「地方移住」に熱視線、コロナ禍で急浮上する“新しい働き方”関連株 <株探トップ特集>

特集
2020年11月11日 19時30分

―テレワークで就業地の壁なくなる、EC・農業関連での独立起業も選択肢―

株式市場で「地方移住」が注目を集めている。これまでも、都会から地方に移り住む動きはあった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴う地方移住は、 テレワーク電子商取引(EC)環境の整備を背景にしているだけに、より現実味を帯びたものとなっている。地方創生の流れのなか政府も地方移住を後押しする。コロナ禍での地方移住による新たな働き方が脚光を集めるなか、その関連銘柄を探った。

●「住みやすさ」魅力で都会出身者も地方移住に強い興味

内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が今年5月に発表した調査では「東京圏在住者(20~59歳)の49.8%が地方圏での暮らしに関心を持っている」という結果が明らかとなった。1月から3月に実施された同調査では、概ね地方出身者は将来のライフプランを考慮して地方移住を考える傾向が強いものの、東京圏出身者の約46%も旅行などをきっかけに地方移住に関心を示しているという。

多くの人々が魅力を感じる地方移住だが、そのメリットに挙げられるのが、自然の豊かさや住みやすさだ。その一方で仕事面の選択が限られることが、ネックとなってきた。しかし、今年の新型コロナ感染拡大は地方移住を促す大きな転機となった可能性がある。

●テレワークで「どこでも仕事は可能」に、政府も強力に後押し

地方は都会に比べれば人混みも少なく「3密」を避けやすい。そして、何よりもコロナ禍でテレワークが一般化したことで、「どこでもいつでも仕事は可能」という認識が広がったことは大きい。これに伴い、地方にいながら都会の会社での仕事をすることの障壁は大きく低下。「地方移住のためには都会の会社を辞めて、地方で再就職しなければいけない」という常識は過去のものとなりつつある。

政府も地方創生に向けた取り組みに注力しており、旅先で働きながら休暇を過ごす「ワーケーション」などを推進している。また、21年度予算の概算要求では、テレワークで東京の仕事を続けつつ、地方に移住した人に最大100万円を交付する制度の導入も要求したと報道されている。政府の強い後押しもあり地方移住は「新しい働き方」として、一段と関心を集めている。足もとでは、新型コロナワクチンに向けた期待も膨らんでいるが、一度火がついたテレワーク活用の流れは変わらないだろう。

●APAMANや農業総研、BASEなど

こうしたなか、地方移住に絡む関連銘柄も多様なものとなっている。APAMAN <8889> [JQ]傘下でコワーキングスペースやレンタルオフィスを運営するfabbit(東京都千代田区)は首都圏のほか広島、岡山といった地方でも事業を展開している。Sansan <4443> [東証M]のように徳島にサテライトオフィスを展開する企業もある。地方で新たな職場を探す場合は、エン・ジャパン <4849> 、リクルートホールディングス <6098> 、パーソルホールディングス <2181> などが関係する。

地方ならではの農業で副収入を得る、あるいは独立するという選択肢もある。農業総合研究所 <3541> [東証M]やオイシックス・ラ・大地 <3182> は、生産者から農産物の購入を行っている。更に、地方移住を機にECでサイトを構築してショップを立ち上げるといった起業も可能だ。ECサイト構築ではBASE <4477> [東証M]やコマースOneホールディングス <4496> [東証M]などが関係してくる。

●都会が恋しくなったら「オンラインライブ」や「バーチャル握手会」も

地方移住のためには、住宅が必要となる。カチタス <8919> は中古住宅の買い取り再販事業を展開。地方の古い戸建て住宅の再販などで、高い実績を持っている。LIFULL <2120> は、「空き家バンク」事業で地方の空き家を再生し販売する事業を展開している。住宅の修理や家具の購入でホームセンターを活用する機会も増えるだろう。新潟を本拠とするコメリ <8218> や長野県を地盤とする綿半ホールディングス <3199> なども注目できる。

もちろん、豊かな自然を背景にしたレジャーも満喫できる。アウトドア用品のスノーピーク <7816> や釣り具のティムコ <7501> [JQ]、あるいは登山やスキー用品のアルペン <3028> などが関連銘柄だ。更に、もし都会の生活が恋しくなり、ライブに行きたくなったとしても心配はいらない。フェイス <4295> は「Thumva」(サムバ)でオンラインライブの配信サービスを行っている。イグニス <3689> [東証M]は、アイドルのバーチャル握手会も開催している。

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