2021年後半のドル円【フィスコ・コラム】

市況
2021年6月27日 9時00分

2021年は間もなく折り返し地点。米連邦準備理事会(FRB)が予想外にタカ派姿勢を示したことで、主要国の中央銀行による金融政策の正常化が年後半のテーマとなりそうです。そうした議論のなかで、ドル・円はどのように推移するのでしょうか。

FRBが6月15-16日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)での見解は、市場の予想を超えるタカ派寄りの内容となりました。メンバー18人による経済予測で2023年末までの利上げがありうるとした委員は、前回3月時点の7人から13人に増えました。そのうちの11人は少なくとも2回の実施を想定しています。さらに7人は早ければ22年中の利上げを見込むなど、わずか3カ月間でかなり強気に傾いた印象です。

これを受け、他の主要中銀の政策スタンスも注目されます。カナダ銀行はすでに4月の定例会合で引き締め方向に舵を切っており、同じ資源国であるオーストラリアやニュージーランドが続くとの見方が強まるでしょう。特に、オーストラリアは雇用統計の改善などで回復期待が高まっているものの、豪準備銀行は緩和長期化の姿勢を崩しておらず、今後の議論の行方が豪ドルの値動きに影響しそうです。

また、欧州中銀(ECB)や英中銀でも緩和スタンスが修正される方向となれば、ドルへの下押し要因となります。英中銀は現時点で慎重ながら、イギリスでの7月の制限解除で正常化の加速が期待されそうです。一方、ECBはパンデミック特別支援プログラム(PEPP)の縮小を主張する当局者が増え、次回7月22日開催の理事会に向け強気な発言がユーロを押し上げる材料になるかもしれません。

「2021年はドル安」--というのが、半年前の市場のほぼ一致した見方でした。物価の上昇を招いても雇用の回復を優先するイエレン前FRB議長がバイデン政権で財務長官に就任したことが、その理由の1つ。パウエル体制のFRBは2023年まで実質ゼロ金利政策を堅持する方針を打ち出しており、バイデン政権も容認するとの見方からドル安トレンドが市場関係者の間で浸透していました。

しかし、フタを開けてみれば金利相場となり、長期金利に振らされる展開に。ドル・円は年明けの102円半ばから3月末には110円後半に強含み、その後は伸び悩みました。5月下旬からは小じっかりとなり、6月FOMC以降は111円台に浮上。ドルは安全通貨としての買いが後退しても金利先高観から売りづらく、断続的な利益確定売りをこなしながらなお底堅い値動きが続きそうです。

円相場も注視されます。トヨタ自動車は2022年3月期の想定為替レートを105円とし、為替差益による増益を見込んだ同社株の買いが強まる場面もありました。それにより輸出銘柄の買いが続けば、日本株高を好感した円売りに振れ、ドル高の支援材料となるでしょう。もっとも、日銀の緩和長期化が背景にあるのは言うまでもありません。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《YN》

提供:フィスコ

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

特集記事

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
米国株へ
株探プレミアムとは
PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.