馬渕治好氏【日経平均ついに3万円大台! ここからの展望は】(1) <相場観特集>
―コロナ禍での株高、加速する過剰流動性相場の行き先―
週明け15日の東京株式市場は日経平均が急反発に転じ、3万円大台を回復。これは今から30年半前、バブルの余韻冷めやらぬ1990年8月2日以来となる。新型コロナウイルスに対する警戒感は依然拭い切れない状況ながら、株価は問答無用の上げ足をみせている。ここから3月期末に向けてマーケットはどう動くのか。第一線で活躍を続ける市場関係者2人に見通しを聞いた。
●「強調展開際立つが、ここは慎重に対応」
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
東京市場では週明けにリスク選好ムードが高まるなか、日経平均は一気に3万円大台を回復したが、これはあまりにピッチが速く、いったんブレーキがかかる可能性が高いとみている。確かに日米ともに企業業績の回復歩調が大方の予想を上回るほか、新型コロナウイルスの感染拡大についてもひと頃よりは懸念が後退している。米国でワクチン接種が急速に進み、日本国内でも米製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンが特例承認されるなど、ワクチン接種が漸次進む段階に入ったことは株式市場にポジティブ材料ではある。しかし、今の株価は先行性を考慮しても経済実態面とのカイ離が激しい。その調整局面は遅かれ早かれ訪れるはずだ。
例えば3月のコロナショックを経てからこれまでの相場上昇局面で、日米の株価を比べてみると日本株の過熱感が見てとれる。これは日経平均をNYダウで除して算出した数値などを比較すれば分かりやすいが、NYダウよりも日経平均の上昇ピッチが明らかに早い。また、足もとの決算発表では日米ともに上方修正が目立っているが、米国の方が改善色は強い。NYダウベースでは昨年9月と比較して予想PERは下がっているが、日経平均のPERでは逆に上昇している。これは、今後米国株が強調展開を維持したとしても、日本株にとってディスアドバンテージとなる。
したがってここは慎重になる必要があり、持ち株はキャッシュ化して冷静に押し目を待つ場面といえる。日経平均は3月期末までに最大15%くらい、つまり2万5000円前後への調整余地があると考えている。もっとも、これで大勢トレンドが下降転換するとはみていない。いったん下押した後は、企業業績の改善を横目に再び戻り足に転じ、年後半には3万円台への再チャレンジを想定している。全体調整局面での押し目買い対象としては機械などの景気敏感セクターや半導体、このほか内需でデジタルトランスフォーメーション(DX)需要を取り込むITソリューション関連などが有力だ。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
株探ニュース