明日の株式相場に向けて=波乱相場でDX関連に復活の芽
きょう(13日)の東京株式市場は、日経平均株価が699円安の2万7448円と急落。3日続落となったが、合計の下げ幅は2000円を超えた。75日移動平均線を下抜け、なおかつ大陰線3本を引いたことで、昨年3月から始まったコロナマネー相場はいったん終了したという見方もできる。現在は変異種の流行でアジアがリスクに晒されているが、ワクチン普及で先駆した欧米では新型コロナ収束の道筋が見えてきた。これが米長期金利の上昇と共鳴する形で、怒涛のブル相場を牽引してきたハイテク株の投げを誘発している。
インフレ懸念は商品市況の急騰で意識せざるを得なくなったが、もう一つビットコイン価格の急騰も投資家の潜在的な不安心理を呼び覚ます背景にあった。そして案の定、このビットコイン価格も株式市場と同様に足もとで売り込まれる展開となっている。直近は一時4万6000ドル台まで値を下げたが、こちらは株と違って最初から実態なきバブル的なイメージで見られていただけに下値が見えにくい。
強靭な信用という名の堤でも、いったん小さな穴が開くと負のスパイラルを巻き起こし、結果、堰を切るように相場は崩れる。ビットコインもその典型で、「テスラ<TSLA>のイーロン・マスクCEOが、EV購入に際しビットコインの使用を急遽停止することを発表したことは“蟻の一穴”となる可能性がある」(ネット証券ストラテジスト)という。今回は発表のタイミングも悪かったが、購入を認めてわずか3カ月あまりで方針転換、業界用語でいうところの“梯子を外された”形でビットコイン価格は大幅に水準を切り下げる格好となった。
イーロン・マスク氏の一声が仮想通貨のトレンドそのものを変えてしまうインパクトがあるかは分からないが、株式市場においてもハイテクセクターのネガティブ材料となり得る。半導体については需給逼迫の状況は変わっていないが、仮想通貨のマイニングに使われる半導体需要の減退を織り込むプロセスも株価調整要素として意識する必要が出てきた。
株式市場が各種経済データなどに左右されるのは当然ながら、それはバックミラーに映る景色。基本的には見ることのできない一歩先の未来を反映するのが相場の本質だ。見えない以上、そこはポーカーゲームと一緒で、相場とはすなわち人間心理の集大成といってもよい。昨今はAI取引が幅を利かせているとはいえ、そこも含めて人間は思考を巡らせ、理論と感性の狭間でさまよい、呻吟(しんぎん)し、最善と思われる選択肢を選ぶ。しかし、それは最善でないケースのほうが多い。当欄でもゴールデンウィーク前後に注意すべきとしてきたが、このタイミングでの暴落相場を読んでいたわけではない。ただ、キャッシュポジションを確保してあれば対応は可能だ。
個別では、原点に戻って菅政権が当初から掲げてきたデジタル行政に絡む銘柄でシステム開発やITソリューション関連銘柄に照準を合わせてみたい。コロナ禍にあっても好業績銘柄が多いことが、今回の決算発表で明らかとなってきた。いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)関連の再登板である。今年9月に「デジタル庁」発足というイベント面からの材料も株価を支援する。
ネットマーケティング支援のアライドアーキテクツ<6081>が、全体波乱相場のなかできょうは好決算発表をバネに700円台近辺のもみ合いをカイ気配で上放れ、ストップ高で終日値がつかなかった。これはDX関連復活の号砲となる可能性を漂わせる。金融関連ソフトの開発で競争力が高く、AIデータサイエンスやアジャイル開発、クラウド分野を深耕するTDCソフト<4687>、独立系のソフト受託開発会社でやはり金融系に強いクレスコ<4674>などに注目。また、アートスパークホールディングス<3663>も21年1~3月期営業利益が前年同期比2.9倍という高変化を示し物色人気を集めたが、3000円大台近辺のもみ合いは買い向かって妙味がありそうだ。保険や証券など金融業界向けシステム受託開発で高実績を有し、地銀再編にも絡み商機を捉えそうなソルクシーズ<4284>も要マークか。更に、車載ソフトやIoT関連分野で受注案件を多く抱える独立系のソフトウェア受託開発企業である東海ソフト<4430>はトヨタ関連の切り口で思惑がある。
あすのスケジュールでは、4月のマネーストック、3月の特定サービス産業動態統計など。また、株価指数オプション5月物のSQ算出日にあたる。海外では4月の米鉱工業生産・設備稼働率、4月の米小売売上高、5月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査)など。(銀)
最終更新日:2021年05月13日 17時03分