億り人の原点は、どん底になっても捨てなかった「意地と信念」
第26-2回 強い投資家はどんな人~日本株投資家3900人調査で解明!(ケーススタディ編)
登場する銘柄
misoraさん(40代・男性・兼業投資家) | |||
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日本株運用資産 | 約1億円 | ||
累積投資元本 | 30万円 | ||
累積リターン | 不明 | ||
投資スタイル | 主に時代の流れから将来性のある企業に着目し、 底値と思える安値圏で拾う | ||
主な保有期間 | 2~3年 | ||
保有銘柄数 | 140銘柄前後(別に不動産投資信託を保有) | ||
投資開始年 | 2000年 | ||
他の投資対象 | 外貨 | ||
自身の性格分析 | 楽観主義で直感型、愚直 | ||
好きな言葉 | 「仁・義・礼・智・信」の五常 | ||
misoraさんとは: 再建を頼まれて関わった福祉関係の事業に従事しながら、 投資を行う兼業投資家。 両親の離婚後、家を飛び出し高校2年の時から自活をするも、20歳時には勤め先の人に騙され、 約束した報酬がもらえず路上生活に陥るというシビアな実体験を持つ。 その後、日雇い労働を積み重ね、キラキラの外資系金融機関に就職するという ドラマティックなリベンジ劇を果たす。 給与にはほとんど手を付けず、30万円を元手に2000年から株式投資を開始。 以降、外貨投資なども交えて、「1カ月100万円ゲット」のノルマを積み重ね 約1億円もの資産形成を成し遂げる。写真は好きな本、オグ・マンディーノの『地上最強の商人』 |
前回の記事「所持金0円のドン底から億り人に這い上がったサバイバル投資術」を読む
今回登場中のmisoraさん(ハンドルネーム)は、一時は「所持金なし」「学歴なし」「頼る身内もなし」という、ないないづくしの状態から、多くの投資家が目標にする億り人の座をつかみ取ったサバイバルの人。
20歳の頃、東京・渋谷の公園で、ホームレス生活を10日間ほどしていたという壮絶体験の持ち主で、当時は公園の水を飲み、まさに生と死の瀬戸際をさまよいつつもなんとか命をつないだ。
初回の記事では、無一文だったmisoraさんが、どうやって投資資産を膨らませたのか、その投資の考え方や具体的ノウハウについて触れた。
続編の今回は、投資の種銭を作るまでの道のり、そして本人曰く「県で最も偏差値の低い高校出身」という人が、どんな方法で投資スキルをアップさせたのか、引き続きmisoraさんの投資人生の土台となるサバイバル体験の一幕を紹介していく。
「ドン底からの這い上がり作戦」をコロナ禍で出動
「選ぶ銘柄? ある意味何でもいいんですよ」
元手30万円から20年ほどで億り人を達成したmisoraさんの投資法をおさらいすると、難しい企業分析などは一切ナシ。ひたすら「ドン底と思えるような安いところで買う」を指針に「月に100万円の利益」を目指してきた。
どん底狙いはシンプルで、年初来安値を更新するような銘柄を次々と仕込んでいく。保有銘柄は140程度で、毎月その中から100万円の利益が出せる組み合わせで利益確定していく。
全体資産が一時的に凹んでも気にせず、とにかく「月に100万円」のノルマ達成に集中する。「実力のある銘柄なら、いつかは必ず這い上がれる」と信じていることが、この戦略の根底にある。
独特の投資スタイルは、無一文からリベンジを果たした自らの人生が反映されている。生き様を基にした手法は、投資のセオリーをも超える――。
通常、買い下がり(ナンピン買い)は良しとされない。しかし、misoraさんにとっては恐れるに足らず、将来の可能性を切り開く行為になる。
この「ドン底からの這い上がり作戦」が効果を発揮したのが、2020年のコロナ大暴落からのリバウンドをさらったことだ。
misoraさんは、コロナの大暴落を「一生に一度、あるかないかのチャンス」と見て、大バーゲン状態まで売られまくった割安銘柄をとことん拾いまくる。
それまで、株式投資とは別に外貨預金にも資金を向けていたが、これを解約し株式の個別銘柄の全力買いへと向かっていった。
ある後悔が勇気を呼び起こす
買い出動したのは、ボウリングなどレジャー施設を展開するラウンドワン<4680>、東日本旅客鉄道<9020>
西日本旅客鉄道<9021>、介護事業者向けにネット販売等を行うブティックス<9020>などだ。
買った理由は、安いのはもちろん、コロナが収束に向かったときの反発がまっさきに訪れそうな業態と見たことだ。鉄道系は、コロナ不安がいずれなくなる頃には利用者は戻る。レジャー関連もしかり。
そうした分かりやすい復活シナリオが描きやすいもので、たたき売られているものを見つけ、次々と仕込んでいった。
■西日本旅客鉄道の週足チャート(2020年1月~)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
結果的にこの行動は吉とでたわけだが、暴落の中で買い向かうのは言うほど簡単でない。だがmisoraさんは、ある後悔があったため、このコロナ暴落では迷いなく突き進むことができた。
その後悔というのは、2001年、米ニューヨークのテロ事件で市場がパニックになった時のこと。ニューヨーク証券証券引所は4日間取引停止となり、日本市場でもこのあおりを受けることに。
長い目で見れば、この一時的な投げ売りは買いのチャンスでもあったが、misoraさんはただただ恐ろしく、何もできずに呆然としていただけだった。
もちろん、コロナの問題も決して楽観視できるものではない。だが、それでも各国の取引所は正常に稼働しており、「売買が成り立っているだけまだまし」という思いがあった。
テロ事件の時に機会喪失した失敗の二の舞を、今回のコロナ禍では踏みたくなかったのだ。
外貨取引でも作戦を応用
もう1つ、株ではなく外貨取引でも「下がったものは上がる」の考えで参戦し、上手く利益を積み重ねた。
misoraさんは、01年のテロ事件の後、当面は市場に不透明感が漂うだろうという読みから、しばらく資産形成の主体を外貨投資へとシフトさせていた。
外貨投資では、ドルのほかユーロ、ポンドなど世界各国の通貨に投資可能で、また流動性が高く儲けの選択肢が多いことに着目したからだ。
さらに為替相場は、「安く買って値が戻ったら売る」というmisoraさんの得意な戦略にハマりやすい。例えば為替レートは、日本円とドルなど2つの通貨の需給バランスで決まる。
円高・ドル安方向に進み過ぎれば、振り子のように、やがて円安・ドル高方向に戻ることが期待できる。そうした動きから、攻めポイントがわかりやすかったことも外貨取引を優先させた要素の1つだ。
最終的には、01年から18年ごろまでの間に、misoraさんは外貨投資で数千万円もの為替差益をゲット。その後の億り人達成に弾みをつける形となった。
「トランプが勝つ」の読みが大当たり
外貨投資で特にウハウハだったのが、16年の米国大統領選の時。大統領選イベントを挟んでわずか2日間で200万円もの利益をさらった。
この時着目したのは、当初、民主党のヒラリー・クリントン候補が勝利するというのが圧倒的多数の見方がなされていたこと、それに並行して為替が円高・ドル安に進んでいたという事前の動きだった。
■月足のドル円相場(2015年初~18年秋)
misoraさんは、自分なりに米国経済やその問題点、国民感情などを分析し、大勢の見方に反して、対抗馬のドナルド・トランプ氏が勝つと予想していた。そして選挙で大どんでん返しが起これば、為替は反対の円安・ドル高に一気に進むと読んでいた。
結局、その読みは、見事に的中。短期間で大儲けしたこの経験は、misoraさんの武勇伝の1つとなった。
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