明日の株式相場に向けて=「鉄壁の月末安」と「レーザービーム相場」
週明け31日の東京株式市場は売り先行の地合いとなり、日経平均株価が289円安の2万8800円と反落した。前週末に日経平均は600円高と気を吐いたが、先物主導で実態とややカイ離した上昇だったこともあり、きょうはその反動が出ることはある程度予想されていた。しかし、きょうの下げはある種特別な意味合いがある。
月末に日経平均が下落する月末安アノマリーが昨年9月末から継続中で、きょうも下落して引けたことで9カ月連続となった。単純に任意の日が高いか安いかを考えた場合、その確率は2分の1。とすれば、これが9回続くことは2の9乗で512分の1の確率となる。しかも、昨年3月を基点に過剰流動性による強烈なコロナマネー相場が繰り広げられるなか、秋口以降は特に日経平均の上げ足が加速していた。通常は高い日の方が確率的に高くなりそうなものだが、月末については下落するという鉄壁のアノマリーは今回も崩すことができなかったことになる。
ただ、素朴な疑問として浮上するのは、では月初はどうなのかである。これは月末安ほどではないが、やはり月初高の傾向がかなり強いことが分かる。したがって、机上論的ではあるが、名実ともに最終売買日を迎える“前日”にいったんキャッシュポジションを高め、月末(最終売買日)の安いところを拾い、「名実ともに●月相場入り」当日の高いところを売るという作業が意外な投資パフォーマンスにつながることになる。あくまで、これは全体論だが、個別株にも全体の潮の流れが影響しやすいため、このアノマリーを念頭に置いておくのは損ではない。事実きょうは東証1部全体の8割近い銘柄が下落している。
そうしたなか、個別株できょうの東京市場の主役を担ったのは、半導体製造装置関連の雄レーザーテック<6920>だ。同社はマスクブランクス検査装置のトップメーカーというよりは世界シェアを独占するオンリーワン企業として業績を飛躍させ、グローバル・ニッチトップの象徴のような存在となっている。きょうは売買代金も東証1部上位3傑に食い込む活況ぶりで1000円高超の上昇パフォーマンスを演じ、満を持しての上場来高値更新、未踏の2万円大台乗せを果たした。同社はX線周辺のオプト技術の先駆で、現在ではレーザーマイクロスコープなどで高度な商品技術を内包している。
この物色人気は横に広がりをみせ、きょうは第2のレーザーテック候補と目される銘柄群にも矛先が向かった。その筆頭ともいえるマルチビーム描写装置世界首位の日本電子<6951>が一時7%の上昇をみせたほか、新興企業ではQDレーザ<6613>が、個別材料が発現したとはいえ一時12%近い上昇。直近紹介したX線集光ミラーのジェイテックコーポレーション<3446>なども値を飛ばし、1カ月半ぶりに3000円大台を回復している。
これら以外の銘柄を探すと、足もとはまだ目立った動きをみせていないシグマ光機<7713>なども注目されそうだ。同社株はレーザー関連デバイスを製造し、研究機関向けなどで高い実績を持っている。
EV関連株も国策によるフォローの風に乗って、充電インフラや2次電池関連株の一角に投資資金が食指を動かしている。前週取り上げたニッポン高度紙工業<3891>やモリテック スチール<5986>の値動きがよい。また同じタイミングで取り上げた水素関連の穴株、木村化工機<6378>は材料株の面目躍如。25日移動平均線との上方カイ離を保ったままウネリを伴った上げ足をみせている。
少子化対策関連では、幼児活動研究会<2152>が動意含み。5月26日に上ヒゲで1460円の高値をつけた後の押し目形成場面は強気対処して報われそうだ。また、船舶用エンジンを手掛けるダイハツディーゼル<6023>はESGへの取り組みに注力しており、時流に乗るだけに、今のもみ合いは狙い目かもしれない。金型部品製造で業界屈指の実力を持つパンチ工業<6165>も75日移動平均線を足場とした跳躍に向け注目しておくタイミング。レーザー関連の範疇ではないが、半導体製造装置関連ではワイエイシイホールディングス<6298>に妙味あり。宮越ホールディングス<6620>も動兆著しく継続マークしたい。
あすのスケジュールでは、1~3月の法人企業統計など。海外では5月の財新中国製造業PMI、5月のユーロ圏消費者物価指数、5月の米ISM製造業景況感指数など。(銀)