【植木靖男の相場展望】 ─ 再び3万円大台に挑むか
「再び3万円大台に挑むか」
●近づく大転換
日経平均株価は5月入り後、中旬にかけて急落を演じ、多くの投資家はもはやこれまでと警戒心を強めたと思われる。2万7500円処を下回ったことは、波動からみても弱気にならざるを得なかった。だが、相場とは面白いものだ。5月20日前後から珍しい現象が現れた。すなわち、警戒心が広がる中で数日間も連騰する銘柄が相次いだのだ。そして、月末にかけては売買代金が増え始め、株価は安かったものの、5月27日には5兆円台と通常の倍の水準に膨れ上がった。
その結果、5月28日の週末には寄り付きから急上昇し、2万9000円大台に跳ね上がったのだ。理屈はいろいろあるが、相場は結果が全てだ。前回指摘したように、肝(キモ)となる水準は2万9300から2万9500円処だ。再びこの壁に挑むことになる。
ところで、材料的には海外でやはりテーパリング議論が活発だ。インフレに脅え、長期金利上昇に神経質になっている。だが、罫線(チャート)上からは今は二番底探しの段階にある。1980年から約40年間下げ続けてきただけに、そうあっさりと底入れから上放れることはないが、ほどなく大転換しそうだ。今度いったん転換すれば、かなり長期にわたって上昇基調が続くとみたい。当然のことながら、インフレ懸念に対し米政権はドル高政策からインフレ抑止に動くはずだ。かつて、平成バブルの際は好むと好まざるとにかかわらず、猛烈な円高でインフレを止めたことは記憶に新しい。
さて、国内的にはどうか。菅政権は周回遅れとなっている新型コロナワクチンの接種率に自らの政治生命を賭けているかに見える。かつての国家総動員法にオーバーラップする。日本人は同調圧力に弱く、集団心理にことのほかこだわる。おそらく接種率が10%を超えてくると、景気回復は想定外に早まるかもしれない。ひょっとしたら、菅政権は五輪を捨ててでも、と思っているかもしれない。
ところで、当面の株価はどう展開するか。肝の水準を突破すれば高値更新も可能である。これはNYダウ平均も同じ段階にある。
カギとなるのは海外筋の動向だ。多分、最も日本株を欲しているのは彼らではないか。であれば、株価が下がって欲しいはずだ。5月2週、3週と大幅に売り越している。だが、下がって欲しい時に限って余り大きく下げることはないのではないか。
いずれにしても、株価が転機を迎えるのは、ワクチンの接種率を睨みながら7月頃となりそうだ。
●上昇相場は終焉せず?
ところで、当面の物色対象はなにか。5月28日に際立ったのは、超値がさ株だ。投資家は昨年3月以降の上昇相場がなお継続中であると判断したかのようだ。もし、終焉しているとすれば、銘柄の主力は景気敏感株でなければならないからだ。このことが正しいかどうかは、いま暫く様子を見る必要があろう。
さて、今回は個別物色と割り切って考えてみたい。言うまでもなく、ときの銘柄は時代的背景、そして材料性、罫線の3つに支えられている。どれがかけても人気株にはなれないのだ。
そこで今回は、景気回復を前提として設備投資関連からアマダ <6113> に注目したい。次いで、かつてないほどのボラティリティをみせる第一生命ホールディングス <8750> も、これまでと同じ視点でみては見誤るのではないか。また、住友化学 <4005> 、三井化学 <4183> といった化学株にも注目したい。
2021年5月28日 記
株探ニュース