明日の株式相場に向けて=個別株のダイナミズム復活
週明け11日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比449円高の2万8498円と大幅高で3日続伸。株式市場は朝方こそ気迷いムードで寄り後しばらくはマイナス圏で推移していたが、9時半を過ぎたあたりから先物に大口の買い注文がなだれ込み、日経平均も連動して急浮上する展開となった。
注目された9月の米雇用統計は非農業部門の雇用者が19万4000人の増加と事前の市場コンセンサスを大幅に下回ったものの、7、8月分の上方修正もあり3カ月移動平均で回復傾向を堅持している。一方、失業率は4.8%と想定より低下し、平均時給は前月比0.6%増に達した。これにより、11月2~3日に行われるFOMCではテーパリングを決定することはほぼ間違いない状況となった。しかし、米国株市場は既にテーパリングについては織り込んでおり、比較的落ち着いた動き。米10年債利回りが1.6%台まで上昇しインフレ警戒感が強まるなか、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数<^IXIC> はほぼマイナス圏で推移したが、景気敏感セクターにはしっかりした銘柄も多く、NYダウ<^DJI> は気迷い気味にプラス圏とマイナス圏を往来する展開だった。
市場では「FRBが主張する『インフレは恒常的ではなく一過性』というシナリオを今のところマーケットは信用している段階にある。今後を見るうえでポイントは金市況の動向だ」(ネット証券アナリスト)という指摘もある。原油価格の上昇は物価上昇圧力につながるが、確かに投資マネーが本当にインフレを警戒し始めたら、それは金市況に流入するのが道理である。NY金先物価格は直近で1トロイオンス=1760ドル近辺で、年初来高値圏にあった6月初旬の1900ドルからみてかなり低い水準でもみ合っている。
東京市場を眺めると、きょうは日経平均の戻りに合わせ個別株にも活気が感じられる地合いだった。アフターコロナ関連で直近紹介したグローバルダイニング<7625>が人気化し、一目均衡の雲を抜けつつある。出遅れているものではクリエイト・レストランツ・ホールディングス<3387>も妙味がありそうだ。売り残が多い点も株価の浮揚力につながりやすく、時価総額が大きい割に株価に瞬発力がある。ただし今週14日に22年2月期中間期の決算発表を控えており、その結果次第で株価は上下に振られやすいので注意は必要だ。
環境機器を展開するダイキアクシス<4245>に意外性。脱炭素関連ではあまり目立たず穴株的な存在といえる。直近ではエンビプロ・ホールディングス<5698>、イボキン<5699>、松田産業<7456>など資源リサイクル関連株人気が顕著となっており、同社株にも物色の矛先が向く可能性がありそうだ。
また、ここにきてプリント基板メーカーの一角が相次いで動意づいている。同業界は今期の業績回復が際立っているだけに、全体相場のリバウンド局面では目が離せない。きょうは京写<6837>が大幅高に買われたが、メイコー<6787>も戻り足をみせている。また、足の速い石井表記<6336>は要注目となる。インクジェットの大口案件剥落で業績低調が予想されていた22年1月期だが、予想に反し大幅増額修正を発表、営業利益44%増益予想にある。また、最終利益は下駄を履いているとはいえPER6倍と割安。
不動産周辺株にも強い株が散見される。東京や神奈川で設計にこだわったデザイン住宅の建て売りを展開するアグレ都市デザイン<3467>は9月下旬以降、日経平均とは真逆の動きで新値圏を走っている。同様に首都圏を中心に分譲マンションを手掛けるファーストコーポレーション<1430>なども新値街道に入りそうなムードを漂わせている。
防衛省がインフルエンサーを使って安全保障の重要性に言及してもらい、防衛予算の大幅増額を目指す動きが一部メディアで報じられたが、関連銘柄として新明和工業<7224>、オオバ<9765>、理経<8226>などがマークされる。
あすのスケジュールでは、9月の貸出・預金動向及び企業物価指数が朝方取引開始前に日銀から発表される。このほか30年物国債の入札なども行われる。海外ではIMF世界経済見通しが注目されるほか、10月のZEW独景気予測指数が発表される。また、米10年物国債の入札が予定されている。(銀)
最終更新日:2021年10月11日 19時36分