今年に入り、企業倒産件数が増加している。東京商工リサーチ(東京都千代田区)によると、20年上半期(1-6月)の全国企業倒産件数は4001件(前年同期比0.2%増)で、上半期としては09年同期(8169件)以来、11年ぶりに前年同期を上回った。なかでも新型コロナウイルス感染症の拡大で、インバウンド需要の消失や外出自粛などの影響を大きく受けた宿泊業や飲食業を中心に、「新型コロナ」関連倒産は240件発生したとされる。政府の資金繰り支援や経済活動を休止していた企業・店舗の廃業・倒産の判断先送りなどで5月の倒産件数は56年ぶりの低水準となったにもかかわらず、上半期では漸増となった。

コロナ禍により、経営状態の悪化や資金調達に追われる企業が増えるなか、一部では事業承継や譲渡で苦境を突破しようとする動きもみられている。ただコロナ以前から、中小企業の後継者不足は問題となっており、コロナ禍により事業の先行き不透明さが増すなかで後継者問題はより深刻化している。一方でそこにビジネスチャンスを見いだす企業もあり、事業承継関連は注目度を高めそうだ。

●中小企業経営者の高齢化進む

日本には約360万の事業者があるが、そのうち99.7%は中小企業で、全従業者の7割近くが中小企業に就業している。こうした企業のなかには、独自の技術・サービスを展開し、我々の身近な生活を支えている企業も多い。

一方、中小企業の経営者の年齢の分布をみると、最も多い年齢は1995年に47歳だったが、2018年には69歳となっており、経営者年齢の高齢化が進んでいる。経済産業省によると、2025年時点で、平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、約半数の127万人は後継者未定という。日本経済を維持・発展させるためには、新たな経営の担い手の育成や、有用な事業・経営資源を次世代に引き継ぐことが重要になっており、これが事業承継ニーズの高まりの背景にある。

●コロナ禍でも事業承継ニーズは堅調

こうした事業承継の動きを加速させる可能性があるのが、新型コロナウイルス感染症だ。新型コロナによる被害は大企業よりも体力に劣る中小企業に影響が大きい。コロナ禍による感染拡大対策や外出自粛などにより、業種によっては売り上げ9割減という深刻な状況も伝わるなか、元から経営状態が芳しくなく、先行きも不透明さを増すなか、廃業や事業承継・譲渡を検討していた中小企業が、そのタイミングを早めるケースがみえ始めている。

M&A 助言大手のレコフ(東京都千代田区)によると、日本企業が関わった2019年のM&A件数は前年比6.2%増の4088件と過去最高を更新したが、今年上半期(1-6月)は1808件(前年同期比13.1%減)にとどまった。特に日本企業が買い手となり、外国企業が売り手となるケースや、外国企業が買い手となり、日本企業が売り手となるケースなどのクロスボーダー案件は、コロナ禍による移動制限の影響などもあって減少している。

ただ、そうしたなかでも事業承継案件は前年同期の296件に対して297件と前年並みを維持している。政府はコロナ対策の一環として、中小企業の経営資源の引き継ぎを支援する「経営資源引継ぎ補助金」などを設けており、これも事業承継M&Aを後押ししているようだ。

●事業承継を主力とするM&A仲介

根強いニーズに支えられる事業承継関連だが、足もとの業績にもそれが表れている。

ストライク <6196> の第3四半期累計(19年9月-20年5月)単独決算では、M&A仲介の成約組数が97組(前年同期比29組増)を達成し、営業利益は21億3000万円(同77.6%増)となった。同社によると、新型コロナウイルス感染症の拡大により、交渉が破談・中断してしまうケースがあったものの、全案件の1割未満ほどと極めて限定的であったという。第4四半期では、受託活動がほぼ通常通りに戻りつつあることから、通期の新規受託件数358件(前期比69件増)を目指す。また、コロナ禍により進捗が遅れた案件の成約を含め、計画以上の成約数の積み上げを狙うとしており、成約組数143組(前期比39組増)を計画しており、通期営業利益22億3700万円(前期比18.6%増)を見込む。

M&Aキャピタルパートナーズ <6080> は、新型コロナウイルス感染症の影響により、受託案件数(単体)がゴールデンウイーク明けには229件まで急減したが、第3四半期累計(19年10月-20年6月)決算では緊急事態宣言明けの営業活動強化により、272件(前年同期比13.8%増)まで急回復している。また、成約件数(連結)は第3四半期累計では90件だったが、20年9月期通期では172件の成約を目指しており、営業利益59億円(前期比0.8%増)を見込む。

日本M&Aセンター <2127> の第1四半期(4-6月)連結決算は、営業利益が48億8700万円(前年同期比25.4%増)と拡大した。新型コロナウイルス感染症の影響で4~5月にかけて営業活動が制限されたが、成約件数232件と前年同期(234件)並みを達成。オンラインセミナーの本格始動や全国各地へのサテライトオフィス開設などを行い、コロナ禍で制限された受託活動の強化を図っている。また、年商1億円未満の小規模事業者のM&Aニーズに対応したオンラインM&Aマッチングサービス「Batonz」が順調に成約件数を積み上げている点も注目だ。

●リクルートや弁護士COMにも注目

このほか、GCA <2174> は日米欧の3極体制でクロスボーダー案件を多く手掛けているが、過去12ヵ月で欧州23件、日本12件を含む40件の事業承継案件を完了させており、事業承継案件でも実績が豊富。平均案件規模が50億円以上とされ、中小企業の事業承継案件は少ないが、関連銘柄として挙げられる。

更に、中小企業を対象とした事業承継型M&A支援サイト「事業承継総合センター」を運営するリクルートホールディングス <6098> や近年、事業承継コンサルティングが増加している山田コンサルティンググループ <4792> 、事業承継に関する法律相談も提供する弁護士ドットコム <6027> [東証M]などにも注目したい。

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