新興市場見通し:インフレ観測くすぶり重しに、IPOは東証1部にPHCHD
今週の新興市場では、引き続き日経平均と同様、マザーズ指数や日経ジャスダック平均も下落した。週前半は米連邦政府の債務上限問題や中国不動産会社の資金繰り問題といった海外リスクが意識されたほか、エネルギー価格の上昇とともにインフレ観測や長期金利の上昇圧力が強まり、特に新興株には逆風となった。ただ、週後半になるとこうした懸念が和らぎ、時価総額トップのメルカリ<4385>などを軸にマザーズ指数はやや値を戻した。なお、週間の騰落率は、日経平均が-2.5%であったのに対して、マザーズ指数は-2.3%、日経ジャスダック平均は-1.1%だった。
個別では、マザーズ時価総額上位のフリー<4478>が週間で4.2%安、JMDC<4483>が同4.7%安と軟調。前の週に上場したセーフィー<4375>は同7.5%安となった。売買代金上位ではプレミアアンチエイジング<4934>が下落し、Appier Group<4180>は上場前株主の売り観測もあって大きく値を下げた。また、直近上場のデジタリフト<9244>やジィ・シィ企画<4073>が週間のマザーズ下落率上位に顔を出した。一方、前述のメルカリは同3.6%高。「メルカリShops」の本格提供を開始すると発表し、週末にかけて上場来高値を付けた。また、直近上場のプロジェクトカンパニー<9246>が賑わい、フーバーブレイン<3927>が上昇率トップとなった。ジャスダック主力は東映アニメーション<4816>が同1.9%安となるなど全般軟調。9月度売上速報を発表したワークマン<7564>は同7.8%安となった。売買代金上位のフェローテックHD<6890>やウエストHD<1407>も売りに押され、Mipox<5381>などが週間のジャスダック下落率上位に顔を出した。一方、セリア<2782>は同1.7%高と堅調で、ディーエムソリューションズ<6549>が上昇率トップとなった。IPOでは、ワンキャリア<4377>が公開価格を約20%、日本エコシステム<9249>が約4%上回る初値を付けた。
来週の新興市場では、上値の重い展開となる可能性がありそうだ。今週の下落局面でもさほど売りが膨らんでいない様子だったのにはまずまず安心感もあるが、株式市場全体を見渡すと海運株などの急落とともに信用買い残の増加と信用評価損益の悪化が進んでおり、個人投資家の資金余力が高まっているとは言えないだろう。また、今週末の米国市場では原油高とともに長期金利が一段と上昇しており、インフレ観測がくすぶることも新興株にとって重しとなりそうだ。
来週は、10月13日にティーケーピー<3479>、チームスピリット<4397>、14日に出前館<2484>、UUUM<3990>、オキサイド<6521>、バリュエンスHD<9270>、15日にウエストHD、ココナラ<4176>、ビザスク<4490>、グッドパッチ<7351>、アイドマ・HD<7373>などが決算発表を予定している。貸会議室のTKPは今週、通期予想の下方修正を発表。再生可能エネルギー関連のウエストHD、スキルシェアのココナラやビザスクなどにも注目したい。
IPO関連では、10月14日にPHCHD<6523>が東証1部へ新規上場する。旧パナソニックヘルスケアが前身で、2014年に米ファンドが買収。直近では新型コロナウイルスワクチンの輸送に必要な冷凍庫の増産も報じられているが、公開規模は800億円を超える。なお、今週は日本調理機<2961>(11月9日、東証2部)の新規上場が発表されている。
《FA》