山内俊哉氏【日経平均3万円回復はいつ? 夏相場の展望を読む】(2) <相場観特集>
―米長期金利の動き乏しいなか、円安・ドル高環境は続くか―
週明け28日の東京市場では日経平均が朝方は高く始まったもののすぐに値を消す展開となった。2万9000円台近辺では依然として上値が重い。日経平均は4月中旬に3万円大台を割り込んでから、なかなか復帰できない状況が続いているが、果たして夏相場の展望は。また、ここ米長期金利の動向とは裏腹に円安方向に振れている為替動向も気になるところ。今後の株式市場の見通しについて松井証券の窪田朋一郎氏に、為替市場の見通しについて上田ハーローの山内俊哉氏にそれぞれ意見を聞いた。
●「早期利上げ観測は前のめり、ドルは上がりにくい展開も」
山内俊哉氏(上田ハーロー 執行役員)
今月は米連邦公開市場委員会(FOMC)で示されたドット・チャートなどをみたうえで、早期利上げ観測が市場には強まった。しかし、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が議会証言でハト派姿勢を示すとFRBは利上げを急いでいない、という認識が市場には急速に浸透した。ドルは上がりにくい状況となっており、しばらくはあまり値幅が出ない展開もあり得ると思う。
当面は、米国の雇用情勢などが注目される。新型コロナウイルスによるパンデミックで「失われた雇用」を取り戻すのがいつになるのかがポイントとなるが、失業給付金が切れる9月以降の雇用統計を確かめる必要があるものの、現状の雇用回復のペースでは2023年までは考えにくいだろう。となると、やはり「早ければ22年に利上げ」あるいは「23年に2回の利上げ」という見方は前のめりだと思う。
テーパリング(量的緩和縮小)に関しては、今夏のジャクソンホール会議で前振りをして、その後の雇用統計などを確認しながらテーパリングの議論を開始することを表明する展開などが想定される。ただ、実際のテーパリングは、始めるなら来年3月頃もあり得るが、結局は物価状況や新型コロナの感染状況に左右される面が大きいとみている。
そんななか、今後1ヵ月程度のドル円相場のレンジは1ドル=109円30~112円40銭前後を想定している。強い雇用や消費者物価の結果が発表された場合、112円台に乗せることもあり得るが、基調としては「緩やかなドル安傾向」を見込んでいる。ユーロ・ドルは1ユーロ=1.17~1.21ドルで、ユーロ円は1ユーロ=128円30~133円00銭前後。対ドル、対円ともにユーロ安基調を想定している。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(やまうち・としや)
上田ハーロー、執行役員・マーケット企画部長。1985年 商品先物会社入社。コンプライアンス、企画・調査などを経て1998年4月の「外為法」改正をうけ外国為替証拠金取引の立ち上げを行う。2005年7月 上田ハーロー入社。前職の経験を生かし、個人投資家の視点でブログなどへ各種情報の発信やセミナー講師に従事。日経CNBC「朝エクスプレス」為替電話リポートに出演のほか、金融情報サイトなどへの情報提供などでも活躍している。
株探ニュース