明日の株式相場に向けて=株式投資は「信念」では勝てない
きょう(6日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比293円安の2万7528円と8日続落。あたかも大蛇がのたうつかのように株価が乱高下する1日となった。前日の米国株市場でNYダウをはじめ主要株指数が揃って反発に転じたことを受け、朝方は日経平均株価が買い優勢のなかスタートした。前日まで7営業日続落で、この間に2400円以上の下落をみせていたこともあって、足もとリバウンド狙いの投資資金が流入するのは自然な流れである。取引開始後30分あまりで380円強の上昇をみせ、2万8200円台まで上値を伸ばした。この時は2万8000円台回復は当然として、前日の622円の下げ分をどこまで取り戻すかというムードであった。
ところがその後、日経平均は失速。あっという間に値を消す展開となり、結局前場は278円安で着地した。そして驚いたことに後場寄りは先物主導で一気に下げ幅を広げる形となった。一時500円を超える下げで2万7200円台まで突っ込む場面もあった。
コモディティ価格の高騰を背景としたインフレ懸念に形を変えて、超緩和的金融政策のツケが回ってきた。米国にとどまらず世界的に物価上昇に対する警戒感が急速な高まりをみせている。きょうは日本時間午前にニュージーランド中銀が金融政策を発表したが、約7年ぶりの利上げに踏み切った。この利上げに動いた事実よりも、その背景に市場関係者は唾を呑み込んだ。「(NZ中銀は)住宅価格や商品市況の高騰、サプライチェーン問題などからインフレの波及が顕著なため利上げやむなし、という論調であり、コロナ禍で担保されていたはずの緩和策が、そうではなかったということを改めて認識させられた」(ネット証券アナリスト)とする。「インフレは一時的で、テーパリングは開始しても利上げは当分先」と強調してきたパウエルFRB議長の発言は早晩撤回されるとの思惑が、暗雲となって東京市場上空に垂れ込めている。
きょうは取引終盤に買い戻しが入り、日経平均は後場寄りの急落から下げ渋る形で大引けは300円に届かない下げ幅にとどめた。しかし、8日続落となったのは2009年7月に9日続落を記録して以来約12年ぶりのこと。前日の当欄で目先買い向かっているのは個人のみとしたが、信用評価損益率はそれほど悪化していない。むしろ、きょうはネット証券の手口からはマザーズ市場などで個人は買い越しているような状況にあり、これが逆に危険な匂いを漂わせる。今後の展開次第で追い証回避の投げを誘発しかねないからだ。
個別株投資はより機動的な対応が求められる地合いである。「信念は嘘よりも危険な真理の敵である」とは、独哲学の権威ニーチェの至言。株式投資では「柔軟さ」こそが投資家にとって最強の武器となる。「信念」も時を誤れば変質し「蛮行」へとつながっていく。例えば、株価変貌を確信した意中の銘柄が、思惑とは逆方向に株価水準を切り下げてきた時、全力で押し目買いを入れていく。これは蛮行である。信念に基づいた行動にみえて結果がついてこなければ、実際は感情に左右され冷静さを欠いた浅薄な投資行動に過ぎなかったという結論に至る。押し目買いも2度3度と繰り返すようなケースになった場合は、既に最初の入口を間違えていることになる。それに気づいたら、押し目買いを入れるところでロスカットすれば結果的に傷は浅くて済む。その後に、当該銘柄の株価が上昇しても下落しても、そこは問題ではなく、大きく下落した時に立ち直れなくなるダメージをその時点で回避するという行動に価値がある。しまったと思ったら躊躇せず手仕舞いする柔軟さ、これは資金をフリーズさせないために投資家として最も必要とされている勇気に相違ない。
今の相場で光を放っている銘柄では、電力不足の問題が大きく意識されるなか、そこから派生する石炭価格の上昇で三井松島ホールディングス<1518>、原発再稼働では東京電力ホールディングス<9501>など電力株が挙げられる。このほか、ロレックスやヴィンテージ人気でコメ兵ホールディングス<2780>も引き続きマーク。リベンジ消費関連ではサニーサイドアップグループ<2180>やグローバルダイニング<7625>などがある。
あすのスケジュールでは、黒田日銀総裁が支店長会議で挨拶。10月の日銀地域経済報告(さくらリポート)、9月の都心オフィス空室率、8月の景気動向指数(速報値)など。また、東証マザーズ市場にワンキャリア<4377>が新規上場する。海外では、8月の米消費者信用残高など。なお、中国株市場は休場となる。(銀)