明日の株式相場に向けて=次の高峰は90年7月高値3万3172円
きょう(14日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比222円高の3万670円と3連騰。2月16日の終値3万467円を楽々クリア、ついに1990年8月1日以来31年ぶりの高値更新となった。日経平均の31年ぶり高値というのは、一足先にTOPIXがその領域に足を踏み入れているのでインパクトには乏しいが、それでも主要株2指数がいずれもバブルの余韻に浸っていた当時の水準まで戻ってきたことに驚きと感慨がある。
89年12月の大納会に日経平均が3万8915円の史上最高値を形成、TOPIXはそれに約半月ほど遡る同月18日に2884ポイントで最高値をつけている。31年前の90年8月といえば、バブル崩壊の初動であり、日経平均、TOPIXともにフリーフォール状態で下げの只中にあったが、それでもバブル時代の喧騒はまだ兜町にそのまま残っていた。ほぼその時代まで時計の針を戻したことになるが、今や兜町はリノベーションされたマンションのようになってしまっていて、当然ながら当時の喧騒が復元されることはない。
3万8915円の最高峰にはまだだいぶ距離があるが、そこにたどり着く前に上値の関門としてもう一つだけ意識されるポイントがある。日経平均は90年年初から暴落を始めたものの、同年4月2日の安値2万8002円をターニングポイントに一度は急速に切り返しに転じた経緯がある。この日がまさに愚生が駆け出しの新米記者としてスタートした初日であった。当時は「これから相場は上昇一途、いい時に(会社に)入った」と言われたのを鮮明に思い出す。その後日経平均はグングンと戻り、同年7月17日に3万3172円の戻り高値をつけることになる。
しかし、残念ながらそこが戻り一杯の水準だった。そこから再び長い下げ相場に突入し、証券界もどす黒いデフレの波に飲まれていくことになる。その意味でこの7月の戻り高値3万3172円はまさに因縁場といってよく、ここをブレークして更に上値を目指せれば日本株も新章突入といえると個人的には考えている。
個別株に目を向けると、「現状は金利上昇に備えて金融セクターに資金を振り向ける動きが観測されている」(ネット証券アナリスト)という。トレーダー向きではないが、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>などのメガバンクや第一生命ホールディングス<8750>など大手生保が、気がつかないうちに強力な上昇トレンドを構築している。
きょう圧巻だったのは東京海上ホールディングス<8766>で、6000円大台を通過点に一時400円高に迫る勢いで上昇した。自社株買いの発表が材料視されたわけだが、最大で750万株、発行済み株式数の1%強に過ぎず、まさにエビで鯛を釣る株高アナウンス効果となった。株価は一時6.7%高と中小型材料株並みのパフォーマンスを演じており、自社株買い発表が号砲となり大口の機関投資家が覚醒したかのような資金の流れ込み具合である。この流れでマークしておきたいのは日本郵政<6178>だ。きょうは直近戻り高値を上抜き1000円台復帰にあと一歩と迫った。郵便・物流事業というよりは金融株の側面が強い。やはり5%の配当利回りは魅力で、4ケタ大台回復となれば、次の上値目標は分かりやすく3月19日の年初来高値1101円ということになる。
中小型株では半導体関連の一角でここ激しく動意しているのがAKIBAホールディングス<6840>。値動きは荒いのでタイミングとしては押し目形成場面を狙うのが基本スタンスとなる。またシステム開発関連ではSIG<4386>をマーク。金融向けクラウド構築で実績があり、地銀再編の動きも追い風材料となりそうだ。AI関連ではヘッドウォータース<4011>が底値で鎌首をもたげた状態にあり、目先押し目があればそこは拾い場となっている可能性がある。そして、銅スクラップとインゴット供給を主力展開する黒谷<3168>が動意含みだ。環境・リサイクル関連の切り口もあり、現在の相場の流れに乗っている。
あすのスケジュールでは、7月の機械受注、7月の第3次産業活動指数、8月の訪日外客数など。また、黒田日銀総裁がオンライン開催の国際会議に出席。海外では、8月の中国小売売上高、8月の中国工業生産高、8月の中国固定資産投資、8月の英CPI、7月のユーロ圏鉱工業生産、9月の米ニューヨーク連銀製造業景気指数、8月の米鉱工業生産・設備稼働率、8月の米輸出入物価指数など。(銀)