明日の株式相場に向けて=米AMC30倍高の衝撃波は海を渡るか

市況
2021年6月3日 17時00分

きょう(3日)の東京株式市場は、日経平均株価が111円高の2万9058円と続伸。材料が見当たらないのが今の相場の特長。あえて言えば、日本国内の新型コロナワクチン普及率がほぼ1割に到達したこと。“コロナ後の風景”を先取りするような相場が繰り広げられてはいるが、今のところそのダイナミズムは全体指数には反映されていない。

“5月の米雇用統計をみるまでは…”というのが様子見の理由にあてがわれているが、早晩ボラティリティが一気に高まる可能性を孕んでいる。「売り圧力が強いと盛んに言われる2万9000円近辺だが、この先、株価が高いとみている機関投資家にとっては拾いまくる絶好のチャンス」(中堅証券ストラテジスト)という。5月末からの5営業日で形成された今の踊り場の先にあるのは、上り階段かそれとも下り階段か。現状では前者であるとみている市場関係者が多いようだ。

全体相場を俯瞰すると、物色動向は既にグロースVSバリューのような構図ではなくなっている。それを象徴するのがバリュー株代表のトヨタ自動車<7203>とハイテク・グロース株代表のレーザーテック<6920>だ。この2銘柄の物色人気が異彩を放っている。きょうの売買代金トップはトヨタで前日を上回る1200億円強の売買代金をこなした。時価総額は国内上場企業で断トツだが、日々の売買代金で首位となることはむしろ珍しい。が、ここにきて満を持して巨鯨が水面上に浮上してきた感がある。未踏の1万円大台乗せはきょうのところはお預けとなったが、引き続きマーケットの注目度は高い。そして、売買代金第2位となったのがレーザーテック。同社株は押しも押されもせぬ半導体製造装置のグローバル・ニッチトップだが、東証1部の売買代金で2位にランクインすることは稀だ。株価の上げっぷりも物凄く、きょうで9連騰となり青空圏(最高値街道)を突き進んでいる。9営業日合計の上げ幅は約5300円に達した。

しかし、業種別でみると趣きはまたガラッと変わる。きょうの業種別騰落で値上がり率トップは食料品だった。ディフェンシブストックとしての切り口ではなく、穀物市況高騰を背景とした価格転嫁の流れが意識されている。これは本来、コスト上昇の転嫁であって儲けの意味合いはないはずだが、大抵は値上げの動きが出てくると当該株は上昇するケースが多い。食品セクターに限らず、デフレマインドに逆行するような動きが株式市場では心地よいというところがある。原油市況が上昇すれば石油元売り会社が買われ、ビットコイン価格が急騰すれば、仮想通貨交換所を運営しているような会社はもちろん、暗号資産(デジタル通貨)にノウハウがあるだけで買われる。これは、理屈以前に相場の不文律といえる。

冒頭のワクチン普及の話に戻るが、普及率が5割を超えた米国では、東京市場の常識からすれば、にわかには信じられないような上昇パフォーマンスを演じる株が相次ぐ。ゲームストップ<GME>株の急騰劇がまだ記憶に新しいなか、前日の米株市場では映画館を運営するAMCエンターテインメント<AMC>が1日で95%高、つまり倍化した。いつか来た道、というよりは先ほど来た道。いわゆるSNS連携の個人マネーによる本尊不在の仕手株相場である。しかも、同社株は今年に入ってから30倍になっているというから驚くよりない。ここだけ切り取れば、バブルと言わずして、ということになるが東京市場ではまだこういう光景に遭遇することはなく、今後に思惑が膨らむ。とすれば、日経平均2万9000円近辺で形成されている踊り場を「買い漁るチャンス」とした前出のストラテジストの言葉も重みを増す。

個別株では自動車部品株が相変わらず強い。愛三工業<7283>、日本プラスト<7291>はチャートをみるとずいぶんと上がったように思えるが、伝統的指標であるPERとPBRでみれば、依然としてデフレマインドに埋没したような株価水準だ。この流れで、きょうは上昇一服となっているホンダ系で自動車のアンダーボディ骨格部品を製造するエイチワン<5989>もマークしたい。PBRは0.3倍強。解散価値の3分の1であり、こういう株価が再編思惑と組み合わさることで、火を噴くということは十分に考えうるシナリオだ。そして、トヨタが傾注する「全固体電池」もグローバル規模で実用化競争がスタートしている。自動車部品セクターでは三櫻工業<6584>が動意含みだ。このほか、電力関連の大崎電気工業<6644>、半導体関連の助川電気工業<7711>などに注目したい。

あすのスケジュールでは4月の家計調査など。海外では5月の米雇用統計が焦点となる。このほか、4月の米製造業受注、4月のユーロ圏小売売上高なども発表される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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