年間100万円ほどが4年間も、大学時代の奨学金と教育ローンを知る
清水香の「それって常識? 人生100年マネーの作り方-第31回
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表
1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年よりOfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。
前回記事「『児童手当』を利用すれば300万円は余裕! 教育資金作りの王道とは」を読む
前回記事では、児童手当を活用して高校入学前後のプチピーク、そして大学入学前後のピークに備える方法をお伝えしました。
ただ高校を卒業するまでのおよそ18年という長い間には、今回のコロナ禍のように思わぬ事態で家計が激変する可能性もあります。
それでも子どもの成長は待ったなし。必要時期の到来までに貯められないこともあるかもしれません。とはいえ、乗り越える手段はあります。
その具体策が「奨学金」と「教育ローン」。ですが、うまく活用するには情報の収集・整理が必要です。奨学金には公的なのもののほか、大学や財団が実施するものなど種々あります。
なかには返済を要するものもありますし、給付される(貰える)ものもあります。その金額も、月1万円程度のもの、年間約100万円が4年間給付される手厚いものもあります。
奨学金により仕組みは異なり、選考等の要件もそれぞれ。申し込み時期も異なります。大学入学後に申し込めるものもありますが、高3の春に選考が始まるものもあるのです。
一方の教育ローンにも公的なものと民間のものがあり、金利や返済条件はそれぞれ。
適切な選択をするには、まず情報収集が必要です。以下で整理してみましょう。
学生本人が受ける「奨学金」
奨学金は、優秀で修学困難な学生の経済的負担を軽減するための制度です。学生自身を対象に必要な資金を貸し出す、あるいは給付するしくみです。
代表格は、日本学生支援機構(Jasso)の奨学金でしょう。返済を要する「貸与型」と、返済不要の「給付型」があり、いずれも学力基準と家計基準で選考されます。
貸与型奨学金には、優秀な学生を対象にした無利子奨学金(「第一種」)と、有利子奨学金(「第二種」)があり、返済する責任があるのは学生自身です。
大学の種別、自宅または自宅外などで上限額が変わりますが、大学では月額2万~12万円の間で選択できます。在学中は据え置きで、卒業6カ月後から返済が始まります。
給付型は要件が厳しくとりわけ狭き門です。が、住民税非課税世帯の学生が下宿して私立大学に通う場合、年額91万円の返済不要の奨学金のほか、年額約70万円を上限に授業料免除、約26万円の入学金の免除・減免と手厚い給付が受けられます(世帯収入、家族構成、学校種別、通学種別で異なる)。
いずれも学校を通じて手続きをします。助かるお金ですが、奨学金が入金されるのは入学後。大学や財団など様々な団体が実施している奨学金も、基本は入学後の入金なので、入学後にかかる費用は賄えますが、入学前後で必要となるまとまった支出には間に合いません。
■奨学金の状況
借りる人 | タイプ | 備考 | 実施団体 |
---|---|---|---|
学生 | 給付型 | 返済不要。学力、親の所得基準など要件厳しめ | 日本学生支援機構・大学・企業・ 民間育英団体・自治体・省庁など |
貸与型 | 返済が必要。学力、親の所得基準など要件あり |
借りる人 | 制度 | 実施機関 | 備考 |
---|---|---|---|
親 | 国 | 日本政策金融公庫 | 上限350万円(原則)、融資金利1.66%(固定・保証料別)、 返済期間15年以内、親の所得制限あり |
民間 | 各金融機関 | 無担保型は上限300万円、融資金利3.475% (変動・保証料含む※)、返済期間10年以内、 銀行の住宅ローン返済中で延滞がない場合は ▲0.5%の金利優遇 |
入学前後の資金手当ては「教育ローン」
入学前後のお金が足りないときは、教育ローンを検討します。奨学金と異なり、教育ローンを借り入れるのは親。返済の責任も親が負います。
銀行にも教育ローンがありますが、低利で固定の「国の教育ローン」を優先するのが基本です。
いつでも申し込め、入金までの期間は申し込みから20日前後。まとまった資金を比較的早く受け取れるので、急な資金ニーズにも比較的速やかに対応できます。子どもが多い世帯やひとり親、一定所得以下の世帯だと金利や返済期間の優遇も受けられます。
利用にあたり、世帯人員と世帯年収の申し込み基準を満たす必要があります。世帯年収とは、共働きの両親であれば、父母両方の年収を合計した金額。たとえば子どもが2人いる世帯だと、対象となるのは世帯年収が890万円未満の世帯です。
該当しなければ、銀行などの教育ローンを検討します。金利には保証料が含まれるものの、国の教育ローンと比べ高めで、かつ変動型です(三井住友銀行の場合)。
融資要件は各金融機関、担保の有無、取引状況などにより変わるので、まずはメインバンクで相談を。
月8万円の給付も!財団の奨学金の情報を収集しよう
資金が足りない場合に限らず、ぜひ確認しておきたいのが、民間団体が実施する給付奨学金です。