【村瀬智一が斬る!深層マーケット】 ─ IPOラッシュは概ね好調、利食い資金の中小型株への環流にも期待
「IPOラッシュは概ね好調、利食い資金の中小型株への環流にも期待」
●個人主体の中小型株物色が活発となるか?
2020年相場もあと8営業日を残すところとなった。今週の日経平均株価は狭いレンジでの推移が続いたが、12月SQ値を概ね上回って推移しており底堅い相場展開だった。メジャーSQを通過したことで市場参加者が限られてきているほか、米国ではメジャーSQにあたる株価指数先物、株価指数オプション、個別株オプション、個別株先物の清算日(クアドルプル・ウィッチング)を18日に控えていたため、限られた海外勢にしても手掛けづらい状況であった。さらに、テスラのS&P500構成銘柄への組み入れに伴うリバランスを控えていることも動きづらくさせたのであろう。
来週はこの需給イベントが通過するほか、モデルナのワクチン承認や米国の追加経済対策の進展などによっては年末高への期待が高まる可能性がありそうだ。週後半には欧米諸国がクリスマスで休場となることもあり、より商いが減少するだろうが、それ故にインデックスに絡んだ売買で大きく振れやすい。また、来週もIPO(新規株式公開)が12社予定されている。今週のIPOが概ね好調だったこともあり、良好な需給状況を背景にこの流れが続くことが期待される。また、これらの利食い資金が他の中小型株に還流してくることも想定され、個人主体の中小型株物色が活発になりそうだ。
●今週の活躍期待「注目5銘柄」
◆ディップ <2379>
バイトル、バイトルNEXT、はたらこねっと、はたらこindexなどの求人情報サービスを展開。投資有価証券評価損の計上により、21年3月期の連結最終利益予想を65%下方修正したが、売上高、営業利益、経常利益の各項目は計画を据え置いている。 RPAによる業務自動化ニーズが急速に拡大するなか、RPAサービス「コボット」シリーズの販売が伸長。株価は11月半ば以降リバウンド基調が強まり、短期的には過熱感が意識されるが、ようやく5月の戻り高値水準を回復したところ。利食いをこなしつつ2月高値3700円を意識した展開となるか。
◆くら寿司 <2695>
20年10月期業績は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で連結最終損益は赤字に転落したが、2億半ば程度の損失に抑え込んでいる。「鬼滅の刃」とのコラボが奏功し、国内店舗の売り上げが回復したことが話題になった。国内の新型コロナ新規感染者数は再び拡大しており、外食産業は手掛けづらさもあるが、クリスマスや正月などもありテイクアウト需要が意識される。来年からは都心部への出店強化や都心の一部店舗での1皿10円値上げ効果に期待。株価は足もとで調整をみせているが11連騰の反動であり、25日移動平均線レベルでの押し目を狙いたい。
◆インテージホールディングス <4326>
消費財(食品・飲料・日用雑貨品)メーカーや耐久消費財(自動車・サービス・通信・金融など)など、幅広い業種にわたってマーケティングリサーチを展開。あらゆるマーケティング課題に対して科学的な調査・分析を行う。コロナ禍に伴う新たな生活スタイルによって消費者の行動が大きく変化するなか、様々な業界においてリサーチ需要の拡大が見込まれる。株価は直近で窓を空けて急伸しており、上昇する13週移動平均線を支持線としたリバウンド基調が継続。
◆ダイワボウホールディングス <3107>
21年3月期第2四半期決算と併せて、未定としていた通期の業績予想を発表しており、連結営業利益は前期比6.2%減の308億円を見込む。市場コンセンサスは250億円程度であり、安心感につながっている。また、来年の3月31日付で1株を5株とする株式分割を実施する予定。株価はこの発表を受けて上昇基調が強まっており、短期的には過熱感が警戒されやすい。ただし、直近の上昇で6月以降の上値抵抗帯を一気に上放れており、需給状況は良好である。
◆HENNGE <4475> [東証M]
IP制限やデバイス証明書、セキュアブラウザ、パスワードレス認証など多要素認証を提供する「HENNGE One」などのサービスを展開。株価は10月高値9760円をピークに調整が続き、11月半ばに発表した今期業績の減益予想が嫌気される場面もあったが、調整一巡感から足もとでリバウンド基調を強めている。バリエーション面では手掛けづらいが、企業のテレワーク普及などを追い風にクラウド向けID管理サービスの需要は今後も伸びよう。
2020年12月18日 記
株探ニュース