明日の株式相場に向けて=横殴りの突風にも柔軟に対応

市況
2021年4月20日 17時01分

きょう(20日)の東京株式市場は、日経平均株価が584円安の2万9100円と急反落。ここ全体指数はどうにも上値の重い展開にあったが、これが波乱相場を予期していた部分は少なからずあったと思われる。前週にゴールデンウイーク前後にメイストームに見舞われる可能性について触れたが、思ったよりも早いタイミングで横殴りの突風に煽られバランスを崩す格好となった。

新型コロナワクチン普及の遅れについては日本が怠慢と言うことではなく、欧米との感染者数の違いを考えればそれほど目くじらを立てることもない。菅首相の訪米ではワクチンの供給においても前進がみられた。米製薬大手ファイザー<PFE>のブーラCEOに国内分についてすべての対象者に9月までの確実な供給を要請、確約ではないが先方も前向きな対応を約束した。しかし、そうした菅首相の要請がファインプレーとしてポジティブに評価されるのは、全体相場が上昇トレンド途上にあることが条件となる。スルーされて、足もとのワクチン普及率の低さと感染者数の増加のみが悪材料として前面に押し出されるとすれば、それは相場がそれ以前の段階で変調となっている証である。

大阪府が緊急事態宣言を政府に要請する意向を示したが、これに近隣の兵庫県や京都府なども追随する形となりそうだ。東京都も遅かれ早かれ、関東各県の様子をみながら緊急事態宣言要請に動く公算が大きい。「ただし、これが日本株売りにつながるというのは表向きの理由であって、先物を絡めた売り仕掛けが下げの本質。全体波乱相場となれば、後講釈としてメディアが“新型コロナ危機再来”と喧伝する」(中堅証券ストラテジスト)という。また、国内ネット証券大手のマーケットアナリストによると、「前日あたりからクレディスイスの先物売りが観測されていたが、これにゴールドマンなどが加勢してくると下げは意外と深いものになる可能性がある。きょうは、前引け段階でTOPIXが1.25%の下げをみせていたにもかかわらず、後場寄りに日銀のETF買い見送りとの観測が市場関係者の間で強まり、失望売りを呼んだ」という。

今の日経平均を見るうえでのポイントは75日移動平均線だ。3月19日から24日にかけての急落局面でサポートラインとして機能したのが同移動平均線であり、その時は2万8400円をわずかに割り込む水準にあったが、日経平均はそこで踏みとどまりリバウンドに転じた経緯がある。75日線は右肩上がりで推移していることから、今の方が水準は切り上がっており、現在は2万9100円近辺に位置している。つまり、足もとの2万9000円大台攻防に敗れ2万8000円台に売り込まれる展開となれば、これは同時に75日線の下抜けを意味する。売り方もここを下抜ければ、嵩にかかって攻めてくることが予想され、想定以上の深押しとなるケースにつながる。とすれば、仮にここで日銀が敢えて手を放したとすれば、日経平均の深押しを誘導しているという穿(うが)った見方もできる。別の言い方をすれば、2万9000円ラインは日銀の見立てでは実勢経済を映す鏡としてやや過剰評価のレベルにあり、ここでは買いたくないという暗黙の意思表示ともとれる。

今週22日には日本電産<6594>の決算発表が控えているが、安川電機<6506>の残像がマーケットには重くのしかかっている。目先リバウンドがあっても総論警戒の相場は続く。個別株戦略もポジションは軽めに、ヒットアンドアウェイのスタンスを重視。全体相場が下向きでも上がる株はたくさんあるが、流れに乗っている銘柄はそれほど多くはない。「信念は嘘よりも危険な真理の敵である」とニーチェは言った。イメージを外したら仕切り直す勇気も必要であり、見切りが遅いとダメージは膨らむ。

パワー半導体関連で開花した三社電機製作所<6882>はEV普及のシナリオが強力に背中を押した。その流れを重視してEV周辺から銘柄を探すと、トヨタ系の大豊工業<6470>、2次電池向けセパレーターのニッポン高度紙工業<3891>、2次電池用センサーで大泉製作所<6618>などに目が向く。また、再生可能エネルギー周辺ではメガソーラー発電工事を手掛けるETSホールディングス<1789>の強いチャートは特筆される。同じくチャート妙味で環境関連の土木管理総合試験所<6171>。このほか、番外ではコロナ起因の炎症抑制効果に思惑があるアサイー販売のフルッタフルッタ<2586>なども目先マークか。

あすのスケジュールでは、4月の主要銀行貸出動向調査、3月の全国スーパー売上高、3月の食品スーパー売上高など。海外ではカナダ中銀の金融政策決定会合など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2021年04月20日 17時57分

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