オンコリス Research Memo(8):「OBP-601」は導出先の米ベンチャー企業が第2相臨床試験を開始

特集
2021年9月9日 15時18分

■オンコリスバイオファーマ<4588>の開発パイプラインの動向

5. その他パイプライン

(1) OBP-601(センサブジン)

核酸系逆転写酵素阻害剤「OBP-601」に関しては2020年6月に、トランスポゾン社との間で、主に神経変性疾患(ALS、認知症等)の治療薬開発に関して、全世界における再許諾権付き独占的ライセンス契約を締結したことを発表した。ライセンス契約の総額は3億米ドル以上となる。

「OBP-601」は、米ブラウン大学が実施した動物実験の結果により、神経変性疾患に有効であるとのデータが得られたことにより、トランスポゾン社との契約につながっている。具体的には、「OBP-601」がレトロトランスポゾン※の逆転写と複製を抑制する効果があることと、脳内への高い移行性を示すことが確認された。レトロトランスポゾンが複製されると、遺伝子の突然変異が起こりやすくなり、様々な反応により神経細胞を傷つけることで神経変性疾患が発症し、症状が悪化すると考えられている。「OBP-601」がこうした逆転写や複製を抑制することで、症状の悪化スピードを遅らせる効果が期待されている。

※レトロトランスポゾンとは、「可動遺伝因子」の一種であり、多くの真核生物組織のゲノム内に普遍的に存在する物質で、自身をRNAに複写した後、逆転写酵素によってDNAに複写されてから新たな場所に挿入することで転移する。DNA型トランスポゾン(狭義のトランスポゾン)が転移する場合と異なり、レトロトランスポゾンの転移では、DNA配列の複製が起こる。

同社は2021年8月に、トランスポゾン社による2つの神経変性疾患を対象とした米国の第2相臨床試験のIND申請及び審査手続きが完了したことを発表した。対象疾患は「進行性核上性麻痺」※1と「筋萎縮性側索硬化症※2及び前頭側頭型認知症※3」で、これらの疾患は指定難病で未だ有効な治療法が確立していないアンメット・メディカル・ニーズの強い疾患となる。いずれも予定症例数は40例で、2023~24年の終了を見込んでいる。安全性と忍容性を確認し、副次評価項目として有効性を確認する試験となる。プラセボを比較対象とした二重盲検試験となるため、中間解析は行わず、最終結果を見て次のステップに進むかどうか判断することになる。

※1 進行性核上性麻痺(PSP: Progressive Supranuclear Palsy)は、脳の神経細胞が減少することにより、転びやすくなったり、しゃべりにくくなったりするなどの症状が見られる疾患。発症は40歳以降で、高齢者に多く発症する。国内における有病率は10万人に10~20人程度と推測されている。

※2 筋萎縮性側索硬化症(ALS: Amyotrophic Lateral Sclerosis)は、脳の運動を司る神経が何らかの理由で障害を受け、徐々に機能しなくなることで、四肢や呼吸に必要な筋肉が痩せて力がなくなっていく進行性の疾患。国内では1年間に人口10万人当たり1~2.5人が発症している。

※3 前頭側頭型認知症(FTD:Frontotemporal Dementia)は、主として初老期に発症し、大脳の前頭葉や側頭葉を中心とする神経細胞の変性・脱落により、人格変化や行動障害、失語症、認知機能障害、運動障害などが緩徐に進行する神経変性疾患。国内では約1.2万人の患者がいると推定されている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《ST》

提供:フィスコ

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