明日の株式相場に向けて=FOMCは大山鳴動して鼠一匹

市況
2021年6月17日 17時00分

きょう(17日)の東京株式市場は、日経平均株価が続落し前日比272円安の2万9018円と続落。下げ幅は一時400円を超える場面があった。一番下げのきつい場面でも1.4%強に過ぎず、“プチ波乱”程度に見ておいてよいが、ちょっと嫌な感じではある。

注目されたFOMCは、無風通過とはならなかった。量的金融緩和策の縮小についてはあくまで俎上に載っているのは「議論を開始するのがいつか」についてなのだが、どうやらそれが早まりそうであるということ、そしてゼロ金利の解除についてもドットチャートでは2023年内を見込むメンバーが一気に増え、どうやら「再来年」には利上げが行われそうだとの認識がマーケットに広がった。

“来年のことを言うと鬼が笑う”というが、利上げは早くても再来年である。少なくとも足もとの株式市場で流動性に異変が生じるということではない。しかもドットチャートは予想であって決定でも計画でもなく、経済状況を見ながら今後の政策スタンスが決まっていくことも、パウエルFRB議長は強調している。メディア的には「2023年中に2度の利上げも視野」というニュースヘッドラインはエッジが利いて好まれやすいが、これが独り歩きして市場のセンチメントを冷やす材料とはなっても、それこそインパクトは一過性で余韻も残らない。過度に神経質になる必要はなさそうだ。

米VIX指数はどうだったか。FOMCの結果公表後、反応はしたものの取引時間中の高値は19.11、終値で18.15にとどまった。警戒領域の20には届かない。5月の波乱相場の際には29近くまで上昇したが、それと比較すれば小波(さざなみ)のレベルである。結果的に、今回のFOMCは“大山鳴動して鼠一匹”で終わりそうだ。

それよりも、日銀の政策スタンスを問題視する声がマーケットには強いようだ。市場との対話という部分でFRBを見習うべきであるという声である。5月、6月と全くETFの購入はゼロ、音無しであった。4月に1回発動してそれっきりである。これまでにも日銀のETF買いに対する賛否両論はあったが、当の日銀が曖昧な形で手を引くというのは株式市場にマイナスの思惑、不信感しか与えない。FOMCとは対照的に今週の日銀金融政策決定会合に対する市場の関心は低いが、このETF購入に関してのスタンスについての何らかの説明はあってしかるべきで、マーケット関係者の視線もその一点に集中しそうだ。

FOMCを受けて米10年債利回りは上昇したが、日米金利差拡大を背景に外国為替市場(ドル・円相場)ではドルが買われ、1ドル=110円台後半の推移とドル高・円安が進行した。これはハイテクや自動車など主力セクターには、今期業績に与える収益メリットとして地味に効いてくる好材料だ。

個別では、東京五輪開催がほぼ決まったことでイベント関連株があちらこちらで動意づいている。前日取り上げたメディアリンクス<6659>は一時75円高の635円と値を飛ばした。上ヒゲをつけるのは仕方ないとして、こうした動きは今後も幅広い銘柄に広がりそうだ。テー・オー・ダブリュー<4767>、博展<2173>、共同ピーアール<2436>などに目を向けておきたい。

また、次世代パワー半導体も「タムラ効果」でにわかにテーマ性を発揮している。ただ、これは本来、「酸化ガリウムパワー半導体」という狭い領域の物色テーマであり、SiCやGaN製デバイス関連の企業とはまた異なったステージのはずだが、投資資金はそこに凝り固まることはない。

半導体という大きな括りのなかで、注目銘柄を探せば精密切断加工技術で屈指の実力を有するタカトリ<6338>や、ナノミクロン単位に特化した研削盤メーカーとして存在感を示す和井田製作所<6158>などが有力候補として浮かびあがる。

あすのスケジュールでは、日銀の金融政策決定会合の結果発表と黒田日銀総裁の記者会見。このほか5月の消費者物価指数(CPI)など。なお、マザーズ市場にEnjin<7370>が新規上場する。海外では5月の英小売売上高など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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