コロナ禍の救世主 外食革命「ゴーストレストラン」で躍る株 <株探トップ特集>

特集
2021年2月25日 19時30分

―実店舗持たずデリバリーやテイクアウトで成長、「新しい生活様式」でも需要継続へ―

政府は現在、10都府県に出している緊急事態宣言について、首都圏以外の6府県については先行解除する方向で調整に入ったと複数のメディアで報じられている。緊急事態宣言により、午後8時までの営業時間短縮が求められ、大きな打撃を受けた 外食産業でも、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い控えていた購買意欲が爆発する「リベンジ消費」が期待されているが、一方で加藤勝信官房長官は2月24日の会見で、感染防止対策の緩和は段階的に行うとして、飲食店に対する営業時間の短縮要請は継続する方針を示しており、外食産業を取り巻く厳しい環境はまだ続くとの見方が強い。

こうしたなか、外食産業では、実際に飲食する店舗を持たない「ゴーストレストラン」と呼ばれる業態が増加している。コロナ禍をきっかけにデリバリーやテイクアウトが消費者に定着するなか、ゴーストレストランもコロナ禍が収束した後も「新しい生活様式」の一環として需要が継続するとみられており、関連銘柄には注目が必要だ。

●新しい飲食店の形態として定着

「ゴーストレストラン」とは、実際の店舗を持たずに他の店舗の空き時間や、シェアキッチン、クラウドキッチンと呼ばれるデリバリーやテイクアウト専用のキッチンで調理を行い営業するレストランのこと。多くは特定のメニューに特化したレストランのコンセプトだけを作り、デリバリーサービスを行うサイトやアプリを介して注文を受け、配達する仕組みとなっている。

2010年代に米国で誕生した(中国で誕生という説もあり)といわれており、米ウーバーイーツの登場で普及が拡大した。内装や器具など実店舗にかかる初期投資や接客のための人件費が必要なく、家賃も圧縮できるため、まずはゴーストレストランを開業し、その後、実店舗をオープンしようとする人たちが参入して市場が急成長。日本でも17年ごろから徐々に増え始め、新しい飲食店の形として認知されるようになった。

●コロナ禍で一気に拡大

このように店舗が増えつつあったゴーストレストランだが、ここにきてコロナ禍が増加に拍車をかけている。感染拡大防止のため、世界的に飲食店の営業時間や店内での飲食を制限する動きが強まっており、デリバリーやテイクアウトに力を入れる飲食店が増えていることが背景にある。

日本ではこれまでにも、ゴーストレストランは中小飲食店で広まりつつあったが、コロナ禍でリモートワークが浸透し都心に人が足を運ばなくなると、交通の便の良い都心の一等地に大規模店を出店し、通勤客や買い物客をターゲットに大人数の客を取り込むという大手飲食店のビジネスモデルが崩壊。しかも都心は家賃が割高だが、ソーシャルディスタンスのためにスペース効率が低下し収益性が悪化する。それと比較して、効率の良いビジネスとして、大手でもゴーストレストランに注目するようになったという。

●出前館はデリバリーのほかクラウドキッチン運営

コロナ禍で増加するゴーストレストランだが、仮に感染拡大が収束したとしても、既にデリバリーやテイクアウトは消費者の間に定着しており、一方でポストコロナでも引き続き飲食店での会食に制限が残るとみられるなか、活躍の場は今後も広がろう。

関連銘柄として挙げられるのは、出前館 <2484> [JQ]だ。ゴーストレストランでは注文や配達をデリバリーサービスを行うサイトやアプリを介して行うが、同社が運営する「出前館」もその一つで、ゴーストレストランの増加は同社のビジネスチャンス拡大につながる。また同社は昨年12月、東京都江東区にデリバリー拠点を併設したクラウドキッチンを開設しており、配達代行サービス「シェアリングデリバリー」とのシナジーを狙う。

一方、ゴーストレストランによるライセンス展開を行い注目されているのがG-FACTORY <3474> [東証M]だ。昨年9月に広島県福山市で気軽にうなぎ料理を楽しめる「名代 宇奈とと」のデリバリーとテイクアウトのサービスを開始したのを皮切りに、今年2月には19拠点目を東京都板橋区でスタートさせるなど順調に事業を拡大させている。

●レストラン、居酒屋チェーンなども続々参入

WDI <3068> [JQ]は昨年6月、ゴーストレストラン業態の「WE COOK」を東京と大阪でスタートし、11月には東京で2号店をオープンさせた。コンセプトは「食で世界を旅する感覚を」で台湾、ハワイ、ベトナム、イタリアなどの各料理のブランドから注文でき、複数のレストランの料理をまとめて注文できる。

DDホールディングス <3073> は昨年6月にゴーストレストラン事業を開始した。30種以上の多彩な既存ブランドを再構築し、デリバリーサービス限定の新ブランドとして開発。ウーバーイーツやメニューなどの配達プラットフォームで展開している。

きちりホールディングス <3082> は20年6月期からゴーストレストラン事業を展開しており、一部の店舗では通常の店舗運営を行いながら、ランチタイムにはシェアキッチンも実施している。また、昨年10月には植物肉スタートアップ・DAIZ(熊本市中央区)と提携し植物肉メニュー限定のゴーストレストランもスタートさせた。

サガミホールディングス <9900> は昨年11月、本社内にゴーストレストラン業態を初出店。今年2月5日には東京都練馬区にもオープンさせた。傘下のブランド「味の民芸」では宅配や持ち帰りの売り上げが伸びており、デリバリー需要の取り込みを狙っている。

このほか、トリドールホールディングス <3397> は昨年5月、ゴーストレストラン「Ghost Kitchens」を運営するゴーストレストラン研究所(東京都港区)に出資した。同分野の成長に期待するほか、グループの既存店舗においても「Ghost Kitchens」のノウハウを生かすなどのシナジーが期待されている。

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