明日の株式相場戦略=人気の裾野広がる直近IPO銘柄、強い株につけ
17日から始まった米国の民主党・党大会もリモート環境だけに盛り上がりを欠いているようで、トランプ大統領がバイデン前副大統領との差を詰めているとの観測もある。世論調査による支持率は8%近く開いているが、当てにならないというのが通説で、果たして今の米国株市場は、結局はトランプ氏が勝利すると読んでいるから強いのか、それともバイデン新大統領を本気で望んでいるのか、ちょっと見えない部分がある。コロナショック以降は、普通の人間の思考では解読できない地合いが続くが、結果として相場が強いという現実だけが厳然と目の前に横たわっている。
きょう(19日)の東京株式市場は、朝方は1ドル=105円台を割り込むかと思わせるようなドル安・円高を嫌気して日経平均はやや売りに押される展開だったが、その後はドルが買い戻されるのと歩調を合わせ株価も浮上、結局3日ぶりに反発して引けた。しかし、今週は市場エネルギー不足が際立ち、きょうも売買代金は1兆7000億円弱という水準で、2兆円ラインを大きく下回る日が続いている。前週に4営業日で1000円近くも水準を切り上げた後だけに贅沢はいえないが、ナスダック総合指数、S&P500指数ともに史上最高値を更新し意気上がる米国株市場と比べると、やや白けたムードとなっている。
しかし、個人投資家はしたたかである。前日に直近IPO銘柄が人気化していることに触れたが、きょうもその勢いは止まず「きのう同様に個人投資家の信用取引をフル稼働させた資金が流れ込んでいる状況」(国内ネット証券)という。足もとは東証1・2部より新興市場でなおかつジャスダックよりマザーズ銘柄が優位。更にマザーズへの上場が圧倒的に多い直近IPO銘柄が烈火のごとき人気となっている。
そしてこれまでは、直近IPOの中でも新型コロナ感染拡大の試練を乗り越えて登場してきた、新規上場が“6月下旬以降”の銘柄群が物色の中軸となっていたが、ここにきて様相が変わってきた。カレンダーでいえば春先に向かって遡る動きにあり、現状は4月6日上場の松屋アールアンドディ<7317>や、3月上場組のMacbee Planet<7095>、NexTone<7094>、アディッシュ<7093>といった銘柄にも物色の矛先が向いている。当然ながら行き過ぎた振り子は必ず戻る場面が来るわけだが、過剰流動性相場の縮図として捉えるのであれば、物色対象の裾野を広げる形で資金の回転がすぐにフリーズするとは考えにくい。とすれば相場が若い銘柄が選好されるのも自然な流れだ。
今の流れの中で注目したいのが、関通<9326>だ。株式市場で巣ごもり消費がテーマ化するなか、同社はeコマースや通販中心に物流作業の代行・支援ビジネスを手掛けていることで人気化素地がある。また同業態では、東証1部ながらアマゾン関連として先駆人気化し、目先押し目を形成しているファイズホールディングス<9325>も合わせてマークしたい。
このほか、資金の流れが向いている直近IPO以外のマザーズ銘柄では、アフィリエイト広告の大手でモバイル向けに強みを持つアドウェイズ<2489>、首都圏で認可保育所など保育事業を展開するテノ.ホールディングス<7037>などに妙味。また、コンサルティング及びM&Aアドバイザリーを手掛けるフロンティア・マネジメント<7038>も強力な上昇波形成で要注目か。再生支援事業で案件の大型化などが寄与し、業績は有卦に入っている。
また、マザーズ銘柄以外でも当然ながら強い株はある。建設コンサル会社のFCホールディングス<6542>や、総合プラント建設会社ながら、装置事業でスマホセンサーや車載向けパワー半導体、あるいは5Gといった成長分野に注力する高田工業所<1966>は上値余力十分といえそうだ。
日程面では、あすは7月の首都圏・近畿圏マンション販売、7月の主要コンビニエンスストア売上高、5年物国債の入札など。また、東証マザーズにニューラルポケット<4056>が新規上場する。海外では、フィリピン中銀、トルコ中銀がいずれも政策金利を発表する。米国では8月のフィラデルフィア連銀製造業景況感指数などが注目される。なお、マレーシア、インドネシア市場は休場となる。
(中村潤一)