明日の株式相場に向けて=したたかな投資マネー、市況関連が電撃高
きょう(15日)の東京株式市場は、日経平均株価が49円高の2万9766円と5日続伸。前週を振り返れば火曜日から4連騰で、この間に日経平均はほぼ1000円幅の上昇をみせていた。目先買い疲れ感が出やすいタイミングではある。前週末の米国株市場では引き続き長期金利上昇を警戒し、NYダウは最高値街道ながらナスダック安という微妙な形で東京市場にバトンが渡された。
今週に日米の中央銀行による金融政策決定会合が開催されるということもあり、大方の市場関係者の見方は「目先利食い優先で日経平均は軟調ながら、下値を大きく売り込まれることもなさそう」であったと思われる。しかし、強弱観対立のなかも予想以上に強さを発揮した。ハイテク株の売り圧力は米国市場の地合いをそのまま引き継ぐ格好となったが、それを補ってあまりある形で、海運、空運、鉄鋼、非鉄などの市況関連株が買われ、これに内需の軸である銀行株が堅調な動きをみせ、建設株にも資金の流入が観測された。
投資マネーはしたたかである。ハイテク株の上値が重いとみるや市況関連株に物色の矛先を向け、あたかも景気回復を買う流れが最初からメインストリートであったかのような顔で鉄鋼や海運の主力銘柄を中心に活況相場を演出している。
きょうの業種別騰落率で東証1部33業種中で値上がり率トップとなったのは海運セクター。異色の上昇トレンドを形成中だ。前週にモルガン・スタンレーMUFG証券による大手3社の目標株価の大幅な上方修正が、枯れ切った野原に火を放つかの如く同セクターの株価を押し上げた。日本郵船<9101>の目標株価を3000円から6000円へと一気に2倍に修正したほか、商船三井<9104>は4300円から7000円に、川崎汽船<9107>ついては1400円から3400円と2.4倍に引き上げたが、これは一部市場関係者の間でも話題となった。
新型コロナウイルスが収束することへの期待感は、経済活動の正常化を経てグローバル物流活性化のイメージと分かりやすく折り重なる。低PBRの宝庫である海運は、今のグロース株投資にやや行き詰まり感を抱えていたマーケットに新しい光を与えた。コンテナ運賃の市況が急騰していることで、大手3社についてはコンテナ部門統合で設立されたONE社の競争力の高さが注目された。更にばら積み船市況の指標であるバルチック海運指数が半年ぶりの高値水準を回復していることもあって、海運の中小型株も併せて上昇機運に乗っている。この流れを念頭に置いて、物色対象の裾野が広がる可能性を考えたい。港湾運送業を展開する大運<9363>は低位株ならではの人気素地を内包する。また、穴株としてはホテル事業も展開する栗林商船<9171>などに目を配っておく価値があるかもしれない。
市況関連では紙パ業界も低PBRが際立つ銘柄が多い。地味な銘柄は多いが、今の相場はそうした銘柄に輝きを与え相場の前線に引っ張り出す。段ボール最大手のレンゴー<3941>は年初来高値圏を快走している。また、足もとの業績は厳しいが三菱製紙<3864>も意外に強いチャートを形成している。北越コーポレーション<3865>も同様だが、同社の場合は株式需給がポイントで信用倍率が0.4倍と売り長で日証金では株不足状態にある。
このほか、建設では官公庁向けに強い測量土木大手のアジア航測<9233>の動きが良い。また、金融関連セクターでは、目先上げ足に弾みがついている日本証券金融<8511>をマークしてみたい。情報セキュリティー関連ではNo.1<3562>の成長力に期待。プリント配線基板を手掛けるキョウデン<6881>はPERやPBRの割安さで着目してみたい。
あすのスケジュールでは、1月の鉱工業生産指数確報値が発表される。また、東証1部にウイングアーク1st<4432>、東証マザーズにヒューマンクリエイションホールディングス<7361>が新規上場する。海外では、2月の米小売売上高、2月の米鉱工業生産・設備稼働率、1月の米企業在庫などのほか、欧州では3月のZEW独景気予測指数が発表される。(銀)