明日の株式相場戦略=直近IPO繚乱、ドル安で気迷いもマザーズ開花
きょう(18日)の東京株式市場は、日経平均株価が45円安と小幅続落。売買代金は前日の1兆5000億円に続き、きょうも1兆7000億円台と低調を極めている。米中摩擦の問題云々は例によって全体相場が下がった時の決まり文句だが、ドル・円相場が結構な勢いで円高に振れているのが気になるところ。
米国では失業給付金の週400ドルでの減額延長が発動されたばかりだが、大統領選を控えてトランプ米大統領が更なる現金バラ撒き政策をチラつかせていることで、“ドル紙幣刷り過ぎ”的なムードが漂っている。つまり円高ではなくドル安。ヘリコプターから現金を撒くような政策は日本から見れば羨ましい話ではあるが、「この大盤振る舞いは悪性インフレの芽となる可能性を完全に否定し得るものではない」(国内証券ストラテジスト)という思惑が、ドルを売ってゴールドを買う動きにつながっている。くしくもバフェット氏の金鉱株買いの動きが話題となっており、これもアフターコロナの経済回復シナリオが政策的弊害により一筋縄ではいかないことを示唆している、という声が聞かれる。
という諸々の背景もあってか、ここにきて日経平均はやや気迷い気味。しかし新興市場、とりわけマザーズがにわかに活気づいている点は明るい材料だ。7月末にかけて25日移動平均線を下放れるピンチに遭遇したが、その後は切り返し、今度は25日線を足場に上方向に放れてきた。マザーズは“直近IPO銘柄”の宝庫となっているが、主力大型株の戻りが一巡したこともあって、上値の軽いこちら側の銘柄群に個人投資家を中心とした短期資金がなだれ込む形となっている。きょうはティアンドエス<4055>、モダリス<4883>、Sun Asterisk<4053>、日本情報クリエイト<4054>、アイキューブドシステムズ<4495>、GMOフィナンシャルゲート<4051>、KIYOラーニング<7353>、Branding Engineer<7352>、コパ・コーポレーション<7689>といったマザーズ直近上場銘柄が集中人気となった。
個別では、目先は株価指標面からのアプローチを重視しないグロース株が優位だが、バリュー株復活の流れも静かに意識しておくところ。PER10倍台で配当利回りも高いセントケア・ホールディング<2374>は訪問介護事業を営むが、介護支援ロボット分野などへの展開など材料性もあり、株価は好決算発表を足場に上放れた矢先でマークしておきたい。また、巣ごもり消費関連物色の裾野が再び広がってきた。eコマースや通販関連に強い動きを示す株が増えている。ひと押し入れているスクロール<8005>はチェックしておきたい銘柄で、6月中旬以降に急動意して株価の居どころを大きく変えたが、依然としてPERは12倍前後。8月5日の高値811円を抜けるかどうかが大相場への分かれ道となる。
指標面で割安に放置されている不動産関連の中小型株にも意外性がある。不動産セクターといえば新型コロナのマイナス影響ばかりに目が行くが、低金利でカネ余り環境が担保されており、これが思いのほか追い風となる可能性がある。前日取り上げた明和地所<8869>が動意含み。まだ上値は重いものの、週足チャートは26週移動平均線をブレークしており底入れ足だ。前期実績ベースで941円の1株純資産に着目すれば500円未満の時価近辺はまだ水準訂正の初動という印象を受ける。
不動産の中小型で足の速い銘柄としては、都内中心に中規模ビル投資を手掛けるロードスターキャピタル<3482>が非常に強いチャートで目を引く。更に、東京23区でサブリースなど不動産管理・仲介業務を行うAMBITION<3300>も底値横ばい圏から立ち上がる動きをみせており、目先一服場面は狙い目かもしれない。ロードスター、AMBITIONいずれも前述したマザーズ上場銘柄であることもポイントとなる。
日程面では、あすは6月の機械受注、7月の貿易統計が朝方取引開始前に発表される。海外では7月の英消費者物価指数(CPI)のほか、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月28~29日開催分)が注目される。米20年国債の入札も予定されている。また、米国ではエヌビディアの決算などに市場の関心が高い。
(中村潤一)