短期反騰を後押ししたのは「いいとこ取り」/後場の投資戦略
日経平均 : 27693.42 (-31.38)
TOPIX : 1931.08 (-4.58)
[後場の投資戦略]
本日の日経平均はほぼ前日と同様、米株高の流れを引き継いでスタートしたが、その後伸び悩む展開となっている。日足チャートでは引き続き27600円台半ばに位置する25日移動平均線を上回って推移しているものの、前日高値(27897.72円)を捉えられていない。ここまでの東証1部売買代金は1兆円に届かず、前日も1日を通じて2兆1187億円ほどにとどまっていた。売買の落ち込みは株価指数先物も同様で、特に日経平均先物は前日かなり低調だった。
一昨日の当欄で、今週に入ってからの日経平均のリバウンドは20日の米オプション取引期日を通過したことによる短期リバーサル(株価の反転上昇)の可能性があることについて触れた。早々に売買の減少を伴って戻りが鈍化してきたことは、その可能性を裏付けするものと考えられる。
また前日の先物手口を見ると、野村證券が日経平均先物を売り越し。ネット証券売買代金ランキングでは週初から日経レバETF<1570>が売り超となっており、個人投資家ら押し目買い投資家の利益確定の売りが上値を抑えていることがわかる。また、東証株価指数(TOPIX)先物はクレディ・スイス証券が買い越す一方、シティグループ証券が売り越し(シティは日経平均先物買いのTOPIX先物売り)。他の外資系証券も売り買いまちまちで、強弱感が対立しているように感じられる。
話は戻るが、米オプション期日通過によるリバーサルを後押しする要因が全くなかったわけでない。まず、金融市場全体としては米ダラス連銀のカプラン総裁が示唆したとおり、「新型コロナ・デルタ型の流行とともに米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和が継続する」と期待する声が足元増えたように思われる。ジャクソンホール会議を前にした持ち高調整の動きも重なり、米10年物国債利回りや期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)はここ数日反騰している。緩和長期化によるインフレを想定しているのだろう。それだけに、無風との見方もあるジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演は重みを増しつつあると考えられる。講演後に市場トレンドに変化が出てくるか注視したいところだ。
もう一点、こうした金融市場全体の見方とは裏腹に、株式サイドでは新型コロナワクチン普及への期待が買い手掛かりとなっている。これは空運株などの堅調ぶりを見ても明らかだ。また、世界保健機関(WHO)が23日、最新の報告書で世界の新規感染者数の合計が増加から横ばいに転じているとの見方を示したことも影響しているかもしれない。国内でも緊急事態宣言の対象地域が拡大しているとはいえ、東京都の新規感染者数は8月半ばをピークに増加一服しているように見受けられる(断っておくが、新型コロナの脅威を過小評価すべきでないと筆者は考えている)。
2つの相反する見方が株式相場を押し上げるさまは、まさに「いいとこ取り」だろう。国内政治を巡っても、22日の横浜市長選の結果を受け「経済対策実施だ」「政権維持だ、いや交代だ」などと様々な主張が飛び交っているが、行き着く結論はみな同じ「株式相場にポジティブ」。国内政治に関しては筆者も折を見て触れたいと思っているが、現在のところ「議席を大幅に減らしつつも菅政権継続、来年の参院選に向け政局への不安も継続、経済対策の内容は政権と与党の力関係次第」と考えている。もっとも政治とは一寸先は闇どころか暗黒である。自民党総裁選に関しても、有力候補は先行して出馬表明などしない。
「いいとこ取り」に乗るかどうかは個々のリスク許容度、投資期間などと相談して決めるべきだろう。さて、足元の香港・上海株はやや下げ幅を広げており、後場の日経平均もさえない展開になるとみておきたい。(小林大純)
《AK》