プラチナはドル高で調整も、中長期の強気見通しは変わらず <コモディティ特集>
プラチナ(白金)の現物相場は2月、景気回復見通しを受けて堅調となり、2014年9月以来の高値1336.57ドルをつけた。その後は米国債の利回り上昇によるドル高を受けて調整局面を迎え、3月に入ると、上昇の起点となる1100ドル直前まで下落した。
米国では1兆9000億ドル規模の追加経済対策法案は修正案が上院で可決された。下院でも10日までに可決される見通しであり、米大統領の署名を経て成立する。前回の対策の主要給付金は14日に失効するが、間に合うとみられている。イエレン米財務長官は、対策案が「非常に力強い」景気回復を促進させるリソースを提供するとの見方を示しており、成立すれば先行き期待が高まることになりそうだ。
また、米政権は次の大型経済パッケージを公表する見通しである。「ニューディール」政策以降で最大となるインフラ支出を盛り込むとしており、雇用改善が個人消費の増加につながれば、プラチナの需要も増加するとみられる。プラチナはドル高を受けて調整局面を迎えたが、中長期の景気回復期待で強気見通しに変わりはない。
●プラチナは欧州諸国のロックダウン解除の行方も確認
英国は2月22日、ロックダウン(都市封鎖)の段階的な緩和計画を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて1月5日にロックダウンを再導入していたが、ワクチン接種が進んでいることや感染率の低下を受けて緩和できるようになった。3月8日に学校の対面授業を再開したのち、段階的に緩和し、6月21日までに全ての規制を解除する見通しとなっている。
欧州諸国では英国と比べてワクチンの接種ペースが遅れている。また、変異株の感染拡大に対する懸念もあり、ドイツはロックダウンを3月28日まで3週間延長することを発表、フィンランドは8日から3週間のロックダウンに入っている。ただ、欧州中央銀行(ECB)は欧州諸国のロックダウンが3月末に解除されると見込んでおり、想定内の動きとしている。3月末までに解除されれば景気回復期待が高まるとみられる。
一方、米国の追加経済対策法案の成立見通しなどを受けて米国債の利回りが急上昇し、米10年債利回りは一時1.625%と昨年2月以来の高水準となった。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が、最大雇用達成まで緩和的な政策を維持すると表明し、利回り上昇を容認したことも利回りを押し上げる要因になった。市場では1.6%を超えると新興国市場の脅威になるとの見方も出ており、各国の市場の動きと景気見通しも確認したい。
ラガルドECB総裁は「長期の名目国債利回りの動向を注視している」と述べ、警戒感を示した。パネッタECB専務理事は債券利回りの上昇を抑えるため、買い取り額の増額や買い取りプログラムの拡大を躊躇すべきでないとしており、11日のECB理事会で何らかの措置が決定されるかどうかも焦点である。
ただ、最近の米国債の利回りの急上昇は先物市場での手じまい売りが加速したことが背景にあり、行き過ぎとの見方も出ている。米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告で米10年債先物の大口投機家の取組高を見ると、2月16日時点の10万3413枚買い越しが3月2日に9万5611枚売り越しに転じており、手じまい売りが進むとともに新規売りが出た。2月は米7年債の入札不調が利回り上昇の一因となったが、今週は米10年債や30年債の入札があり、需要が示されれば大口投機家が買い戻しに動き、短期的に利回り上昇は一服するとみられる。
●プラチナETFの投資資金の動向も焦点
プラチナETF(上場投信)残高は3月9日の米国で39.99トン(昨年末38.74トン)、8日の英国で18.83トン(同18.84トン)、南アフリカで16.36トン(同16.07トン)となった。景気回復期待の高まりを受けて米国で40.01トン、英国で19.73トン、南アで16.40トンまで増加したが、調整局面を迎えると、利食い売りが出た。中長期の強気見通しに変わりはなく、投資資金が戻るかどうかを確認したい。
一方、CFTCの建玉明細報告によると3月2日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは3万0533枚となり、2月16日の3万6577枚をピークとして縮小した。調整局面を迎え、手じまい売り・新規売りが出た。下げ止まりが確認されれば新規買い・買い戻しが入るとみられる。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース