明日の株式相場に向けて=総選挙までレンジ相場と割り切る
きょう(3日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比139円安の2万7641円と反落した。引き続き方向感の見えにくい相場が続いている。上げ下げの理由がはっきり見えない状況だ。相場は相場に聞けというが、人間が頭で考えても分からない、結果を見てから「後から講釈をつける相場」が続いているともいえる。
例えば前日の米株安も景気敏感株中心に安いものが多くNYダウを押し下げたが、これは米10年債利回りが1.2%台を割り込んだこととタイミングが一致する。したがって、中国景気ピークアウト説からバトンを引き継いだ米国景気の先行き懸念という解釈となる。理由としてタイムリーだったのが7月のISM製造業景況感指数が市場予測を下回ったこと、そして新型コロナウイルスのデルタ株感染拡大を嫌気したという見方。しかし、少し前まではインフレ懸念が取り沙汰され、テーパリングのタイミングにマーケットは耳をそばだてていたはずだった。今は米国景気の停滞がネガティブ材料の本流となっている。
こうなると、今月のジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演はハト派回帰で、テーパリングや利上げ云々は棚上げか、といえばそうとも限らないというのが市場関係者の見立てだ。「穀物など商品市況が上昇しており、食品価格などへの影響を考えれば、この川上インフレが看過できなくなってくる可能性がある」(ネット証券マーケットアナリスト)という。つまり、需要サイドが冷めた状態で、供給する側のコスト転嫁によって物価が上昇してしまうコストプッシュ・インフレという形になった場合、それはスタグフレーションという最悪の形で経済の歯車がフリーズすることになりかねない。それを阻止するためには、FRBはテーパリングの開始時期云々などと悠長なことを言っていられず、量的緩和終了と返す刀で利上げに踏み切らざるを得ない。
新型コロナについてはワクチン接種後も感染するケースが観測されるようになってきた。重症化リスクを抑えるということが拠りどころとなっているが、これも今後状況が変わってくる可能性もある。今はまだブースター接種にとどまっているが、連続変異が生じることで、ワクチンの継続的な接種の必要性が叫ばれる状況となれば、ワクチン利権に対するうがった見方も現実味を増す。
本当のところは、株式市場は新型コロナを怖がっているのではなく、コロナ対応で人為的に経済の歯車を止めてしまうことを懸念している。「4~6月期に経済復活の色を強めた米中と比べ、スタート地点にも立てていない日本はコロナ対応で明らかに失敗している。外国人が日本株を売り越している背景はコロナの感染者数ではなく、“どっちつかず”でいたずらに緊急事態宣言を繰り返す菅政権の舵取りのまずさだ」(中堅証券ストラテジスト)という声も出ている。総論的にはたとえ政局が波乱含みとなっても、相場は何か政治的な変化が出るまで待っている(望んでいる)フシがある。オリンピック閉幕後に日本売りとなる可能性もゼロではないが、秋の総選挙までは基本的に米国株の顔色をうかがいながらのレンジ相場と割り切って、突っ込み買いの吹き値売りを基本線におきたい。
個別株では、当欄でも何度か取り上げてきたGCA<2174>が米投資銀行による買収が明るみに出て、一気に宙を舞う展開となった。M&A支援をなりわいとしている会社がM&Aの対象となっていたというのも話のネタになるが、これは日本企業に大いなる魅力を感じている外資が存在しているということを証明したことになり、今後新たな方向に思惑は広がっていく。このほか、目先注目しておきたい銘柄としては、AI関連で業績好調なサイオス<3744>、レーザー関連の一角でシグマ光機<7713>、太陽光発電関連で外資経由の空売り買い戻しに思惑があるジー・スリーホールディングス<3647>、自動車向けコンバウンド需要拡大で業績回復色が強まるリケンテクノス<4220>、2次電池関連で信用買い残の整理が進んでいるFDK<6955>などを挙げておきたい。
あすのスケジュールでは8月の日銀当座預金増減要因見込みが朝方開示される。海外では7月の財新中国非製造業PMI、6月のユーロ圏小売売上高、7月のADP全米雇用リポート、7月の米ISM非製造業景況感指数など。国内主要企業の決算発表では、トヨタ自動車<7203>、ソニーグループ<6758>、ソフトバンクグループ<9984>、東レ<3402>、伊藤忠商事<8001>、日本郵船<9101>などが予定されている。米国ではゼネラル・モーターズ<GM>、ウーバー・テクノロジーズ<UBER>などが発表予定。(銀)