明日の株式相場戦略=固唾を飲む週末記者会見

市況
2020年8月27日 17時27分

きょう(27日)の東京株式市場は、米株高の流れを考えれば強調展開が予想されるところだったが、思った以上に上値の重い展開となった。米中対立への懸念、ドル安・円高方向に振れる為替などを横目に、様子見を決め込む投資家が多かったようだ。「きょうの海外勢は売り買いともに、ほとんど参戦を見合わせた状態」(国内証券マーケットアナリスト)だったようだ。全体売買代金も1兆7000億円台にとどまっている。

米カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム、いわゆるジャクソンホール会議がきょうあすの日程でオンライン開催され、そこでのパウエルFRB議長の講演内容に注目が集まっている。題目は「金融政策の枠組みの再点検」ということで、ここで新たな政策指針で追加金融緩和策に前向きなニュアンスを得られるという期待が市場にはある。

しかし、「昔と違って、頻繁に(1か月半ペースで)FOMCが開催されているなか、少なくともジャクソンホールは政策発表の場ではなくなっている。今回はフォワード・ガイダンスの導入についての言及があるかないかがカギを握るとされているが、相場の方向性を決めるほど重要なものとは思えない」(大手生保系エコノミスト)という見方がある。考えてみれば、前日の米国株市場ではナスダック総合指数、S&P500指数ともに、お構いなしに最高値街道を突き進んでいる。対して日本株市場の方は様子見ムード一色で、今晩のパウエル発言に固唾を飲むというのもおかしな話だ。

それよりも固唾を飲んで見守るべきは、前週からの繰り返しになるが、歴代最長政権の記録を作った矢先の安倍晋三首相の動向だ。2012年末を起点とするアベノミクス相場は、日銀黒田総裁という強力な助っ人を加え長期上昇相場の代名詞となった。株価上昇は政策効果によるものではなく、為替のドル高・円安と米株高に追随した要素は否定できない。とはいっても、株式市場と安倍政権の相性は抜群に良かったことは確かだ。万が一、あす予定される安倍首相の記者会見が退陣もしくはそれに近いものであった場合、さすがにショック安は免れないのではないかと思う。その場合、ショートリリーフは麻生副総理・財務相もしくは菅官房長官のいずれか。日銀の金融緩和路線は担保されているだけに相場の大崩れはないと思うが、安倍政権の終焉がポジティブなはずもない。杞憂であることを願いたいが、思わぬ形で週末に重要イベントが回ってきた。ただし、ここを通過すれば結果はどうあれ視界が開けるのが相場でもある。

直近IPO銘柄では、初値形成後も破竹の勢いで、いきなりテンバガーとなったニューラルポケット<4056>だったが、朝方に取引時間中として初めて9200円で商いが成立、1万850円の高値まで買われたもののその後は急速に値を消し、一時7200円まで下押す波乱展開となった。今週25日新規上場のフロントランナー、インターファクトリー<4057>はきょうもストップ高で買い物を残しているが、その他のセカンダリーで開花した銘柄群は、ティアンドエス<4055>がストップ安に売られたのをはじめ、利益確定売りを浴びて反落する銘柄のオンパレードとなった。逆回転を始めた歯車からはいったん離れるのが道理。すぐ切り返すかもしれないが投げが加速する可能性もあり、リバウンドを狙うなら個別単位ではなく、あくまで直近IPO銘柄群全体を一つの塊として捉えて対処する。

個別材料株もちょっと難しいタイミングとなっている。新型コロナウイルスや米中対立の影響、あるいは政治リスクに振られにくいセクターではシステム開発やITソリューション系の銘柄に相対的な優位性がある。株価がまだ200円台のソースネクスト<4344>や、人工知能(AI)関連で瞬発力のあるサイオス<3744>。また、商い薄だが株価に勢いのあるSYSホールディングス<3988>。医療ICT関連では2000円割れで値ごろ感の出てきたUbicomホールディングス<3937>などをマークしておきたい。

日程面では、あすは8月の都区部消費者物価指数(CPI)が朝方取引開始前に総務省から開示される。海外では7月の米個人所得・個人支出、8月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・確報値)、8月の米シカゴ購買部協会景気指数など。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2020年08月27日 17時46分

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