【植木靖男の相場展望】 ─ 週末・週明けのナスダック次第か

市況
2021年3月20日 8時00分

「週末・週明けのナスダック次第か」

●大転換期を迎えつつある長期金利

東京市場は、今週ふたつの大きな関心事を見守った。ひとつは、米FRB議長の会見だ。前回は金利上昇に対して警戒感を示したが、かといってそれを抑制する具体策に言及しなかったことから、これは闇討ちだ、として債券売り、株式売りとなった。

それだけに今回、議長は慎重スタンスで、2023年までゼロ金利政策を維持する方針を表明した。ただ、金融・財政政策での大盤振る舞い、 ワクチンの活用などにより年末には想定以上の速さで景気は回復すると予測した。この結果、市場は景気回復と市場への資金流入を後押しするとして株高をみせた。

もうひとつは、こうした材料とは別に、日経平均株価が3万円大台にいつ乗せるかが焦点となった。幸い、米国株高に支えられ、3月18日には3万円大台乗せとなった。

ここまでは、きわめて順調なプロセスといえよう。では、今後はどういう株価展開をみせるのであろうか。

客観的かつ冷静に材料をみれば、米国ではワクチンの普及により、ここへきて劇的にコロナ感染者数が減ってきた。そして、経済の回復が際立ってきたのだ。明らかにコロナ後の景気回復に期待を持たせる材料だ。

当然のことながら、金利は上昇せざるを得ない。1980年にピークをつけて約40年間下げ続けてきたが、いま長期金利は大転換期を迎えつつあるのだ。金利、為替、株式などそれぞれが新しい景色を今後見ることになろう。

とはいえ、当面は金利上昇でナスダック総合指数は凋落しかないのか。罫線(チャート)的に言えば、そのナスダックは目先的に一段安となり、週末、週明けと下げれば、3月8日の1万2609ポイントをも下回るリスクが表面化する。となれば、ナスダックは天井をつけたとの見方も浮上しよう。逆に週末、週明けにひと反発があれば首の皮一枚つながり、生き返る可能性も高まる。正念場だ。

●鮮明化するバリュー物色、当面の主役は金融株に

一方、NYダウ平均は健在である。こうした値動きは、東京市場にも色濃く出ている。週末、日経平均は大きく下げたものの、TOPIXは高値更新をみせている。値上がり銘柄数と値下がり銘柄数は、ほぼ互角である。物色対象にもある傾向が顕在化してきている。すなわち、グロース株売り、バリュー株買いが明確になってきた。

ただ、このままグロース株が沈んでしまうとも思えない。これまでにない抵抗力を発揮するとみている。ナスダックが沈んでも、あと数日、目立った反発が期待されよう。底入れのパターンはいつも同じだ。それまで、様子見と言わざるを得ない。

一方、バリュー株の主役は、当面は 金融株であろう。金利が上昇すれば、収益拡大局面が期待される。株式指標のPER、利回りを見ても相対的に優位性がある。代表である三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> は今期業績予想が非開示だが、コンセンサス予想に基づけばPER約15倍、利回り3.8%前後だ。3月配当取りも近い。また、証券の代表格である野村ホールディングス <8604> も同様に今期見通しは未定だが、コンセンサス予想ベースでPER約5倍、利回り4.9%前後だ。

このほかバリュー株では、やはり日立造船 <7004> の値動きが面白い。信用も売りを誘っては買いを出す、典型的な仕手株の様相をみせている。

ニコン <7731> も同様であろう。加えて、今3月期は大幅赤字予想だ。だが、株価はついに1000円大台に乗せてきた。信用の売り買いは拮抗している。売りたくなる銘柄だけに、逆に面白いのではないか。

ただし、日立造、ニコンともに、逃げるときに逃げることができる投資家向きだ。

2020年3月19日 記

株探ニュース

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