【杉村富生の短期相場観測】 ─ 金融相場→業績相場の移行期のきしみ!
「金融相場→業績相場の移行期のきしみ!」
●嵐のときは動くな!がセオリーだが…
さあ、どう対応するか。マーケットは“春の嵐”に見舞われている。債券、株式市場ともに大荒れの状況だ。古来、嵐のときは動くな、落ちる短剣はつかむな、増水時の川底の金貨は拾うな、などという。この局面での出動はリスクが大きい? それは確かだろう。しかし、昨年2~3月がそうだったように、リスクとリターンは背中合わせである。
もちろん、じっと嵐が過ぎるのを待つ戦略は有効と思う。ただ、これではせっかくのチャンス(押し目買いの好機)を逃す恐れがある。日経平均株価は昨年3月19日の1万6358円(ザラバベース)を安値に、今年2月16日には3万714円の高値まで急騰した。勇気を奮って、リスクを取った人は大成功だ。上昇率は実に、87.8%となる。
この1年、新型コロナウイルスのパンデミックを受けての景気後退下、株価は上昇するという異例のパターンを描いた。これは政策対応の効果に加え、危機は克服されるとの強い信念があってのことだろう。実際、ワクチン接種と相まってコロナ制圧は近い。次は景気回復、金融の正常化(金利上昇)、株価下落の展開じゃないか。
懐疑派はそう考える。だが、金利上昇をいたずらに恐れる必要はない。経済の正常化は金融が通常の姿に戻ることを意味する。現実に、FRBはQE(量的金融緩和→国債買い入れ)の額を2020年の3.5兆ドルから21年には1.44兆ドルと半減させる。
一方、米バイデン政権の財政出動(実行ベース)は20年(トランプ前政権)の1.7兆ドルが21年は3.5兆ドルと倍増する。何しろ、共和党の「小さな政府」と違って、民主党は「大きな政府」である。すなわち、国債増発の半面、国債の買い入れが減少する。金利上昇圧力が強まるのは当然だろう。
●「節分天井、彼岸底」のパターンに!
パウエルFRB議長を含め、FRB幹部は金利上昇を容認する発言を繰り返している。「この金利上昇は景気回復を反映したものだ」と。問題は金利水準だろう。2月末には米10年物国債利回りが瞬間、1.61%に上昇、世界的な株価暴落につながった。現在は1.57%前後だが、1.8%程度は許容ゾーンと考えている。
それと、あらためて確認しておきたいのはアメリカの景気対策の軸足が金融→財政に変更されたという明らかな事実、相場性格的には金融相場→業績相場への移行である。これがポートフォリオの組み替えを生み、テスラ(TSLA)の株価急落(1月25日の900ドルが3月4日には600ドル)につながっている。
この動きは日本市場では3月12日のSQ(NY市場は19日)、ないしは4月4日のイースターまで続くだろう。昨年2~3月がそうだった(NYダウの安値は3月23日)。日本市場には「節分天井、彼岸底」(機関投資家、法人の決算)のジンクスがある。足もとはそんな状況になりつつある。ともあれ、この株価波乱は需給要因によるものだろう。
さて、この場面での妙味株は? とりあえず、暴落日の“赤札”銘柄を狙え、の教えに従って室町ケミカル <4885> [JQ]、グッドパッチ <7351> [東証M]などを。突っ込み買いでは好業績、かつPERが8~9倍の浜井産業 <6131> [東証2]、テクノホライゾン <6629> [JQ]などが狙い目だろう。
2021年3月5日 記
株探ニュース