明日の株式相場に向けて=75日線下抜け要警戒モードに
きょう(21日)の東京株式市場は、日経平均株価が591円安の2万8508円と大幅続落。前日と合わせて日経平均は1200円近い下げに見舞われる形となった。
相場の上値が重いというのはマーケットの共通認識としてあったが、前週時点で近々に大崩れするという見方を示していた市場関係者は取材した範囲では皆無だった。実際、恐怖指数とも称される米VIX指数は前週まで16~17のゾーンで推移し、楽観モードに傾いていたことは確かだ。しかし、そういう時こそ危ないというのは経験則として当てはまる。
今回の急な調整が単なるガス抜きで終わるとは限らない。新型コロナ変異種に対する恐怖と中央銀行のテーパリングに対する恐怖、この2つの恐怖が暗雲となって株式市場上空に覆いかぶさっている。テクニカル的には75日移動平均線がポイントで、今回はここをマドを開けて下回ってきた。この75日線は今回のコロナマネー相場においては鉄壁のサポートラインと言ってよく、昨年5月19日に上回ってから約11か月間にわたり、調整局面における“車止め”の役割を果たしてきた。昨年10月末に瞬間的に下回っただけで、直近では3月下旬の急落局面でも見事に機能した。今回は、そのラインを完全に跨いでしまったことで、コロナ禍で繰り広げられた超金融相場の区切りとなる可能性もあり得る。
FRBはともかく、日銀のETF砲不発が続いていることは市場との対話という面で問題がある。きょうはTOPIXが前引け時点で2%以上の下落をみせたにも関わらず、ETF買いが見送られたとの観測が市場関係者の間で巡った。結果的にこの観測は間違っていたのだが、後場の戻りを見込んでいた向きにとっては、日銀の無言のテーパリング圧力をひしと感じたはずだ。日銀はこれまで4月に入ってから一度も買い入れを行っていなかった。先の金融政策決定会合で購入金額原則6兆円の下限撤廃を発表したが、急落相場で知らんふりを決め込むのには、あまりに説明不十分、というのが市場関係者の声としてあった。
ただ、過剰流動性がピーク越えしたことは否定できないが、すぐに雲散霧消するようなこともない。カネ余り相場の環境はまだしばらく続くことになる。半導体については需要に供給が追いつかず、バイデン政権が安全保障の観点から供給網強化に躍起となっている現状において、テーマ買いの矛先が鈍るということは考えにくい。したがって、東京エレクトロン<8035>やレーザーテック<6920>などの深押しは買い場と考えてよさそうだ。
今は逆張りの好機という捉え方はできるものの、個別株戦略は基本的に順張りに慣れるほうが勝率は高い。その意味で目先は“休むも相場”ともいえるが、こういう地合いであるからこそ逆に投資マネーを誘引しやすい銘柄というものはある。人工ダイヤモンドを半導体製造装置向けなどに供給する住石ホールディングス<1514>が、にわかに存在感を高めている。耐久性に富み高性能の次世代デバイスとして人工ダイヤモンドを使用したダイヤモンド半導体がかねてから注目されている。そうしたなか佐賀新聞が、佐賀大学の嘉数誠教授がこのダイヤモンド半導体を使って電力を制御したり変換したりする電子部品を作製し、世界最高レベルの出力電力を得ることに成功したと報じたことは、インパクトのある材料といえる。住石HDの株価は120円台と低位に位置するが、PBR0.5倍台の有配銘柄である点に妙味があり、株主構成にも思惑がある。
このほか、半導体関連ではホロン<7748>やアオイ電子<6832>などの押し目や、今の波乱相場にあっても上昇トレンド構築に乱れが生じていないシグマ光機<7713>も引き続き注目しておきたい。
また、あすは新規上場銘柄が3社あるが、人材関連でテレビコマーシャルを通じてビズリーチの知名度が高いビジョナル<4194>は人気化素地が高く注目となる。またホウ素医薬品の製造開発を手掛けるステラファーマ<4888>は500円未満の公開価格が魅力であり上値追いに対する思惑が十分だ。
あすのスケジュールでは、国内では目立ったイベントはないが、IPOが3社予定されており、ジャスダック市場にネオマーケティング<4196>、マザーズ市場にステラファーマとビジョナルが新規上場する。海外では、ECB理事会の結果発表とラガルドECB総裁の記者会見。また、気候変動サミットがオンラインで行われる。(銀)
最終更新日:2021年04月21日 18時04分