鈴木英之氏【日経平均急反発、安倍政権終焉で相場は変わるか】(2) <相場観特集>
―新総裁への期待と不確実性、9月相場の展望を読む―
安倍首相の電撃辞任を巡り、前週末の東京株式市場は波乱に見舞われたが、きょうは総じて急反発に転じている。政治リスクが全体相場に与える影響は懸念されるものの、世界的な金融緩和環境を追い風にマーケットの下値は固いようだ。ただ今後は安倍首相退陣により不確実性が増すことから、株価は折に触れ不安定な展開を強いられる可能性もある。あすから名実ともに9月相場入りとなる。ここからの相場の見通しについて第一線で活躍する市場関係者に意見を聞いた。
●「新政権の好スタートに期待、2万4000円乗せも」
鈴木英之氏(SBI証券 投資調査部長)
安倍首相が辞任を表明した。長期政権が終わった後の新政権は短命で株価もさえない、という印象が強い。しかし、過去の例をみると決してそんなことはない。
戦後、在職日数が1000日を超えた首相は、安倍氏を除けば吉田、岸、池田、佐藤、中曽根、小泉の各氏の6人がいる。このうち辞職から、1ヵ月後の株価が下がっていたのは、中曽根氏の時だけだ。1年後の株価をみてみると全て上昇している。また、長期政権の後は短命になるということでも必ずしもない。
安倍首相は支持率が低下したところで辞任したが、新型コロナウイルスの感染拡大も当面のピークを打ちつつある状況にあるようにみえる。為替も、ほぼいい水準まで円高は進んだのではないか。安倍首相の後任が誰になるか、何人もの候補が挙げられているが、新政権の支持率には持ち直す余地があり、景気は回復局面に入るところでスタートを切ることができるようにも思える。
こうしたなか、9月の日経平均株価の予想レンジは、下値は2万2800円程度だが、上値は2万4000円程度も期待できるとみている。相場の基調は上向きだろう。
米著名投資家のウォーレン・バフェット氏の投資会社が日本の商社株に投資したことが話題となったが、個別銘柄では9月末の配当・優待取りにも絡み低PBR・高配当利回りのバリュー株が見直される可能性がある。また、武田薬品工業 <4502> や半導体関連の東京エレクトロン <8035> 、東京応化工業 <4186> 、それに東京都競馬 <9672> などのような4-6月期決算で好業績を発表した銘柄にも注目したい。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(すずき・ひでゆき)
早稲田大学卒。リテール営業、調査部、株式部等を経て、SBI証券投資調査部長に。モーニングスター株式会社(投資調査部ゼネラル・マネジャー)へ転籍を経て2009年5月より現職。ラジオ日経、ストックボイス等で相場解説を行っている。
株探ニュース